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新たな出会い

フィフスワールド

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「申し遅れました。私はエルプリテ・フィーシュといいます」
「お嬢さん……か?」

 先程まで気にしなかったが、素性を明かすためか先程より気品のある動きをしている気がした。白いワンピースに綺麗なブロンド色の髪が風になびく。それにここら一帯は自然に呑まれるように綺麗だった。
 空気も澄んでいるし、先程まで気づかなかったが、能力を使えない。

「すみません。貴方の力は酸素がないとダメなんでしたよね」
「え、ええ」

 全てお見通し、ということらしい。能力から何まで、先程の水晶の通りだと。

「あ……そうだ。ドジル帝国って知ってますか……?」
「えーっと。すいません。記憶にないです」
「そうですか」

 ドジル帝国は存在しない世界で、一体何と戦えばいいんだろうか?彼女は世界を救え、と言っていた。

「あの、こちらなんですが」

 写真とはまた違った紙切れを取り出す。俺がそれを手にすると、不思議なことにその紙に一枚の絵が浮かび上がる。俺たちのいる世界に存在しない技術だ。

「エナジーシートというものです。この世界において紙に触れた人間の因縁がそちらに浮かび上がります」
「因縁……?」

 紙には四人のイラストが浮かび上がった。だがこれはーー

「貴方の仲間、ですか?」
「そう、ですね……でもなんで」
「彼らは今、五つに別れたこの国をそれぞれが統治しております。この自然の王国、ピトフィニアだけは未だに手が及んでおりませんが……もう時期この国も危なくなるでしょう」

 訳が分からない。五つの国をあいつらが統治?そんな知識とか持ってないヤツらなのは俺にはよくわかっていた。だからこそ統治、という言葉に違和感を覚えた。

「とにかく、異世界から招かれたあなたがこの世界のことを理解するには現状を知ってもらうほかありません。ひとまずは宿を用意させました。そちらに」
「や、宿?どうして?」
「あなたが来ることはわかっておりましたので」

 ピトフィニア。まだ来たばかりのこの国だが、自然溢れるこの国で占いというものが文化として根付くのは理解は出来る。機械等の技術が一切見受けられない。本当に自然を大切にしているんだろう。
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