傍観者

ジャンマル

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教弘の場合

マサアキ

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 響子先生に様子を教えてもらうようになってからは毎日マサアキとの会話をするようにした。何気ないことも話したし、つまらないことも話した。最初はマサアキも無視していたけど、段々と俺の話にも乗ってくれるようになって言った。そんなコミュニケーションを取っているうちにマサアキが授業中に居眠りをすることは減っていった。俺も安心して授業をすることが出来たしなにより前に比べてマサアキの様子も前みたいに明るくなっていった気がした。
 そんな時だった。国語の授業開始前。こんな会話を聞いてしまった。
「マサアキ。お前ふざけんなよ」
「え、な、なんのこと」
「はぁ?お前義弘とズブズブじゃんか!どうせ忖度してもらってんだろ!」
「そ、そんな事ないよ」
「うるせぇ!」
 教室はちょっとした騒ぎになった。クラスでもある程度問題児だった木原がマサアキに手を出した。最近俺とよく会話をしていたのを見て、待遇も良くしてもらってるんだろ。という内容だったらしい。俺としてはそんなことは無いし、テストだって平等に点数を付けている。そもそも、点数を盛るのは教員として失格だと思うし。
 だが木原が手を出してからマサアキはまた俺と会話をしなくなった。子供心にこれほど残酷に突き刺さるものは無いんだろう。俺と話してるのをまた木原達に見られたらまた虐められる。だから俺と会話をしない。理由としては確かに納得してしまう。だが、特に他に何ら変わりのない接し方をしてても誰か一人と仲がいい。子供にとってはそれだけで疎外感というものを感じてしまうのかもしれない。
 それは教員と生徒という関係値にとどまらず、きっと交友関係においてもそうなのだろう。

 特に恋愛感情というものは中学生はまだ成熟した考え方を持ち合わせないから、ちょっとした事で嫉妬するしちょっとした事で勘違いする。そしてそれを抑えられない子はその人間に手を出してしまう。ある意味では素直な行動だ。
 そしてたった今、そんな素直な行動に出ているのが木原ということだ。
「今回だけか?木原」
「そうだよ」
「普段は手を出してないか?」
「出してねぇよ」
「なら信じるぞ」
 だが話を聞いている時の木原の顔は何かを勘づいて欲しくない、とまるで訴えかけるような顔をしていた。
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