傷者部

ジャンマル

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大切なもの

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「部活、どう?」
「どうもなにも進んでないみたいですよ。私たちがいないから」
「そう」

 反応は薄い。部活の話になったからだろうか。先程までの感じはなくなり、ひたすらに嫌そうな顔だ。機嫌も悪くなった気もする。

「許してあげなよ、彼のこと」
「別に怒ってない」
「ならなんで?」
「……嫌なだけ。今この時期は」

 そういう時期か。としか言いようのないのでとりあえずこの日は帰ることにした。学校へはもうやることは無いので戻らず、家にそのまま戻ることにする。彼女の家からだと割と近いから移動する分には事欠かない。車も使わなければ電車も使わない。歩きで行ける。それもたまたまだからだけど。

「じゃあまた明日」
「明日は来なくていい」
「なんで?」
「明日は行く」
「わかった。待ってるよ」

 明日は行くという言質だけとって今日の一日は終わった。

 次の日の朝は早かった。というか彼女が何故か家に押しかけてきた。登校は私と一緒に、という事だった。まあしかしさすがに生徒と二人きり、というのはちょっとな……
 動く気配はないから仕方なく一緒に行くしかないみたいだけど本来なら叱ってあげるべきところだ。

「昼、保健室行くね」
「え?体調悪い?」
「特に」
「サボり?」

 反応はなかったがサボる気ではあるんだろう。彼女自身出ない授業は出ないことで教員間でも有名だから特別止めはしないが。あまりそういうことに力を注いで欲しくないというのは本音だ。サボり癖がついたらなんでもサボりやすくなってしまうしね。私自身良くサボりがちだし。

「とりあえず行こっか」
「うん」

 昨日に比べてだいぶ安定しているのか今日の彼女は大人しかった。普段通りと言えばこちらのが普段通りなのだけど彼女なりに色々と考えるものもあったんだろう。
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