傷者部

ジャンマル

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自分にもわかること

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「君のこと心配してるのは俺たちみんなそうだからさ」
「それは伝わってくるけど」
「伝わってるなら平気」

 一応彼女なりに俺たちの気持ちも伝わってくるらしい。そして今の自分より酷い経験をした俺たちになにかを覚えたみたいで、その後は特には何も言わなかったけどそれまでの彼女と違って行動が少し慎重になってる気がした。ちゃんと言いたいことは伝わってて、やったかいはあるというものだ。そして彼女は正式に入部届けを出した。ここでなら何とかやれそうそう言ってくれた。そしてなによりーー

「先輩のこと気になりますし?」
「私?」

 どうやら本気にしてしまったらしい……話を聞いてから心の中で扱いが変わったんだろう。めちゃくちゃうざい先輩、ってよりも自分と似た者の先輩って認識になったのかなと思う。まあそっちのけがあるのは知らなかったが……とはいえ平和に解決しようとしていてこの件もひとまず一件落着かな。でも問題は北斗の方、かな。先生が必死に色々と動いてくれているけど、俺たちだけで葬儀っていう形にはなりそうだし。……そもそも遺体を見せてもらってないから、本当に北斗のものだったかは分からない。だけどあんなに大々的にニュースとかやってしまってるし、どちらにせよ引くに引けないと思う。もしあれがなにかの勘違いで生きているなら……

 死者に鞭を打つ気は無い。だけどやはりついつい考えてしまう。もしこんなことにならなかったら、って。あまりそういうことを考えるのは良くないってわかってる。だけど人間一瞬で割り切れるものでは無い。時にはこうして自分の都合のいい解釈をしてあくまでもそういうことなんたと割り切ることも重要……なんだと少し理解出来た。
 割り切り方は多分今回のことだけじゃなく、今後も至る所でそういうことを求められることがあるかもしれないし。
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