偽聖女と糾弾されて追放されたから、帝国を乗っ取ることにした【完結】

みやび

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第五章 竜帝

5 魔王復活

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干からびていくレーベルク大司教。
黒い獣へと変貌していく騎士団長。
人々の悪意をかき集め、固めたような不気味な黒だった。

何をしているのかは推測しかできないが、おそらく帝都中の瘴気を集め、すべてのみこんだのだろう。
レーベルク大聖堂は帝都の瘴気を集め、浄化する役割がある。あそこに帝都全ての瘴気が集まるのだ。
多くの人がいるとそれだけ瘴気も生まれる。そのためのシステムなのだが、それを利用したか。
ただ、半月や一月集めた程度の量ではない。レーベルク大司教まで生贄に捧げ、何らかの邪法でも使ったのかもしれない。
若しくは前から大量に溜めていたりしたのかもしれない。

なんにしろ緊急事態だ。
ひとまず非戦闘員には下がってもらって助けを呼んできてもらおう。
そして援軍は来るかもしれないがボクらであれを倒さないといけない。

「よかったね、ヴィアナ。魔王討伐できるよ」
「本気で倒すつもり!?」
「倒さないと、帝都がほろびそうだし」

実際の魔王討伐の時は何度も撤退と再攻撃を繰りかえす。瘴気を一度で削り取るのは難しいのだ。
もっとも通常魔王が発生するのは辺境地域なので、時間をおいても周りに人はいない場所だから、再編成する余裕があった。
しかし今回は帝都のど真ん中だ。こんなところで野放しにしたら帝都民の大虐殺が始まってしまう。

「ということで、死んでも力を絞り出してね、聖女様♪」
「やってやろうじゃないの!!!」

やる気になってくれて幸いである。



「ゴットハルト卿前で!! ボクとゼルで攻撃します!! ヴィアナはとにかく光の力を叩き込んで!!! 回復とか防御に回す余裕はないからね!!! 皇太子はヴィアナを死んでも守ってください!!! 残りは援護!!!!」

それだけの掛け声でゼルとゴットハルト卿は動いた。
1年も共に戦っていた仲間だ。何をすればいいかわかっているのは幸いだった。
また、最低限前衛がそろっているのは幸いだったし、ゴットハルト卿が聖具をフル装備で着ていて助かった。普通の防具じゃ瘴気に焼かれて近くにいるだけで溶けてしまうのだ。
前衛がいれば、魔王をその場にとどめることができる。
ゴットハルト卿が魔王の攻撃を全て盾と鎧で受け止める。回り込んでくる瘴気の塊は、ボクとゼルがもってきた聖剣と宝剣で叩き落していく。
そうやって魔王の攻撃を防いでいる間に大量のホーリーボールが魔王に叩き込まれていく。
魔王の力である瘴気は基本は何をしても減らずにあらゆるものを蝕むが、唯一光の力をぶつけると同量で相殺される。こうやって魔王の力を削り切れば、討伐ができるのだ。

聖具とは光の力が宿っている武器なのだが、宿っている光の力には絶対量があり、補充しないと増えないのだ。
武具自体には光の力を保存しておく性質しかないので、力が切れてしまえばただのぼろ屑にしかならない。
ゴッドハルト卿の聖具の力が尽きる、もしくはゼルの宝剣の力が尽きるまでに、魔王を削り切らないといけないのだが……

「全然減ってる気がしないんですけど!!」

ヴィアナの連打するホーリーボールが魔王をからめとっている。その数は圧倒的で魔王は攻めあぐねているが、動けないだけであり、あまり消耗しているように思えない。
自分が本当の聖女だなんて豪語しただけあって、力の使い方も悪くないし、展開スピードも非常に速い。相手に反撃させないですべてを使い切る方法はちゃんと練習していたようだ。
力もボクの2倍どころじゃなくあるだろう。
ただ、それでも足りなさそうである。なんせ、前の魔王の時に、魔王に攻撃を仕掛け撤退した回数は49回だ。
時間経過で多少瘴気が自然回復するとはいえ、ボクを含めた複数の聖人で総攻撃をして、その回数が必要だったのだ。
さすがにヴィアナもボクの40倍も力はなさそうであり、一回で屠るにはまるで足りないだろうと思えた。
かなり絶望的な状況である。
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