人形の呪

神名代洸

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人形の呪

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昔から大事にしていた古い日本人形が家にはあった。
いつからあったのか……までは分からないが、物心つく頃には既にあった気がする。
だけどその人形…怖いんだよね~。何でだろう?
確かに古い人形で、よくあるものだからどうなんだろう?って思うんだけどさ。
人形が置かれている周りはホコリが…。
そんなだから人形が怒っているふうに見えたんだ。
僕の見立てだから他の人が見たらまた違うふうに見えるかもしれないけれどね。

ある日の事、たまたま1人で留守番することになったんだ。
今日は両親とも外出してて帰りは夕方になるって言ってたっけ。
夕方になると部屋は薄暗くなり電気をつけてもちょっと不気味だよね。ましてやそこに例の人形が置かれていてこっち向いてる感じがしたら尚更さ。

時計の秒針の音が聞こえる。

テレビをつけてないと尚更大きく聞こえる。

怖くなった僕はテレビをつけるも誰かに見られてる気配がする。ダレ?
いや、分からない。
でもさ、なんか…一定方向から見られてる気がするんだよね。テレビのボリュウムを上げ見られてる方向を見た。そこには人形が。
光の反射で目が赤く見えた気がした。

その人形…さっきと位置違わないか?
さっきはもっと壁側にあったはずなのに今はどうだ?今にも落ちそうな場所にたっている。
昔の人形だから髪も時代が逆行したかのように結わえてある。その髪がひと房伸びていたのだ。
ビックリだよ!
顔は…怒ってる?
何で?

怖くなったから別の部屋に行ったんだけど気になって仕方がない。
こっそりと覗いてみると人形の向きが変わっていた。よくよく見てみるとゆっくりと動いているではないか。
驚きと恐怖で腰が抜けてしまった僕はよつんばいで逃げようとしたら人形がタンスから落ちて動き出す…。
怖いよ。
徐々に近づいてくるそれは怖さしか無かった。
ヤバい、こっち来る!
そう思った時目が覚めた。
人形は初めあった場所にそのまま置かれていた。
ただ髪が一部解けていた。
怖かったから自分の部屋に逃げ込むと両親が来るまでジッとしていた。
何だったんだ?
分からない。

両親が帰ってきたらそっこー聞こうと思った。
これは誰の人形か?って。


夜7時になってもまだ帰ってこない。予定時間のはずなのに…。するとコンコンと部屋のドアを叩く音が聞こえる。
やっと両親が帰ってきたものと思いドアを開けるもそこには誰もいない。怖くなって直ぐに閉めたよ。そしたらまたコンコンて…。
ま、まさかあの人形とか?有り得ない。たかが人形だぞ?
今度はドアに聞き耳を立てて様子を伺っていたらまたトントンだ。
暫く放置しておいても叩く音は続いた。
だから覚悟を決めて「はーい。誰?」と返事した。
でも誰の声も聞こえない。
やっぱり人形??
幽霊……とか?
あの人形古いから。
確か以前こんな話を聞いたな。
「古い人形には死んだ人の魂が宿る。」とか?
怖くなったから考えないようにしてたのに…どうしたらいい?
そもそもなんでいつまでも古い人形が置いてあるんだ?
考えても答えは見つからない。
両親がかえってくるのをただじっとまってるしかできないなんて……。
時計の針が午後8時を指した。
色んなことをごちゃごちゃ考えすぎて恐怖が最高潮に達した時、ようやく両親が揃って帰宅した。
ホットしたよ。
マジ。

で、親に人形のことを聞いたらひいおばあちゃんの形見らしい……。そんなのいつまでもとってくなよ~と思ったけど、あえて黙っていることにした。下手に騒いで大事にだけはしたくなかったから。
だって面倒じゃん。

だけどさ、やっぱり見ると不気味に見えるんだよね~。
で、母さんにそれとなく話してみた。
「この人形、なんか不気味じゃね?」って。
母さんも何となく嫌な感じがしていたようで、明日にでも手放すことにした。

その日の夜、ぐっすりと寝ている僕の部屋に何かがはってるような音がしていた。寝返りをうった時に気づいたのだ。
静まりかえる部屋の中その音だけが大きく響いて聞こえてくるじゃないか。一瞬で恐怖に凝り固まった。
逃げ出すことも出来ず、ただ布団を持つ手に力が入る。
その時ギギギーッと部屋の戸が開く音がした。
【怖い、怖い怖い怖い!】

震えは止まらなかった。でも何とか声を上げるのだけは我慢した。
ふと足元に何かが乗る感触があった。何?
分からなかった。なんせ頭から布団をかぶっていたから…。
徐々に上がってくるそれは明らかに小さかった。まるで人形か赤子のような小ささだった。?まさか…あの人形?まさか…ね。だけどその嫌な予感は当たった。だって硬いんだもん。
怖くてたまらず逃げ出したかったが、体が動くことはなく目をつぶるしか無かった。

ふと顔にかかっていた布団がめくれた。見たくなかったものに目がいって大声で叫んだ!!
だけど誰も僕の部屋には来なかった。何で?


その頃、両親は動けないでいた。
恐怖とともに……。見たこともない人形が体の周りを取り囲んでじっとこっとをみていたから。叫ぶことも出来ずただただ時間が過ぎるのをじっと待っているだけだった。
それはとても長く感じた。
まさか親子で恐怖体験をするなんて思いもしなかったからお互いが助けに来てくれるものとばかり考えていたせいで朝までこんなことになってしまっていた。

僕は意識を失っていたようで気がついたら朝になっていた。
そこで布団をドバっとめくると両親のいる部屋に飛び込んだ。両親は恐怖で固まったまま目を大きく見開いていた。どうしてこうなってしまったのかは分からないが、あの人形のせいだろうと思い、知り合いのツテでお寺に奉納してお祓いを頼むことにした。二度と同じ怖い目に会いたくはなかったから。


それ以降、家からは人形が全て消えて怖い目に遭わなくなった。あの人形は本当は何がしたかったのだろうか?
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