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5 決闘のあとに
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私たちは逃亡の勢いのまま、イストリア公に頼んでいた砦の一つに飛び込んだ。
既に矢は尽き、馬も装備もボロボロである。現状、約一割、50名ほどが行方不明になっている。おそらくあの場で死んでしまったものがほとんどだろう。
決闘は結局私たちの完膚なまでの敗北であるが、もちろんそれだけで済むわけでもない。
なんせランドルフ公たちは最初から定数の倍以上の兵力を用意した上に、さらに倍の伏兵まで用意していたのだ。
卑怯極まりない手であり、彼らが示すことができたのは結局彼らの武力だけであった。
今回の騒動で、状況は大きく動くだろう。
元婚約者殿には借りを山のように返す必要があったが、現状は傷を癒しながら、状況の推移を確認する必要があった。
決闘の三日後、宰相マルコイ公が職を辞した。
一応、私の後見人になっていた彼は、今回の決闘で私を一切援助しなかったことで弱腰と非難されたのだ。
おそらくランドルフ公のネガティブキャンペーンも多分に含まれているだろう。
だが、この辞職の後、マルコイ公は自分の領地に戻り、戦争の準備をするだろうことは容易に想像ができる。
元々マルコイ公とマルーン候は血のつながりがあり、さらにマルコイ公の領地で産出されたものを、マルーン候の領地に流れる大河で帝都に運び、売るという関係にあった以上、かなり親密な関係にあったはずだった。
だが、今回のことで、両家の関係は完全に断絶したはずだ。
それを、マルーン候は果たしてちゃんと予想していたのか、それは私にはわからなかった。
そして、宰相の後任に、兄は困っているだろう。
マルーン候がなれるならば、大きな問題にはならない。
卑怯なことをしたし、政治的センスはあまり良くないが、軍務卿として、軍のトップを長く務めた経験があり、宰相だって多少問題があってもどうにかこなすことができるだろう。
だが、宰相になれるのは三公家、すなわち前宰相のマルコイ公、今回ランドルフ公を継いだアルバート、そしていま私たちが身を寄せているイストリア公だけしかなれないのである。
アルバートは能力的に論外となれば、イストリア公を持ってくることを考えているだろう。
それを潰すべく、私たちはイストリア公に積極的な働きかけをしていた。
今回の決闘の数多くの卑怯な行いについて、兄である皇帝が知っていた、とは思っていない。
お人好しの兄が知っていたら、私の元にその情報が流れてきているはずであり、アルバートとマルーン候の策略だろうと思われた。
だが、決闘を認可したのは皇帝であり、対外的にはあの策略の責任も結果も、兄が負わなければならないものになってしまった。
その完全な被害者である私は、皇帝と完全に対立することになってしまう。私が皇位継承権を持っている以上、皇帝位を争う内戦が始まろうとしていた。
いや、もう始まっているのだろう。単にまだ、直接矛を交えていないだけに過ぎない状況だった。
状況から見て、マルコイ公はこちらにつくだろうし、ランドルフ公は皇帝側だろう。
南部諸侯は、マルコイ公がマルーン候に代わる取引相手を探しがてら、調略してくれるだろう。
私は私で、イストリア公家を説得しこちら側に付けなければならない。
イストリア公家もまた、ランドルフ公家と同じく跡継ぎ争いがあった。
庶子で能力の高いエミールと、正当な血統の嫡子オリバーの争いだ。
これを解決すればイストリア公もまた、私につくだろう。そして、その解決方法を私は持っていた。
「姫様、エミール様がいらっしゃいました」
「こちらに通して」
決闘騒ぎから一週間後、後継者争いをしているエミールがこちらに訪れた。
これからどういう話になるのか、私は想定しながらエミールを私室で待ち受けるのであった。
既に矢は尽き、馬も装備もボロボロである。現状、約一割、50名ほどが行方不明になっている。おそらくあの場で死んでしまったものがほとんどだろう。
決闘は結局私たちの完膚なまでの敗北であるが、もちろんそれだけで済むわけでもない。
なんせランドルフ公たちは最初から定数の倍以上の兵力を用意した上に、さらに倍の伏兵まで用意していたのだ。
卑怯極まりない手であり、彼らが示すことができたのは結局彼らの武力だけであった。
今回の騒動で、状況は大きく動くだろう。
元婚約者殿には借りを山のように返す必要があったが、現状は傷を癒しながら、状況の推移を確認する必要があった。
決闘の三日後、宰相マルコイ公が職を辞した。
一応、私の後見人になっていた彼は、今回の決闘で私を一切援助しなかったことで弱腰と非難されたのだ。
おそらくランドルフ公のネガティブキャンペーンも多分に含まれているだろう。
だが、この辞職の後、マルコイ公は自分の領地に戻り、戦争の準備をするだろうことは容易に想像ができる。
元々マルコイ公とマルーン候は血のつながりがあり、さらにマルコイ公の領地で産出されたものを、マルーン候の領地に流れる大河で帝都に運び、売るという関係にあった以上、かなり親密な関係にあったはずだった。
だが、今回のことで、両家の関係は完全に断絶したはずだ。
それを、マルーン候は果たしてちゃんと予想していたのか、それは私にはわからなかった。
そして、宰相の後任に、兄は困っているだろう。
マルーン候がなれるならば、大きな問題にはならない。
卑怯なことをしたし、政治的センスはあまり良くないが、軍務卿として、軍のトップを長く務めた経験があり、宰相だって多少問題があってもどうにかこなすことができるだろう。
だが、宰相になれるのは三公家、すなわち前宰相のマルコイ公、今回ランドルフ公を継いだアルバート、そしていま私たちが身を寄せているイストリア公だけしかなれないのである。
アルバートは能力的に論外となれば、イストリア公を持ってくることを考えているだろう。
それを潰すべく、私たちはイストリア公に積極的な働きかけをしていた。
今回の決闘の数多くの卑怯な行いについて、兄である皇帝が知っていた、とは思っていない。
お人好しの兄が知っていたら、私の元にその情報が流れてきているはずであり、アルバートとマルーン候の策略だろうと思われた。
だが、決闘を認可したのは皇帝であり、対外的にはあの策略の責任も結果も、兄が負わなければならないものになってしまった。
その完全な被害者である私は、皇帝と完全に対立することになってしまう。私が皇位継承権を持っている以上、皇帝位を争う内戦が始まろうとしていた。
いや、もう始まっているのだろう。単にまだ、直接矛を交えていないだけに過ぎない状況だった。
状況から見て、マルコイ公はこちらにつくだろうし、ランドルフ公は皇帝側だろう。
南部諸侯は、マルコイ公がマルーン候に代わる取引相手を探しがてら、調略してくれるだろう。
私は私で、イストリア公家を説得しこちら側に付けなければならない。
イストリア公家もまた、ランドルフ公家と同じく跡継ぎ争いがあった。
庶子で能力の高いエミールと、正当な血統の嫡子オリバーの争いだ。
これを解決すればイストリア公もまた、私につくだろう。そして、その解決方法を私は持っていた。
「姫様、エミール様がいらっしゃいました」
「こちらに通して」
決闘騒ぎから一週間後、後継者争いをしているエミールがこちらに訪れた。
これからどういう話になるのか、私は想定しながらエミールを私室で待ち受けるのであった。
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