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第三章 お兄様公爵とうちのお義兄さま
7 内政
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異世界転生して貴族になったら何をするか。
そう、NAISEIチートです。
前世知識を使って、なんかすごいものを作り出したりすれば大儲け間違いありません。
そう、転生したのだからそんなことが……
「できるわけないんですよね……」
当然できるわけないです。今の世界の技術水準で可能なものと言ったら、と考えるとどの知識も使えない。蒸気機関がギリギリできるか、ぐらいでしょうが、蒸気機関の構造なんて当然全く知りません。お湯が沸騰して気体になることによる力を使うのはわかりますが、それをどういう風に動力に変換するかなんてボクにはさっぱりわかりません。
ノーフォーク農法? 輪作なんて今でもやっています。というか前世のあの時代だって輪作ぐらい普通にやっていたわけでして、そんなので農作物の収穫量上がるわけもなく……
ひとまず境界域の山脈の調査は始めていまして、魔石の鉱脈は見つかっていたりします。
魔石は魔力が結晶化したもので、エネルギー資源として使えるものです。と言っても一部の魔道具の部品になるか、純度の高いものが宝飾品になるか程度で、使い道が多いわけではないのですが……
鉱脈自体はとても大きくて、早速試掘が始まっています。ボクの手元にも大きな透き通った魔石が送られてきました。キラキラと七色に光るので確かにきれいですね。
ただ、取れるものはほとんどは見た目の悪いクズ魔石だそうです。魔力の含有量は変わらないようですが見た目が良くないのだとか。
「宝石以外で使い道ないかなぁ。ニキータさん、何かいい活用方法知らない? もしくは使い方を知っている人」
ニキータさんは首都マーチの纏め役兼経済政策担当というとても忙しい立場になっています。うちの領で一番社会のことを知っているので、こういう時に頼りにしてしまっています。
彼女自身、新しいもの好きなのと、仕事も首都の商人の人たちをうまく雇ってこなしているらしいのもあり、ボクの無茶振りにも結構付き合ってくれます。困ったときにこうやって声をかけると、三分の二ぐらいはどうにかしてくれて、三分の一ぐらいは無下に断られて諦めることになります。
今回の無茶振りについては、心当たりがあったようです。
「魔道具技師の方なら一人心当たりがあります。ムアク男爵領に住んでいる方で、今は隠遁している方ですね。偏屈な方なので応じてくれるかわかりませんが……」
「ムアク男爵領なら今日中に行けるかな。じゃあボクがちょっと説得してくるね」
ニキータさんが言った男爵領は、辺境伯首都から歩いて半日ちょっとすぐの村です。前回の対公爵軍の遠征の時に通過した村の一つでもあります。
そんなところに人材がいたとは。応じてくれるかはわかりませんが、ひとまず説得してみましょう。
正直、今の辺境伯家で一番余裕があるのはボクです。もちろん緊急事態になると非常に忙しくなるのですが、平和な時のルーチンワークはボクには基本ありません。
辺境伯首都の街の運営はニキータさんが、旧来の辺境伯領はアルゥちゃんとカーク子爵のアランさんが、魔の森周辺地域である新辺境伯領は義兄とキリル子爵のセバスさんがまとめてくれています。諜報及び情報収集要員としては、元ルドン男爵令嬢で現ルドン子爵になったフィオナさんが男も女も食いながら対応してくれていて、軍と道場は義兄とクレイが運営しています。
つまり、ボクの日常業務は0です。
偉い人は他人に仕事を任せられる、とてもいいことです。
後は裏切られないことを祈りましょう。
さて、話は置いておいて、そんな感じでルーチンワークがないボクはこうやって思い立ったらすぐ動けます。サクッと準備してどうにか説得しに行きましょう。
準備をしていると、ニキータさんが一枚の紙を渡してきます。
「これ、あらかじめ差し上げます」
「なんですか? これ」
「魔道具技師、ドランさんというのですが、彼のツケの証書です。今まで取引があって、一つ一つの額は小さいのですが溜まって結構な額になっていますので。うまく使ってください」
「ありがたく使わせてもらいます」
ニキータさんから対魔道具技師さんへの最終兵器を受け取って、ボクは男爵領へと旅立ちます。
義兄に一声かけて、明後日までには帰ると告げてから一人ぶらり気軽な旅です。
一応武装はちゃんとしていきます。姫騎士痴女のビキニにボクの身長と同じ長さがある大剣を背負い、腰にはショートソードといういつもの格好です。
治安維持はちゃんとできていると聞いていますので、一人でもおそらく大丈夫だろうと思っていたのですが、町を出て2時間。
「誰か助けてぇええ!!!」
女性の悲鳴が聞こえてきました。
悲鳴の聞こえる方に駆け付けると、女性が男性の一群に囲まれています。
男性達側は正規兵のような、武器防具一式をきっちり着込んでおり、一方女性の方は結構ボロボロで身なりが貧しい印象です。
男性たち側が物々しい雰囲気を出していますが、どちらが悪いかはわかりません。女性側が泥棒で、男性たちが捕まえているのかもしれませんし、女性が身売りされてどうにか逃げようとしているのかもしれません。
ただ、女性一人に男性20人はちょっと多くないかな、と思いもしますが……
まだ、双方ともこちらに気付いていないようなので、声をかける前にもう少し確認をします。
通常正規の活動をしている場合、軍は所属を示す紋章をどこかにつけています。近隣の貴族の紋章をつけていれば、まあ一応正規軍として考えていいでしょう。判断するにはどこの貴族がどんな紋章を使っているのか覚える必要がありますが、全部覚えるのはとても大変でした。配下の貴族の紋章ぐらいは覚えていないと失礼ですし、敵味方混同しかねないですから実利的にも重要なのです。
さて、問題の男性達の紋章は…… 剣の柄に刻まれていますね。獅子をかたどった紋章というと…… あれ?
「前キリル子爵の紋章……?」
「だれだっ!?」
思わず声を出してしまい、相手に気付かれてしまいました。
ボクは大剣を構えます。見間違いでなければ、あれは前キリル子爵の紋章です。
公爵軍が前キリル子爵周辺の者たちは根絶やしにしたと思っていましたが、もしかしたら残っていたのかもしれません。残党だったりすると悪さをすると大変ですし、対応が必要でしょう。
「ボクはマーチ辺境伯アーシェロット。貴殿らが何者か、明らかにされたし」
「マーチ辺境伯だと!? 確かにその銀髪と竜の角と尾は、あの簒奪者…… 俺にもやっと運が向いてきたな!!」
ボクが名乗ると、一人のおじさんが、急に興奮し始めました。ロリコンでしょうか。触りたくないですね……
「俺は、キリル子爵にしてマーチ辺境伯の正統な後継者、ユーノだ!! 貴様の首、もらい受ける!!」
推定ロリコンおじさん、自称キリル子爵が剣を振りかぶってボクに襲い掛かってきました。
上段からの一撃は、確かに力の乗った、剣に慣れた一撃でした。
ボクは大剣で受け止めます。
「キリル子爵って、死亡したんじゃ……?」
「公爵に裏切られたが、あの程度で死ぬ俺じゃない! 替え玉で逃げ切って、正当に辺境伯を継ぐために隠れていたのさ! そして、貴様を倒せば俺が辺境伯だ!!」
「いやそうはならんやろ……」
「何がだ! 今の俺の剣技は前辺境伯を上回っている!! すぐに切り殺してやる!!」
前キリル子爵は意気揚々と明るい未来を語っていますが、これだけ負けて、混乱を起こしてきた彼ではボクを倒しただけでは誰もついてこないでしょう。エミリーが呼び戻されるか、公爵が兼任するか、義兄が引き継ぐか、そのあたりで落ち着くはずです。
そしてなにより……
「ふべっ!!」
「弱いですね、前辺境伯より強いとか過剰主張の極みでしょう」
剣戟のスキマを縫ってボクの拳が相手の顔面に突き刺さりました。
前キリル子爵は決して弱くはありません。男爵級は超えた腕前なのは確かです。
とはいえ、前辺境伯と比べるとどうかと言われると確実に弱いです。
前辺境伯、正式にはエミリーが一瞬引き継いでいるので前々辺境伯なわけですが、いろいろ問題があったとは思いますが強かったのは確かです。攻めて来られて戦ったとき、正攻法で戦えばボクが負けていた可能性は高いと思います。で、前キリル子爵はあの頃のボクですら勝てただろうレベルです。あの後新しい剣技も増やして、アルゥちゃんと一緒にトレーニングしてパワーアップしているボクの足元にも及びません。
ボクを倒せるぐらい強ければ、そもそも公爵にだって負けなかったはずです。義兄は公爵より強く、ボクは義兄より強いわけで、相性を考えても最低限ボクを倒すには公爵級の強さが必要です。
何をどう考えて勝てると思ったかわかりませんが、これなら何回やっても負ける気がしません。
「お、お前ら、助けろ!!」
「「「「うおおおおおお!!」」」」
周りにいた兵士たちが前キリル子爵に加勢します。
20対1になると確かに数的に劣勢ですが、とはいえそう苦戦する相手でもありません。大剣をブンブン振り回せば、彼らぐらいの腕では隙をついて攻めることもできないでしょう。
「「「ぐわああああ!!!」」」
「ひぐっ!?」
「たすけっ、ぎゃあああああ!!!」
切れ味の鈍い大剣ですが、長さと重さは一級品です。
最初の一撃で3人を吹き飛ばし、切り返しで2人吹き飛ばし、さらにもう一度横に薙いで3人吹き飛ばし……
すぐに全員気絶させることができました。まあ兵士レベルなんてこんなものです。無双状態ですね。
あとは気絶した連中と、前キリル子爵を縄で縛れば、ここ最近、辺境伯領周辺を騒がせてきた前キリル子爵の最期です。
後の捜査はフィオナさんあたりに任せましょう。幸い生け捕りに出来ましたから、潜伏中の情報なども引き出せるでしょう。
まあひとまずは……
「そこの人」
「ひゃい!?」
「近くの村から人を呼んできて。賊を捕まえたって」
「わ、わかりました!!」
絡まれていた女性に頼んで人を呼んでもらいます。この人たちを叩きのめすなら簡単ですが、連れていけませんからね……
女性が駆けていく背中を見ながら、ボクは捕まえた連中を見張り続けるのでした。
そう、NAISEIチートです。
前世知識を使って、なんかすごいものを作り出したりすれば大儲け間違いありません。
そう、転生したのだからそんなことが……
「できるわけないんですよね……」
当然できるわけないです。今の世界の技術水準で可能なものと言ったら、と考えるとどの知識も使えない。蒸気機関がギリギリできるか、ぐらいでしょうが、蒸気機関の構造なんて当然全く知りません。お湯が沸騰して気体になることによる力を使うのはわかりますが、それをどういう風に動力に変換するかなんてボクにはさっぱりわかりません。
ノーフォーク農法? 輪作なんて今でもやっています。というか前世のあの時代だって輪作ぐらい普通にやっていたわけでして、そんなので農作物の収穫量上がるわけもなく……
ひとまず境界域の山脈の調査は始めていまして、魔石の鉱脈は見つかっていたりします。
魔石は魔力が結晶化したもので、エネルギー資源として使えるものです。と言っても一部の魔道具の部品になるか、純度の高いものが宝飾品になるか程度で、使い道が多いわけではないのですが……
鉱脈自体はとても大きくて、早速試掘が始まっています。ボクの手元にも大きな透き通った魔石が送られてきました。キラキラと七色に光るので確かにきれいですね。
ただ、取れるものはほとんどは見た目の悪いクズ魔石だそうです。魔力の含有量は変わらないようですが見た目が良くないのだとか。
「宝石以外で使い道ないかなぁ。ニキータさん、何かいい活用方法知らない? もしくは使い方を知っている人」
ニキータさんは首都マーチの纏め役兼経済政策担当というとても忙しい立場になっています。うちの領で一番社会のことを知っているので、こういう時に頼りにしてしまっています。
彼女自身、新しいもの好きなのと、仕事も首都の商人の人たちをうまく雇ってこなしているらしいのもあり、ボクの無茶振りにも結構付き合ってくれます。困ったときにこうやって声をかけると、三分の二ぐらいはどうにかしてくれて、三分の一ぐらいは無下に断られて諦めることになります。
今回の無茶振りについては、心当たりがあったようです。
「魔道具技師の方なら一人心当たりがあります。ムアク男爵領に住んでいる方で、今は隠遁している方ですね。偏屈な方なので応じてくれるかわかりませんが……」
「ムアク男爵領なら今日中に行けるかな。じゃあボクがちょっと説得してくるね」
ニキータさんが言った男爵領は、辺境伯首都から歩いて半日ちょっとすぐの村です。前回の対公爵軍の遠征の時に通過した村の一つでもあります。
そんなところに人材がいたとは。応じてくれるかはわかりませんが、ひとまず説得してみましょう。
正直、今の辺境伯家で一番余裕があるのはボクです。もちろん緊急事態になると非常に忙しくなるのですが、平和な時のルーチンワークはボクには基本ありません。
辺境伯首都の街の運営はニキータさんが、旧来の辺境伯領はアルゥちゃんとカーク子爵のアランさんが、魔の森周辺地域である新辺境伯領は義兄とキリル子爵のセバスさんがまとめてくれています。諜報及び情報収集要員としては、元ルドン男爵令嬢で現ルドン子爵になったフィオナさんが男も女も食いながら対応してくれていて、軍と道場は義兄とクレイが運営しています。
つまり、ボクの日常業務は0です。
偉い人は他人に仕事を任せられる、とてもいいことです。
後は裏切られないことを祈りましょう。
さて、話は置いておいて、そんな感じでルーチンワークがないボクはこうやって思い立ったらすぐ動けます。サクッと準備してどうにか説得しに行きましょう。
準備をしていると、ニキータさんが一枚の紙を渡してきます。
「これ、あらかじめ差し上げます」
「なんですか? これ」
「魔道具技師、ドランさんというのですが、彼のツケの証書です。今まで取引があって、一つ一つの額は小さいのですが溜まって結構な額になっていますので。うまく使ってください」
「ありがたく使わせてもらいます」
ニキータさんから対魔道具技師さんへの最終兵器を受け取って、ボクは男爵領へと旅立ちます。
義兄に一声かけて、明後日までには帰ると告げてから一人ぶらり気軽な旅です。
一応武装はちゃんとしていきます。姫騎士痴女のビキニにボクの身長と同じ長さがある大剣を背負い、腰にはショートソードといういつもの格好です。
治安維持はちゃんとできていると聞いていますので、一人でもおそらく大丈夫だろうと思っていたのですが、町を出て2時間。
「誰か助けてぇええ!!!」
女性の悲鳴が聞こえてきました。
悲鳴の聞こえる方に駆け付けると、女性が男性の一群に囲まれています。
男性達側は正規兵のような、武器防具一式をきっちり着込んでおり、一方女性の方は結構ボロボロで身なりが貧しい印象です。
男性たち側が物々しい雰囲気を出していますが、どちらが悪いかはわかりません。女性側が泥棒で、男性たちが捕まえているのかもしれませんし、女性が身売りされてどうにか逃げようとしているのかもしれません。
ただ、女性一人に男性20人はちょっと多くないかな、と思いもしますが……
まだ、双方ともこちらに気付いていないようなので、声をかける前にもう少し確認をします。
通常正規の活動をしている場合、軍は所属を示す紋章をどこかにつけています。近隣の貴族の紋章をつけていれば、まあ一応正規軍として考えていいでしょう。判断するにはどこの貴族がどんな紋章を使っているのか覚える必要がありますが、全部覚えるのはとても大変でした。配下の貴族の紋章ぐらいは覚えていないと失礼ですし、敵味方混同しかねないですから実利的にも重要なのです。
さて、問題の男性達の紋章は…… 剣の柄に刻まれていますね。獅子をかたどった紋章というと…… あれ?
「前キリル子爵の紋章……?」
「だれだっ!?」
思わず声を出してしまい、相手に気付かれてしまいました。
ボクは大剣を構えます。見間違いでなければ、あれは前キリル子爵の紋章です。
公爵軍が前キリル子爵周辺の者たちは根絶やしにしたと思っていましたが、もしかしたら残っていたのかもしれません。残党だったりすると悪さをすると大変ですし、対応が必要でしょう。
「ボクはマーチ辺境伯アーシェロット。貴殿らが何者か、明らかにされたし」
「マーチ辺境伯だと!? 確かにその銀髪と竜の角と尾は、あの簒奪者…… 俺にもやっと運が向いてきたな!!」
ボクが名乗ると、一人のおじさんが、急に興奮し始めました。ロリコンでしょうか。触りたくないですね……
「俺は、キリル子爵にしてマーチ辺境伯の正統な後継者、ユーノだ!! 貴様の首、もらい受ける!!」
推定ロリコンおじさん、自称キリル子爵が剣を振りかぶってボクに襲い掛かってきました。
上段からの一撃は、確かに力の乗った、剣に慣れた一撃でした。
ボクは大剣で受け止めます。
「キリル子爵って、死亡したんじゃ……?」
「公爵に裏切られたが、あの程度で死ぬ俺じゃない! 替え玉で逃げ切って、正当に辺境伯を継ぐために隠れていたのさ! そして、貴様を倒せば俺が辺境伯だ!!」
「いやそうはならんやろ……」
「何がだ! 今の俺の剣技は前辺境伯を上回っている!! すぐに切り殺してやる!!」
前キリル子爵は意気揚々と明るい未来を語っていますが、これだけ負けて、混乱を起こしてきた彼ではボクを倒しただけでは誰もついてこないでしょう。エミリーが呼び戻されるか、公爵が兼任するか、義兄が引き継ぐか、そのあたりで落ち着くはずです。
そしてなにより……
「ふべっ!!」
「弱いですね、前辺境伯より強いとか過剰主張の極みでしょう」
剣戟のスキマを縫ってボクの拳が相手の顔面に突き刺さりました。
前キリル子爵は決して弱くはありません。男爵級は超えた腕前なのは確かです。
とはいえ、前辺境伯と比べるとどうかと言われると確実に弱いです。
前辺境伯、正式にはエミリーが一瞬引き継いでいるので前々辺境伯なわけですが、いろいろ問題があったとは思いますが強かったのは確かです。攻めて来られて戦ったとき、正攻法で戦えばボクが負けていた可能性は高いと思います。で、前キリル子爵はあの頃のボクですら勝てただろうレベルです。あの後新しい剣技も増やして、アルゥちゃんと一緒にトレーニングしてパワーアップしているボクの足元にも及びません。
ボクを倒せるぐらい強ければ、そもそも公爵にだって負けなかったはずです。義兄は公爵より強く、ボクは義兄より強いわけで、相性を考えても最低限ボクを倒すには公爵級の強さが必要です。
何をどう考えて勝てると思ったかわかりませんが、これなら何回やっても負ける気がしません。
「お、お前ら、助けろ!!」
「「「「うおおおおおお!!」」」」
周りにいた兵士たちが前キリル子爵に加勢します。
20対1になると確かに数的に劣勢ですが、とはいえそう苦戦する相手でもありません。大剣をブンブン振り回せば、彼らぐらいの腕では隙をついて攻めることもできないでしょう。
「「「ぐわああああ!!!」」」
「ひぐっ!?」
「たすけっ、ぎゃあああああ!!!」
切れ味の鈍い大剣ですが、長さと重さは一級品です。
最初の一撃で3人を吹き飛ばし、切り返しで2人吹き飛ばし、さらにもう一度横に薙いで3人吹き飛ばし……
すぐに全員気絶させることができました。まあ兵士レベルなんてこんなものです。無双状態ですね。
あとは気絶した連中と、前キリル子爵を縄で縛れば、ここ最近、辺境伯領周辺を騒がせてきた前キリル子爵の最期です。
後の捜査はフィオナさんあたりに任せましょう。幸い生け捕りに出来ましたから、潜伏中の情報なども引き出せるでしょう。
まあひとまずは……
「そこの人」
「ひゃい!?」
「近くの村から人を呼んできて。賊を捕まえたって」
「わ、わかりました!!」
絡まれていた女性に頼んで人を呼んでもらいます。この人たちを叩きのめすなら簡単ですが、連れていけませんからね……
女性が駆けていく背中を見ながら、ボクは捕まえた連中を見張り続けるのでした。
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