傷者部

ジャンマル

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その日

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俺は菜緒と奈央。二人のどちらを選べばいいんだろうか。どちらを選べば幸せになれるんだろうか。いや、選べば、っていうのは二人に対して失礼かな。本質はそこではないと思うし。自分の中に変えようもない気持ちが燻ってしまっている以上、やはり奈央に対しては思うところが。恋人である菜緒には少し申し訳ない気が。そんなふたつの気持ちが俺の中に今同居している。申し訳なさ、そしてそれでも嫌だという気持ち。俺は一体何をどうしたいのか。それすら自分の中で踏ん切りがつかなくなる。確かに奈央に会えば全て変わるんだと思う。だけどそれでいいのかなって。そうやって乗り越えたものって結局自分で乗り越えたことにはならないんじゃないかって。

「思い詰め過ぎないでね」
「わかってる」

 何気ない会話をきっと彼女としていたつもりだった。だけどやはりあの日の後悔を引きずってしまっているが故にどこかぎこちなさがあった。昔は何も考えずにすんでたからこそそのぎこちなさがすごく胸を締付ける。締付けるから自分で何とかしようと必死になってしまう。誰かを頼るって言うことが本当は正しいのかもしれないけど頼るのが怖い。誰かに頼ってしまうと依存してしまいそうな自分が怖い。
 部活のみんなにはお前は強いなとか君みたいに強くなりたいって言われるけど強くなんてない。本当は誰かに認められて、誰かに愛されたくて、誰かに自分の全てを許して欲しいって思ってしまうわがままとずるくて、弱い。だから彼女の口からあの日のことは何も聞けないし、聞こうと思わない。罪なのかもしれない。それ自体が。

「照史は私と離れてから変わっちゃったんだね」
「人間なんとでもなるからね」
「菜緒ちゃん、今度紹介してね」
「えっと.......うん」

 電話越しの彼女の声はどこか悲しみがあった。
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