ロスト・チューン

ジャンマル

文字の大きさ
上 下
4 / 10
それは過去の淀み

文化圏の違い

しおりを挟む
 東京についてまず最初に驚いたのがその文化の違いだった。同じ国のはずなのに、全く私のいた場所と空気や雰囲気が違う。それはまさしく「地獄」という名にふさわしいくらいに違う。例えばの話なのだが、人間だれしも満足のいく環境下で生活できればダメ人間となる。だが――この東京という場所は違った。あらゆる娯楽などを与えられず極限の状況下で一人一人が協力し合いひしめき合い、今にも死にかけの体で必死に生きながらえる。
 魔法少女の力はそのエネルギー共有量によっても変わってくる。ここ東京の住民はいわゆる家畜同様なのだ、代理戦争において魔法少女さえ生きていれば他はどうなっても知らない。そのスタンスを貫いたのがこの東京なのだ。サバイバル。食べるものに至っても持っている人間が狙われ奪い合い、そして死んでゆく。ハザード状態のこの街で私はいったい……

「こっちです」

 門をくぐりすぐに何者かに手を引っ張られ私はどこかへ連れていかれる。この街で渡しあどうなってしまうのか。当然不安だし怖いし今にも泣きそうだった。だって、母の悪行の事後処理なんてもう飽きていたし、もうやりたくなかったから。普通の女として生きていければ満足だったのに――
しおりを挟む

処理中です...