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第1部 高校編

Project.10 これが私たちの。

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 浅篠さんは歌を最後まで聞いてくれた。その場を動かず最後まで。そして私たちが曲を歌い終えると急に立ち上がりそして宣言した。私たち3人の疲れている様子などまるで見えていないかのように高らかに。

「……なるほど。歌は合格点ね。もちろん歌唱力の話ではないわよ?」
「歌は……ってことは」
「私が歌うことで初めてこの曲は完成する。そうでしょ?」
「はい。この曲は浅篠さんの独奏するソロパートがあって初めて完成します」
「でもあなた達は私がいることを前提にしつつも手を抜かずに歌いきった。というか、だからこそ私がそこに気づいた、って言うべきかしら」

 私たちの評価ではなく歌の評価をし始める。だけどそれはしっかりと私たちのパフォーマンスを見た上での厳しいものだったのも確かだ。参考にできる部分ももちろん多いしだからこそ彼女が本気で見ていてくれたと嬉しい部分もあった。
 そして彼女の方から提案された。私が入ったこの曲をもし大勢の人間が評価できるものであれば私はこのグループに本気で賭けると。

 それはつまり、協力してくれるということであり、入ってくれるということだ。かなり前向きに検討してくれたようで既に彼女がどのタイミングで入ってくるのかとか、ソロパートの直前こうすればもっと映えるとかそんな感じの事を既に話していた。既に会議は始まっていたのだ。

「と……聞いてなかったわね、そう言えば」
「聞いてなかったって?」
「グループ名よ。あなた達の」
「あっ……そういえば……決めてなかったよ!」

 そう聞くと呆れかえりつつ彼女は言ってくれた。目指すべき目標が改めて4人同じになったこと。それを踏まえて彼女が名付けてくれた。


「私たちは……スカイディンギルよ」
「えっ?ディンギルって?」
「シュメール語で神だな…まあその前のスカイはシュメール語じゃないけど」
「あら、あなた詳しいわね」

 そんなこんなで私たち。これからスカイディンギルとして頑張ります。
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