自分

嵐士

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一介の大学生だった僕は、頭が良いわけでもなければ家が裕福でもない。
そんな僕なのに何故狙われなくてはいけないんだ。
身代金を請求される事もない。
手足を縛られる事も無かったし、目隠しを外された途端「お前は逃げるんだ。うまく逃げきれればお前の勝ちだ。」と言われ逃げ出した僕は、一心不乱に出口を探した。
しかし、いくら進んでも出口はおろか前が暗すぎて先すらも見えない。僕はポケットに入れていたスマホを手に取りライトを点け辺りを照らした。
捕まった時に荷物を、取られてしまったが唯一スマホだけを何とか取られなかったので助かった。
でも、スマホの明かりだけは寂しし不安だ。
僕は寂しさに耐えながら、出口を目指した。いや、目指すしかないのだ。

考えても何も分からないのに考えなくてはいけない辛さはきっと誰にも理解できないだろう。

足音が怖い、息苦しい、鼓動が五月蝿い…。
そんな時でも、逃げるしか方法がない。
逃げて逃げて逃げ続けることしかないのがないのが、僕に出来る最大の武器だ。

「今は、ここに隠れていれば何とかなるだろう。今は大人しくしていよう。」
今は足音もしないので僕は少し目を閉じ眠ることにした。
逃げはじめてから、一度も休んでなかったので足が鉛のように重かった。


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