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第二章 「俺の生活。」

「使用人も所詮は...。」

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 「お前が盗んだんだろ??田舎から出てきて、上手く王子の懐に収まっているようだが、所詮は外の人間。これだけ室内に高い絵画や宝石があれば、盗みたくもなるよな???いい加減、白状したらどうだ??『自分がやりました。』って。」

 俺は、この間からマティ達に受けているいじめに加え、使用人からあらぬ盗みの疑いを掛けられている。

 事の発端は、俺が王子と過ごしている部屋を出て、気晴らしに散歩をしようと思い、城内をぶらついていた時だった。

 俺は、まだまだ知らない場所が多く、庭に出ようと一階に続く階段を探していたとき、すぐ近くの部屋から叫び声が聞こえ、何事か思い俺は早歩きで、声のした部屋に向かったんだ。

 そしたら....部屋の掃除をしようと、部屋に踏み入ったのだろう使用人が、掃除用具を持ち、目を丸くして室内のある一点を見つめている様子が伺えた。

 使用人の視線の先には、それはそれは見るに堪えないほど荒らされた、室内の光景が広がっていた。

 そうして、俺が来てから数分としないうちに、他の使用人達も次々に部屋の中へと集まってきた。

 部屋に入ってきた使用人の中で、俺の事が気に入らないリル側近の使用人は、部屋の状況を見た後、次いで俺の姿を目に捕らえると、にたぁった気味の悪い笑みを浮かべて、周りに居た使用人達に持ち場に戻るように声をかけると、わざとらしく俺の名前を大きな声で呼び

 「あなた達は、とりあえず持ち場に戻りなさい。....それから、リオン様???少しお話を伺いたいのですが、お時間よろしいですか???」

 と言って、俺の腕をちゃっかり掴むと、そのまま応接室らしきところに連れて行かれた。

 部屋に入ると使用人は、俺をソファに促し、俺がソファに腰をかけると同時に、こんなことを言ってきたのだ。

 「リオン様???なぜ、お部屋にいるはずのあなたが、あんなところにいたのですか???しかも、あの部屋は王女様が大切にされている数々のそれはそれは貴重な調度品が、飾られている場所なのにもかかわらず....。」

 俺は、あからさまな疑いの目に、ついイラッとしてしまい、仏頂面で使用人を見据えると

 「...何が言いたいのでしょうか???私はただ、城内の散歩を楽しんでいただけですよ???....もし、私を疑っておられるのでしたら、是非あの部屋にいた使用人の方に、お話を伺って頂けませんか???私には、しっかりとしたアリバイがありますから。」

 俺のこの言いように、使用人は苦い表情をして俺を睨みつけると

 「...でも、アリバイと言っても、あなたがその使用人を脅して、本当の事を言えないようにしている可能性だって、大いにあり得るんですよ???...そんなの、なんの証明...証拠にもなりません。」

 なんて生意気な事を言ってくるから、流石の俺も、もう相手にするだけ無駄だと思い、軽く頭を下げると

 「...っ、分かりました。もう良いです。あなたは、何が何でも私を犯人に仕立てあげたいようですし、もう結構です。所詮...私は、よそ者ですし、疑われることも、致し方がないですしね。それに、1ヶ月もすれば、私はこの国を去り、田舎に残してきた母親の元に帰りますので、どうぞご心配なさらず。それに...王子と私がそういう関係になることは、まず有り得ませんから。それでは、私はこれから所用がございますので、失礼致します。」

 俺は、まだ文句を口にしている使用人をほったらかして、自室へと足早に戻ったのだった。

 そう....この国に来てから...王子と生活するようになってからというもの、毎日のように嫌がらせは続いている。

 ほんとに...この城内の人達は、暇人だと思うよ...。

 マティ達のいじめに加え、俺の事を良く思わない使用人達にまで、こうした盗みの疑いを、何かに付けてかけられるようになっていた。

 俺は自室に戻ると、ため息をひとつつき、窓から見える小さな庭を見つめながら、こう独り言を零していたのだった。

 「はぁ....あと1ヶ月もすれば、大金と自由が手に入る。こんな窮屈(きゅうくつ)な生活....それまでの我慢だ...。でも、さすがに...この腕の痣(あざ)は隠さないとな...。はぁ、あとでナノと会う約束をしているし、服のことも聞いてみなくちゃな....。」
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