自分

嵐士

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アイツの声は、どんどん近づいてきてついには僕の目の前に現れた。
「やっと見つけたぞ!もう逃げられない、お前はここで死ぬんだ。覚悟しろ。」
アイツの顔は見えないけど、きっと僕を見て笑っているんだろう。しかし、アイツは何なんだろう。勇気を出して聞いてみる。
「お前こそ何なだよ!どうして僕を追いかけるんだ、僕が何をしたんだ。」
僕は声を振るわせながらいい返した。アイツからは意外な答えが返ってきた。
「馬鹿だな、答えなんかないんだよ。ただの暇つぶしだよ。だって世の中つまらないじゃない?刺激も希望もない、実につまらないそう思わないか。ならば、自分で楽しくしたいと思い始めたそのなも「地獄の鬼ごっこ。」
「地獄の鬼ごっこ?」
本当に頭がわいてるんじゃないのか。常人では到底考えられない。
「でも、だからってその相手がなんで僕なんだ。暇つぶしなら誰でも良かったじゃないか、僕じゃなくたって。」
僕は興奮して一気のにまくしたてた。
アイツはそんな僕の声を聞いても静かに、息をひそめていた。顔が見えないので相手の考えていることが分からない。
僕にはアイツが見えないけど、アイツには僕が見えているのだろうかと疑問が生まれた。アイツは僕の疑問を感じとったのか、ふっと鼻で笑った。
「俺には、お前がよく見えてるてるぜ。」
その言葉を聞いて、僕は舌打ちしかできなかった。何とか打開策を模索しなくてはと思った瞬間、腹筋に痛みが走った。
僕は痛みのあまり一瞬呼吸がとまった。何だ、息が出来なかった?
さらに顔や足、また腹筋にと次々と痛みが押し寄せる。僕は一体なにをされているんだ?口の中にが鉄の味がして、身体中痛くて立ってその場に倒れ込んだ。
「あはは、痛いか?痛いよな?そうだよな、だって、殴ってるんだからな。俺は、お前が見えてるから逃げてても無駄だよ。」
そう言う声が僕の目の前にかかってきた。僕はその声の方向にパンチをかました。しかし、アイツには当たらずに僕の拳は空を切った。
「ずるいぞ、僕には見えないし強いなんて。卑怯だぞ!」
「卑怯?お前が言うなよ、卑怯なのはお前じゃないか。皆んなどんなにお前が嫌いなんだよ。少ない友人も、大切な家族も。いや、家族を大切に思っていたのはお前だけだけどな。だから誰も助けに来なかったんだよ。」
皆んな僕が嫌い?友達も、父さん、母さん、結衣も皆んな僕を…皆んな…皆んな…。
「何?遺著前に絶望してるの?涙なんて流しちゃって。」
僕はなにも言えないし、呼吸の仕方も忘れるくらい何も考えられなかった。これが絶望というのか。
そんな僕にアイツは耳元で囁き出した。
「大丈夫、これからは俺がお前の代わりに上手く生きてやるから安心にろ。」
「どう言うことだ。」
「もういいだろう。おい、ライト点けろ。」
そう言うと、急に周りが明るくなり僕は目が眩んだ。
だんだん光に慣れていくと目の前にいた人間に僕は驚いた。
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