ロスト・チューン

ジャンマル

文字の大きさ
上 下
1 / 10
それは過去の淀み

決別するべき過去

しおりを挟む
 魔法少女。それはこの世界におけるさまよい続ける魂をあの世に送るための変換装置を担うこの世界の裏側。だけど私の母はシステムの開発者でありながらそのシステムを復讐のためだけに使おうとした。その計画は魔法少女として正式に選ばれた三人の高校生によって止められたが……
 母とここ数年は離れて暮らしていたが母が研究の最中に不慮の事故で亡くなった事、失踪していたはずの父が突如発見されたこと。そして何より娘である私に魔法少女たちから一通の手紙が届いたことにより私は東京へ向かわざるを得なくなった。

 事後処理とはまた違うが仮にも私はこのシステムの基礎にあたる部分の改良案を提案しシステムを正式に実装させた。そしてそれを知った今魔法少女となっている三人はこのシステムを改良するべくいろいろと研究をしているらしい。私にはその部分に関して聞いてみたいことがあったから直接話してみたい、ということらしいが。正直……母の研究はあまり好きではなかった。その理由の大きな部分の中核に母が研究に没頭するあまり私の面倒をほとんど見なかったことが理由にある。父が失踪して十数年。私は母と二人で暮らしてきたが母が魔法少女の研究を始めるや否や私は一人で家にいることが多くなった。もちろん、中学生や高校生ならば多少は話は違ったかもしれないが、当時の私は年増もいかない幼稚園児。一番母親や父親と居たかった時期に私は父も母もいなかった。そのことがどんなに苦しかったか。寂しかったか。きっと研究一筋だった母にはわかるはずはない。

「事後処理でも大変なのに……まあ、東京にはどっちにしろいかないといけなかったし」

 しょうがなくいくことにしたが正直あまり乗り気ではない。行ってしまえば母の研究を否定できなくなってしまう、そんな気がしたから。
しおりを挟む

処理中です...