本当の怒りと呪い

神名代洸

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本当の怒りと呪い

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仲良し3人組っていつまで続くんだろうとふと思ったんだ。
だって誰かがペアになってーって言ったら必ず1人がはぶられるじゃん。
だからそんな時対策にクラスのおとなしめの子を見繕っては固まっていた。
そんないつもの変わり映えのない日に変化が起こった。
仲のいい3人のうち2人に彼氏ができたのだ。
決定的瞬間だった。だから残りの1人が必ずはぶられることになった。そりゃそうだ2人には彼氏の話題がつきないから。なんかコソコソしてるのが残りの1人をイラつかせた。
帰りもバラバラになるようになった。
除け者にされてる気がして1人は2人の後をコッソリと覗いたっけ。
彼氏持ちでも仲の良さは変わらなかった。
お互いに彼氏を紹介して4人で仲良く帰っていたから。

【私は今まで仲のいい友達だと思っていたのにナニ?違うの?】
頭の中でこの言葉が脳内再生され、徐々に2人に対して怒りが芽生える。

私は今1人で登下校している。
仲が良かった友達はもういない。
裏切られた。
しかし大した男じゃない。
あんなのそこら辺の男じゃない。どこが良かったの?
私ならもっとかっこいい男を彼氏にするわ。
あゝ、なんか考えただけでイライラする。
この気持ちどうしてくれよう!
そんなことを考えてるとは梅雨知らずか仲良しの2人は話が弾んでいた。

「だよね~。やっぱり私たちの方が可愛いからじゃない?だってかっこいいじゃんあんたの彼。」「いやぁ、私のよかあなたの方がかっこいいじゃん。」
「「だね。」」
「でもさ~、あの子1人にして良かった?なんか言いたそうだったけど…。」
「いいんじゃない?別に。特別に仲良くしてたってだけだし。彼氏もいないんじゃね。ブスだから作れないんだよ。きっと。クスクス。」
「あんたって意外と冷たいのね。知らんかったわ。」
「だって担任もうるさいじゃん。成績は確かに優秀かもしれんけど、ただそれだけだし…一応仲良くしとけばテストの時にも使えるじゃん。」
「それは…サイテーかも。」
「え~!アンタだって利用してたじゃん。一緒。共犯だよ。」
「……。共犯…かぁ。そうかもね。私達似たもの同士ってやつか。」
「そうそう。だから彼氏もほぼ同じくらいに出来たんじゃん。」

ワイワイと言いながらも楽しく帰っていた。まさかその話をたまたま耳にしてたなんて思いもしなかった4人だった。


「腹立つ!怒りマックスだよ!!そんな考えだったなんて…私っていいように利用されただけのバカじゃん。そんなら私にも考えがあるわ。アンタ達2人共潰させてもらうわ。今だけよ。幸せと思うのは。」
その顔を見たものはきっと般若のようだったと思うに違いない。それだけ怒りが強かったのだから…。


だが確実に潰す為には準備が必要だ。
だから普段通りに過ごしていた。
ただ2人から離れることはしなかった。
かえって怪しまれるといけない為我慢していた。
自宅に帰るとすぐ自室に篭り、色々と考えながら計画ノートなるものを用意しそれにメモをしていった。

それは順序立てて行動に移す為に事細かく書かれており、ノートまるまる一冊使うほどの内容となっていた。
これは呪いのノート。
そう、私が最後のカギとなる。
その為には…時期が悪いわ。

そう、確かに。
今は試験真っ最中。
あの2人は必ず私の元にやって来る。
試験ポイントが書かれているはずのノートを取りに来るのだ。ノートの裏表紙には仕掛けがしてある。必ず開くようにページの最後に裏表紙にもコメントが書いてあるよと。
裏表紙には怒らせる事を確実に書いたから怒りでノートをクシャクシャにするに違いない。それが私の狙いだ。

休憩が入った時やはり2人はいつものように私の元にやってきた。だから2人にはそれぞれの対策を書いたものを渡した。多分休憩ギリギリまでノート見てるんじゃないかな。なんか試験の時よりドキドキする。
でも私は手を抜くなんて考えはないからいつものように全力で頑張った。

2人とは試験科目が違う為、クラスは別となる。
私は進学組、2人は就職組だ。
頭の出来が違うからね。

試験が終わりチャイムが鳴ると私は1番で教室を出た。帰宅の途についたから食事も食べずに自室に籠る。
親は何かあったのかと聞いてきたけれど私は返事しなかった。今頃2人はどうなってるのか、考えただけでも面白い。
彼氏にもきっと話してるはず。
どんな子だよと思われてるかもね~。

そうこう考えてたら早速LINEが。
それは2人からで、怒っているのがすぐわかるものだった。
【腹立たせること書いてどう言うこと?友達じゃなかったの?】
なんて書いてくる。
実際は逆なんだけどね。
ノートはビリビリにしてアンタの机の上にほかったと書かれていた。思惑通り。あとはあれがあれば…。
取りに行くなら今日だね。
今なら生徒は誰もいないはず。
思い立ったら行動に移していた。
学校までは自転車で10分。案外近い。
校門を乗り越えて教師専用出入口から建物内に入る。
私たちのクラスは一階だから楽だ。
突き当たりまで歩いていくとクラスについた。
中に入ると私の机の上が紙で散乱していた。かき集めてノートの表紙を探すと2冊すぐに見つかった。
用心の為手袋をしてきて正解だったかも…。
持ってきた袋にゴミ屑を入れ、破かれたノートも袋に入れる。一応は確認したから大丈夫だ。

笑い出すのをグッと堪え、ワタシはまたきた場所から出て学校を後にした。


自宅に帰ってすることはまず手袋を替える事。
ビニールの手袋に変えて、しわくちゃノートをゆっくり広げる。
表紙の裏にはザラザラな半紙が付けてあり、そこには血がついていた。絞った時にちょうどそこに指が擦れて血が出たに違いない。もう一冊も同じだった。

その血を綿棒でこすり取り、用意していたわら人形に納め入れた。名前を書いた紙を体の部分に貼り付けてあるから間違えることはない。
普通ならそれを木に打ち付けるのだが、ワタシはそんな面倒な方法はとらない。
手に持っているのは黒魔術の本から得た魔法陣。
そこに人形を2体置いて本に書かれている通りに呪文を唱える。
間違えないようにゆっくりと詠唱した。
額には汗が伝い落ちる。

これで終わりだ。
明日、どうなっているのか…考えただけでドキドキする。
今日はぐっすり眠れそうだ…。



翌朝、ワタシは足取りも軽く学校へ向かった。
あの2人がどうなっているかずっと気になっていたのだが、2人は今日は学校を休んでいるのか姿が見えなかった。何かあったのかなと思うとドキドキした。
担任からの説明は無かった。ただの病欠のようだ。
「チッ。」とイラついたワタシは小さな声で口を鳴らす。
せっかくどうなったか知りたかったのに…と大きくため息をついた。

その日は何事もなく普通に過ごし、帰宅した。
自室に戻ると机の上にはあのわら人形が2体置かれていた。
効かなかったのかとガッカリしたワタシはしばらく様子を見る事にした。

翌日2人は登校してきた。もちろん彼氏と一緒…と思ったら違っていた。姿が見えない。
別れでもしたか?
そんなことはたいした事じゃないけどちょっとだけスッとした。


2人は一緒に登校してきたが、何やら様子が……。
どうかしたのか?まっ、関係ないけど。
2人の左手の手首は包帯が巻かれていた。

ワタシは1人その姿を見て教室に入って行った。



2人は黙ったまま自分の席についた。
座った時一瞬だが私の方を見た気がした。ほんと一瞬だけど。

まさかバレた?そんなはずはない。
学校には持ってきてないし、誰にも話してはいない。
計画は万全のはず。

でも私は分かってはいなかった。
黒魔術の呪いを。


2人はいつも通りに授業を受け、そしてお昼休みになって初めて私の元に来た。
ワタシは当たり障りのない返事をした。
しかし彼女達は知っていたようだ。


「アンタ、ちょっと顔かしな!」
そう言って怪我をしていない方の手でワタシの手首を掴み引っ張った。皆何事かとこちらを見て室内はザワついた。そりゃそうだ。つい先日まで仲良しこよしをしてたはずの3人のうちの2人が残りの1人、つまりワタシを睨んでいるからだ。

「何するのよ。痛いじゃないの!ワタシが何かしたって言うの?おかしいよアンタ達。」
「何白々しいこと言ってるのよアンタ。うちらに何かしたでしょ!言いなさいよ!」
「何のことだかわからないわ。」
「あったま来た!とぼけるきね。これを見なさいよ。」
そう言って包帯を外しはじめた。
ワタシは何が始まるのか分からなかった。

それは切り刻まれたような傷だった。2人とも同じ傷。
「それが何?」
「アンタがやったんじゃないの?」
「どうやって?アンタ達がワタシに襲われるようなこととかしたの?」
「そんなの…簡単じゃん。うちら彼氏できたし…。」
「ならその彼氏はどうしたの?」
「なんかいきなり振られたんよ。あんたがうちらの事彼氏にチクったんでしょ?分かってるんだから。」
「バッカじゃないの?彼氏への連絡方法知らないのにどうやってチクるのよ。おかしいんじゃない?アンタ達。」

「絶対アンタが関係してるに違いないわ。私はそう睨んでるんだから。今のうちに白状しなさい。許してあげてもいいかもしれないからさ。クスクス。」
「はっ、バッカじゃないの?そんなこと言われてはいそうですなんて言うわけないじゃん。ま、ワタシがアンタ達に一度も手を触れてないことはアンタ達が1番分かってるはずなんだけどなぁ~。」


バカらしくなったワタシはカバンに荷物を詰め込んで教室を後にした。


【腹立つ!何とかギャフンと言わせてみせるわ。…にしても黒魔術の呪いは失敗だったようね。別の方法を考えないとね。】



自宅に帰るとすぐに黒魔術の本を読んで何が1番効きそうなのかを調べるが、たいしたものは書かれていなかった。白魔術の反対だから黒魔術。なーんだ、たいした事ないじゃん。そんなのダメだよ!許せないもの。
ワタシは自分の血を使う方法で黒魔術が出来ないかと考えた。憎しみはまだ燻ってる。
でもなかったからワタシの魂を使う事にした。
それは命を代償に願いをかけると言う禁断の呪いだ。
死への恐怖はないと言えば嘘になる。けど、それよりも勝る憎しみの数々。
さてどうやって楽に死ねるのかと考えた。
そう言えば片親が夜寝られないと薬を処方してもらってたっけ。それをくすねて全部飲んじゃえば良いじゃん。あったま良い。
だけどそれだとちょっとずつしか集まらないし、何より時間がかかりすぎる。
薬局にも確か置いたあったはず…。
頭の中でいろいろと考えると色々と案が出てくる。
まずは薬が手に入るかを調べる為、自宅から遠くの薬局に向かった。

薬局では処方するのに薬剤師に頼まないといけないようだ。
仕方がないので、適当な嘘をついて一回で買える量を買った。それを何ヶ所か違う店でやって購入した。バレたらまずいからチェーン店は避けるようにした。ワタシナイスだね。
自宅に帰ると薬を箱から全部出して予め用意しておいた瓶に入れて机の引き出しに一旦隠す。
飲むのは夜がいい。
皆んなが寝静まった頃に計画実行だ。


上手くいくと思っていたワタシはそこまでの事しか考えていなかった。

そして深夜も回った1時過ぎにワタシは薬を全部飲んだ。そして布団に入る。憎しみだけが頭にあった。

次に目が覚めた時ワタシは空中に浮いていた。
下を見るとワタシが布団の中にいる。
成功だ!ヤッタァ!と思ったが、体からひもらしきものが伸びて寝ているワタシの体につながっている。と言う事は仮死状態?
サッサとあいつらに恐怖を与えてやる。
あいつらの元へと願ったら一瞬で飛んでいった。
2人がいるのはちょうどいい。
そばまで行って肩を叩いた。

「?なんかした?」
「?何もしてないよ。気のせいじゃない?」
「確かに触られた気がしたんだけどなぁ~?」
「もしかして幽霊だったりして。キャハハ。」
対してびびっていない事に苛立ったワタシはその場にあるものを手当たり次第に飛ばしてみせた。
驚いた2人は慌てて逃げ出す。
「ギャハハ!逃げ出してやんの。おもしろ~。」
今度は何を動かしてやろうか。
そう言えばここ…何処だっけ?
周りを見てみるも如何やら部屋のようだ。
だから食器を落としたり、ナイフを飛ばしたりした。
まぁ、元彼氏達も一緒にいるけどこいつらも同罪。
だから構わないよね。

逃げまくる4人だけど、1人は彼女を庇うが、もう1人は彼女を自分の前に押し出そうとする。
自分が助かりたいばかりの行動だろう。そこには元付き合ってたと言っても本気度がないように見えた。
ちゃんちゃらおかしくってクスクスと笑ったらその声が4人に聞こえたようでびびってたな。だから部屋の明かりも消してやったんだ。
そしたら部屋から逃げ出そうとする4人は庇うもの、庇われるもの、互いを抱き合いながら庇いながら逃げようとするものでわかれた。
仲良しには腹立ったが、仲違いには笑ったよ。
いっちばんうるさく言ってた子達がそれだから如何しても笑いが止まらない。
まぁ、いつまでもここにいたらいけない事はわかっていたので、すぐに自分のあるべき場所に帰る。
そこには両親が並んで泣いていた。
如何したの?
ワタシはここにいるよ?


「残念ですが、お嬢さんはお亡くなりになりました。力及ばず申し訳ありませんでした。」
そう言って医師は腕時計の時間を確認して◯時×分、ご臨終ですと…。そんなバカな。だってまだワタシ生きてるんだよ?
体だって紐が繋がって…?!
え?キレてる。
マジ?
じゃあほんとにワタシ死んだの?

待って待ってちょっと待ってよ!
ワタシまだここで死ぬわけないよね?彼氏だってできた事ないし…結婚だって夢あったんだから…。
嘘、嘘、そんなの嘘よ!
ほら、ワタシの体に入れば生き返るでしょ?
そう言っては見たものの体の中を素通りするだけだった。がっくり項垂れるワタシ。

「わーん、わーん。」と泣いたっても誰も気づいてはくれなかった。
しばらくすると目の前に光が差し込んできた。
ワタシはその場から逃げるようにその光の中に入っていった。そこは光あふれる世界だった。しかしそれは一瞬の事。ワタシは死んだら絶対天国行きと思っていたのに来てみたら地獄ってあり得ないよ。でもね、目の前の眩しい光の玉はまるで意思があるように空中に浮いていた。しかも言葉が頭の中に入ってくる。悪い事をしたから天罰で天国では無く地獄に来たとの事。
理由がわからなかったが、自分の命を使って人を呪ったのが良くなかったようです。涙を流しながらも訴えたが光の玉は徐々にワタシの元から遠ざかる…。


ワタシはその場で両親に別れの言葉を呟いて消えた。
ワタシと言う存在はもういない。。。
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