傷者部

ジャンマル

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秘密のために

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「楽しかったなぁ」
「だねー」
「……なあ菜緒」
「なぁに?」
「もう辞めないか?」
「それって……どういう?」

 菜緒はずっと俺の傷のためにやりたくも無いことをやり続けている。慰めしか出来ないからとずっとずっとそうだ。小学校の頃菜緒と遊んでいる間に俺の親は交通事故で死んだ。その時から彼は自分が家族替わりになろうなんて考えて女装だって始めた。あいつの全てを奪ってしまったのは自分なんだ。
 最初はずっと慰められ続けていることに何も思わなかったしむしろ背徳感すら覚えていた。だけどそれは終わりを迎えなければ行けない日が近いことも意味していた。

「この関係はもう終わりってことだよ」
「なんで急に……」
「お前、好きなようにしたいんじゃないか?」
「なんでそんな事言うの……っ!」
「菜緒!」

 俺はあの部活に入って楽しそうにしている菜緒を見て今まで感じなかった何かを感じ始めていた。それは自分が菜緒の罪悪感にいいようにし続けていたらきっと彼はそのうちどこかで壊れてしまうんじゃないかっていうのが怖くなった……って言った方がいいかな。俺はやっと前を向けるところまで来ている。なんとなく、なんだけどね。だからこそどこかで菜緒を自由にしてやりたかった。

「北斗?」
「菜緒ちゃんどうしたの」
「ごめん、ちょっとやらかしたみたいだ」
「なんか言ったの?」
「……お前らには言っておいた方がいいか。というか、説明した方がいいな」

 俺は全てを包み隠さず二人に話した。先生は事情は知っているからあえて説明はしないけど俺の過去の傷、トラウマ。そして今の菜緒がああなった経緯まで全てを話した。いや、初めて自分から話すことが出来た。それはとても怖くて今まで踏み出せなかった一歩で、自分の中のなにかが変わり始めているのを確かに感じた。

「それであんな可愛い子に……健気だわ……」
「先輩泣いてます?」
「ええ……ええ!泣いてるわ!だって健気なんだもの!可愛いわ!」
「えぇ……」

 今日の先輩はとにかくテンションがおかしいらしい。それに関しては流石の隈潟も困惑している。まあそりゃそうだろうな。でもこうして菜緒の事をしっかりと見てくれる相手がいる……任せられる相手がいる。それってきっといつかはーー

「北斗くん。何を考えてるの?」
「先生。前に話した事覚えてますか?」
「やりたいことが見つかったらそれをやりたいってこと?」
「はい」

 きっと俺は菜緒を傷つけてしまう。それでもーー過去に縛られ続けて前を向けないようになってしまうなら前を向きたい。それをいつかは分かってくれるはずだから。
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