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15 幽霊ちゃんはどら焼きがすき

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俺は甘党の下戸だ。
甘いものなら何でも好きであり、洋菓子でも和菓子でもいける。
うちに同居中の幽霊も、甘いものが好きなので、この点一致してよかった。
甘芋のが苦手だったらどうにかして追い出していただろう。

少し前までは羊羹ばかりだったが、最近はどら焼きにはまっている。
色々なところのどら焼きを買って食べ比べているのだ。
色々、といっても地場の和菓子屋までカバーできず、もっぱらデパートの地下にある和菓子屋さんのどら焼きを食べ比べているだけなのだが。

『おにーさん! ボクはやっぱりこの金色のが好きだよ!!』
「まあ高いからな。白いのじゃダメか?」
『絶対金色のほうが美味しいよ』

こいつが元気よく指さすのは、文明堂の黄金三笠山だ。
さすがカステラ屋だけあって、生地が美味しいのだ。
餡を比べると他の店のどら焼きのほうが美味しいものもあるのだが、餡を挟む生地が絶妙だった。
ただ、この黄金三笠山、すごく高い。ノーマルの白い三笠山の1.5倍ぐらい値段がする。
無駄に舌が肥えてやがる、この幽霊。と思うのだが、味の違いが分かるなら、やはりいいものを食べさせたくなってしまう。
一度しれっとノーマルの方にすり替えて出したのだが、悲しい顔をされてしまったのが忘れられない。
何にもわからないなら安いほう食べさせるのに、見分けるものだからなんだかんだで甘やかしてしまうのだった。

こいつが高級どら焼きを食べる前で、俺は昨日買ってこいつに食べさせたスーパーのどら焼きを頬張る。
1個100円の特大どら焼きだ。
こいつの顔位の大きさがあって、これはこれで好評だった。『どら焼きにおぼれる~』とか楽しそうにどら焼きに顔を埋めていた。
ただやっぱり、おいしいどら焼きのほうがテンションが高いようにみえた。
小躍りするこいつの様子を見ながら特大どら焼きをかじる。
1日置いたどら焼きは、乾燥してちょっとぱさぱさしていた。

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