噂。

神名代洸

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噂。

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「もーいいかい?」
「まーだだよ。」
「もーいいかい?」
「もーいいよ。」

子供達の無邪気な声が聞こえる。


taxiドライバーに就職してからはや一月。
なれない道などはナビに頼りながら今日も夜の街を走っている。
目的地に送り届けると帰りはながして元の場所まで走らせる。とは言っても道の途中で止める人などなかなかいない。
だが、いまはお昼の休憩時。
ちょうど公園の真横につけてみた。
賑わう子供の声と井戸端会議か奥様達は固まって世間話をしていた。子供を見てないでいいのかよと思ったが、このご時世変に関わり合うとろくなことがないことは私が一番わかっている。だって以前まだ入りたてなど新人だった頃、注意したら逆上され、大事な車を蹴られたことがあるからだ。
商売道具なので故障などされたらたまらない。
ローンだってあるのに…。


子供の一人が車の横をかけて行った。
どこへ行くのだろう…。
まぁ私には関係ないが…。ただ黙ってみていた。男の子は路地裏に入り出て来なくなった。
他の子供は何やら遊んでる。
今流行りのドッチボールか?
なんかテレビで大人が遊んでいるのを見た記憶がある。賞金目当てのバトルだった。
子供達は何をかけているのか?何もかけていないのか分からない。まぁあってもお菓子くらいか?
さっきの子供のことが気になる。
まだ出てこない。
かれこれ30分はたってる。でも他の子達は気にもしていないようだ。



そして時間も4時過ぎだろうか…お開きとなり皆それぞれ手にしているものを持って親と帰っていく。
さっきの子はどうなった?親は?

結局戻ってこなかった。
何か予定でもあったのかもしれないとたいして気にはならなかった。


それからしばらくはその公園には行くことがなかった為忘れていた。そう、頭からもすっぽり抜けきっていた。たまたま通ったときに思い出してあの子はどうなったのかな?くらいに思っていたら、その男の子がまた路地裏へと走っていくではないか。
服装…よく見ると暑くないかなって思ったよ。今はまだ暑い。秋とはいえ温暖な為薄着でいいのだ。それなのに男の子は厚着をしている。暑くないのか?
不思議でならなかったので、車から降りて追っかけてみることにした。
路地裏ならそう大して間違うことはないと思っていたのに私が路地裏に行った頃には男の子の姿はどこにもなかった。
「え?道間違えたか?」
そんなはずはない。
途中曲がる場所がない一本道だ。
じゃあ男の子はどこに消えた?
分からない。
謎だ…。
頭をかいてると後ろを誰かが走る音がした。
振り向いたが誰もいない。

そう言えば車の先輩が言ってたっけ。どっかの公園には男の子の霊が出るって…。いつも同じ道を走り捕まえることはできない。もし捕まえたらどうなるのかは誰も知らないらしい。でも、人伝で聞いた話によると捕まえたことがある同僚は姿を消したと言ってた。ほんとか嘘かは知らないって…。
じゃあ、私が追っかけてる男の子は…霊?

不安になってきた。
追いかけるのやめようと思った。
でもね、そう言われるとかえって追いかけたくなってきてしまう…。まるで何かに引っ張られるように意識がそちらを向いてしまうのだ。
頭を振って雑念を打ち消そうとする。
頭の中がぼんやりとしていたが徐々にスッキリと冴えてくる。
「…何だったんだ?あの男の子は?いやいや、探すのはやめよう。ここら辺の子かもしれないし、何かあったらこっちが不利なことが起きかねない。さっ、帰ろ帰ろ。」
車に乗り帰路に着く。
社の車庫に入り車の中の掃除の為一旦車を降りて、後部座席の方を見るとそこにはいないはずの男の子が座っていた。
真っ青な顔だ。
ビックリした。
男の子はニヤリと笑いスーッと消えていった。
それを見ていた同僚も真っ青な顔をしている。
「おま、お前大丈夫か?」そう言って身体中をベタベタと触り、何もないことを確認する。

どうやら今まで都市伝説とまで言われていたことが目の前で起きたのだ。驚きは半端ない。

「あの~、この場合私はどうなるんでしょうか?」
「そんなのこっちだって知らない。今まで体験したやつはことごとく行方不明になってるからな。ま,待てよ?じゃあオレも?ヤバいのか?」「ヤバいって?」「当たり前だろが!霊がここまできたんだぞ!オレも消えるのか?怖い。怖いよ。お前どうしてくれるんだ。」半分泣きながら喚き散らしていた。そんなの私にだってわかるわけがないじゃないか。初耳なんだ。
こんな事になるなんて思わなかった。って言うか教えてくれてたらもっと違ってたかもしれない。
とにかく今日はもう仕事にはならないからと2人で私の家に来ていた。
同僚とはいえ家は知らないからだ。
誘ったというか押し切られたというか…まぁ、こうなった。

家にあったビールを飲みながら話は盛り上がっていた。同僚はもう出来上がってるようだ。絡んできた。一番やな事だ。
「おま、お前が連れてきた男の子な、噂じゃ誘拐されて殺された子らしい。噂だぞ?ほんとかどうかはわからん。でもその子を見たり車に乗せたりしたものはことごとく行方不明になっているのだ。
死体すら見当たらない。
車だけがポツンと残されていることがほとんどらしい。

急に黙りこくってしまった二人。
コップを持つ手が震える。
もうどうにもならないかもしれない。それでも私は諦めなかった。持っていた手帳にメモをし出したのだ。
後々何か役に立てばいいのだが…。
同僚はやけになってビールを煽り続けた。最後には酔っ払ってその場に寝てしまったのだが。


翌朝目が覚めた時には同僚の姿はなく、メモだけが残されていた。


【すまなかったな。酔い覚ましに歩いて帰るよ。また明日よろしくな。】



しかし、その日の朝朝礼時間になっても同僚は姿を見せなかった。
まさか…消えた?
同僚が?
何処へ?


私は何も言えなかった。
次はきっと私の番だ。
私は無事に過ごせるのだろうか?
不安しかなかった。

不安だが、仕事が待っている。仕事を休みたかったが理由がこれではきっと納得してもらえないだろう…。だから車を走らせるしかなかった。

1日が終わり、帰宅しようとしたら通りの向こうの壁に人影が見えた気がした。まさかいなくなった同僚か?
慌てて近寄ったが、人の姿はなかった。
仕方なく振り返ると男の子と同僚が一緒に立っておいでおいでをしていた。焦った私は二人がいない方向へ向かって走り出した。だけど後ろを向けない。振り向いたら最後の気がしてならなかったからだ。

何とか逃げ切ると車の場所に戻り、誰も人が乗っていないことを確認するとようやくほっと一息ついた。

同僚はどうなってしまったのか…想像もできない。
ただあの顔色から生きてはいないことだけはわかる気がした。
私は今日も逃げつづけている…。
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