傍観者

ジャンマル

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教弘の場合

死ぬことはない

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 学校の授業中だった。校内がざわついていた。大変な騒ぎだ。なにがあったかを誰かに聞く前に、すぐにそれがなんの騒ぎたのか理解出来た。教室の窓から見上げられる位置にある我が校の屋上。そこに、マサアキが居た。それも、柵を既に飛び越えている。飛び降りる気なのだ。
「やめなさい!マサアキくん!」
 ほかの教員が慌てるようにマサアキを説得に入る。だがマサアキは何も反応しない。むしろ、自分自身の事をもっと見ろ。そう言わんばかりに次第に彼の足場は無くなっていく。
「やめて!マサアキくん!」
 彼と親しいクラスの委員長である柳さんの仲裁。だがそれでも聞き入れない。彼はもう止めることは出来ないのか。そう思った時、ひとつ思い出した。
「柳さん、体育倉庫の鍵を貰ってくるから先に向かってくれ!」
 体育の時に使う高飛び用のマットだ。あれがあれば怪我はするだろうが死ぬことはなくなるだろう。そう思って咄嗟に思いついたこの案を実行する。
 職員室にかけられていた体育倉庫の鍵を慌てて手に取り、走って向かう。鍵を握りしめる手には力が入っていて、後で気づいたが鍵が深くまでくい込み、血が出ているほどだった。
 だがそんなことも気にならないほどに急いで必死になっていた。

 そんなかいもあり一命はなんとか取り留めたがこの一件はかなり問題になった。それはそうだ。授業中だったのも問題だが、生徒が自殺を校内で謀る。こんなのがメディアにバレたらいくら隠せるほどの力があってもネットかどこかで流出して問題になる。事実、うちの学校の屋上は少し高めに作られていて、学校の外から写真とか撮るのはうってつけのスポットではあった。
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