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第一章 断罪劇からの帝都脱出
6 お話合いの時間3
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「なんにしろイストリア公が姫様のことが大好きだというのはわかりました。私でも聖女臭振りまく姫様を好きとは言えませんので、仕方がありません。認めましょう」
「だからクロエはボクのなんなのさ……」
「だって姫様、放置したら結婚とか、それ以前に恋愛とかしないで引きこもるでしょう? そのうちアンタッチャブルの権化とかになりますよ?」
「いいじゃない。ずっと放置してくれれば」
「放置したら寂しくなってすり寄ってくるじゃないですか。しかも変なタイミングで。うっとおしいので引き取り手がいるなら引き取ってもらおうかと思って」
「ボクは捨て猫かなにかかな!?」
「捨て猫のほうが拾い手探すの楽ですよ」
「にゃああああん!!!」
コテンパンに言われてぐぅの音も出なくなってしまう。
このままだと変な方向にもっていかれかねないし、話を強引に本論に戻す。
「まあ、第二皇子がボクの事が好きなのはわかりました。で、帝位を狙うというのは?」
「アンジェ嬢を皇帝にしようかなと」
「は? 第二皇子が皇帝になるのでは?」
「いや、それは難しいし…… アンジェ嬢のほうが狙える位置にあるだろう」
「いやいや、おかしいでしょう。こちらとて、山奥育ちですよ」
「しかし君が当代の『竜姫』だ。竜帝の血を引くのも、見た目から明らかだしな」
「そうかもしれないですけど……」
帝国を作ったのは竜帝といわれる竜人だった。
竜帝は人々を守り、魔王を倒した英雄であった。そんな彼女の元に人々が集まって帝国ができた、という由来がある。
国が落ち着いた後、竜帝は、子供ができたしもう疲れたので引退する、とさっさと退位して山奥に引きこもった。その血筋がボクのドラゴニア山公であり、代々その血筋で竜の要素が強く出ている人間は男なら竜公、女なら竜姫と呼ばれている。
銀髪金眼の白竜だったといわれる竜帝の特徴を、確かにボクは色濃く引き継いでいるが……
「300年前の話じゃない。もうカビが生えちゃってるよ」
その後王朝自体が2度変わっているし、ドラゴニア山公はずっと引きこもって帝国の政治には一切かかわってこなかった。
正当性、という意味では悪くないのかもしれないが、地縁も血縁もない自分が皇帝になれる気がまるでしない。
「そのままでは難しいが、こちらがバックアップすれば十分戦えると思っている」
「そう? 七候の支持を得られないでしょう?」
皇帝を選ぶのは七候だ。7人のうち三分の二、つまり5人の票を得ると皇帝になれる。
それが決まるまで何度も選挙をし直すことになる。それが選定の儀式だ。
帝国の政治関係にあまり明るいわけではないが、皇后の実家のイーザッハ候は皇太子側だろうことは容易に想像できるし、茶番劇の場にいたレーべルク大司教も聖界諸侯として1票もっている。彼もまた皇太子側だろう。
ボクが対抗馬に立った場合、この2票は確実に皇太子側として確定してしまう。
残り5票を取らないといけないというのはかなり厳しい。中立が多ければ、折れないだろう2票を持つ皇太子が圧倒的に有利だ。
帝国周辺の公や王もしくは帝国辺境伯だったら轡を並べた縁があるが、帝国の中枢たる選定七候にはほとんど縁がなかった。
「大義名分はアンジェ嬢自身にあるし、金ならうちが一番だ。皇太子のアンジェ嬢への扱いを見て諸侯の動揺は大きいだろうことは予想できるし、その隙をつく予定だ」
「なんというか、行き当たりばったりですね……」
帝国を二分する大戦争をするならばこちらが有利かもしれないが、単純な投票ではどこまで有効だろうか。
泥船のようにしか見えないが、ただ……
「まあ、皇太子に散々嫌な目にあわされましたから、仕返しもしたかったところです。協力しましょう。ただ、危なくなったら聖都にあなたを見捨てて逃げますからね」
まあ、皇太子にあれだけされたのだから、一度反撃はしたかったところだ。
自分の退路が確保できるなら、やるのはやぶさかではない。
「それでは、よろしく。マイスイート」
「何それ気持ち悪い」
いちいち大げさな感じがする第二皇子をスルーして、今後について話は続くのであった。
「だからクロエはボクのなんなのさ……」
「だって姫様、放置したら結婚とか、それ以前に恋愛とかしないで引きこもるでしょう? そのうちアンタッチャブルの権化とかになりますよ?」
「いいじゃない。ずっと放置してくれれば」
「放置したら寂しくなってすり寄ってくるじゃないですか。しかも変なタイミングで。うっとおしいので引き取り手がいるなら引き取ってもらおうかと思って」
「ボクは捨て猫かなにかかな!?」
「捨て猫のほうが拾い手探すの楽ですよ」
「にゃああああん!!!」
コテンパンに言われてぐぅの音も出なくなってしまう。
このままだと変な方向にもっていかれかねないし、話を強引に本論に戻す。
「まあ、第二皇子がボクの事が好きなのはわかりました。で、帝位を狙うというのは?」
「アンジェ嬢を皇帝にしようかなと」
「は? 第二皇子が皇帝になるのでは?」
「いや、それは難しいし…… アンジェ嬢のほうが狙える位置にあるだろう」
「いやいや、おかしいでしょう。こちらとて、山奥育ちですよ」
「しかし君が当代の『竜姫』だ。竜帝の血を引くのも、見た目から明らかだしな」
「そうかもしれないですけど……」
帝国を作ったのは竜帝といわれる竜人だった。
竜帝は人々を守り、魔王を倒した英雄であった。そんな彼女の元に人々が集まって帝国ができた、という由来がある。
国が落ち着いた後、竜帝は、子供ができたしもう疲れたので引退する、とさっさと退位して山奥に引きこもった。その血筋がボクのドラゴニア山公であり、代々その血筋で竜の要素が強く出ている人間は男なら竜公、女なら竜姫と呼ばれている。
銀髪金眼の白竜だったといわれる竜帝の特徴を、確かにボクは色濃く引き継いでいるが……
「300年前の話じゃない。もうカビが生えちゃってるよ」
その後王朝自体が2度変わっているし、ドラゴニア山公はずっと引きこもって帝国の政治には一切かかわってこなかった。
正当性、という意味では悪くないのかもしれないが、地縁も血縁もない自分が皇帝になれる気がまるでしない。
「そのままでは難しいが、こちらがバックアップすれば十分戦えると思っている」
「そう? 七候の支持を得られないでしょう?」
皇帝を選ぶのは七候だ。7人のうち三分の二、つまり5人の票を得ると皇帝になれる。
それが決まるまで何度も選挙をし直すことになる。それが選定の儀式だ。
帝国の政治関係にあまり明るいわけではないが、皇后の実家のイーザッハ候は皇太子側だろうことは容易に想像できるし、茶番劇の場にいたレーべルク大司教も聖界諸侯として1票もっている。彼もまた皇太子側だろう。
ボクが対抗馬に立った場合、この2票は確実に皇太子側として確定してしまう。
残り5票を取らないといけないというのはかなり厳しい。中立が多ければ、折れないだろう2票を持つ皇太子が圧倒的に有利だ。
帝国周辺の公や王もしくは帝国辺境伯だったら轡を並べた縁があるが、帝国の中枢たる選定七候にはほとんど縁がなかった。
「大義名分はアンジェ嬢自身にあるし、金ならうちが一番だ。皇太子のアンジェ嬢への扱いを見て諸侯の動揺は大きいだろうことは予想できるし、その隙をつく予定だ」
「なんというか、行き当たりばったりですね……」
帝国を二分する大戦争をするならばこちらが有利かもしれないが、単純な投票ではどこまで有効だろうか。
泥船のようにしか見えないが、ただ……
「まあ、皇太子に散々嫌な目にあわされましたから、仕返しもしたかったところです。協力しましょう。ただ、危なくなったら聖都にあなたを見捨てて逃げますからね」
まあ、皇太子にあれだけされたのだから、一度反撃はしたかったところだ。
自分の退路が確保できるなら、やるのはやぶさかではない。
「それでは、よろしく。マイスイート」
「何それ気持ち悪い」
いちいち大げさな感じがする第二皇子をスルーして、今後について話は続くのであった。
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