28 / 30
花園編
next
しおりを挟む
その後、私は無事に伊勢谷さんと、再会した。
「君、ヘレン=プランだよね?」
「は、い……」
足を怪我していて、あまり声が出せなかった。かすれた声で、出来る限りの返事をする。
その懐かしい声は、確かに伊勢谷さんの物だ。
「施設にこないかい? 親がいないこの為の施設を用意してるんだ」
「そ、そこにーー」
「ん?」
「花園、圭は、います、か?」
息が切れる。それ以上に、足に激痛が走っていた。足を見れるだけの気力はない――それ以上に、圭の事が気になった。
「そんな子、いた気もするけどなあ……もう、多くの子がいて忘れてしまったよ」
「ですよね……」
「とにかく、治療しなくちゃ」
「は、い」
そうやって運ばれた。施設に。
――
「みんなー。ご飯だよー!」
「ごめんな、ヘレンちゃん」
「いいんですよ。これくらいっ!」
「あのさ、ヘレンちゃん」
「はい?」
引き止めなきゃ――ここで――引き止めなきゃ――
「僕は、旅に出ようと思うんだ」
「え?」
声が出なかった。行動に移せなかった。
どこかへ行ってしまいそうで、どこかで消えてしまいそうで、胸が苦しくなった。胸が張り裂けそうになった。
「世界にはもっともっと、救いを求めてる子たちがいる。そう思わないかい?」
「そう……ですね……」
声のトーンがさがるのが自分でもわかった。それでも、「いかないで」そんな一言が言えなかった。
「もしかして――ついてきたい、とか?」
「そ、そんなこと! なくは、無いですけど……」
……
「ここは、任されてくれるかい?」
「それはいいですけど……」
行かないで。
「じゃあ、行くよ」
行かないで。
「ま、まって――」
「ん? まだ何か?」
「なんでも……無いです……」
言えなかった。約束が――守れなかった。
「君、ヘレン=プランだよね?」
「は、い……」
足を怪我していて、あまり声が出せなかった。かすれた声で、出来る限りの返事をする。
その懐かしい声は、確かに伊勢谷さんの物だ。
「施設にこないかい? 親がいないこの為の施設を用意してるんだ」
「そ、そこにーー」
「ん?」
「花園、圭は、います、か?」
息が切れる。それ以上に、足に激痛が走っていた。足を見れるだけの気力はない――それ以上に、圭の事が気になった。
「そんな子、いた気もするけどなあ……もう、多くの子がいて忘れてしまったよ」
「ですよね……」
「とにかく、治療しなくちゃ」
「は、い」
そうやって運ばれた。施設に。
――
「みんなー。ご飯だよー!」
「ごめんな、ヘレンちゃん」
「いいんですよ。これくらいっ!」
「あのさ、ヘレンちゃん」
「はい?」
引き止めなきゃ――ここで――引き止めなきゃ――
「僕は、旅に出ようと思うんだ」
「え?」
声が出なかった。行動に移せなかった。
どこかへ行ってしまいそうで、どこかで消えてしまいそうで、胸が苦しくなった。胸が張り裂けそうになった。
「世界にはもっともっと、救いを求めてる子たちがいる。そう思わないかい?」
「そう……ですね……」
声のトーンがさがるのが自分でもわかった。それでも、「いかないで」そんな一言が言えなかった。
「もしかして――ついてきたい、とか?」
「そ、そんなこと! なくは、無いですけど……」
……
「ここは、任されてくれるかい?」
「それはいいですけど……」
行かないで。
「じゃあ、行くよ」
行かないで。
「ま、まって――」
「ん? まだ何か?」
「なんでも……無いです……」
言えなかった。約束が――守れなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる