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第3章 エルフとの会談
始まる会談
しおりを挟む「では、我々エルフと――」
「私たち人との」
「「会談を」」
ファムソーとサーニャの宣言により、会談が始められらた。
場所は神樹に1番近い、大広間。
普段はエルフの族長会議等で使われている、外交にもおあつらい向きの場所というわけだ。
円卓に向かい合わせに座るサーニャとファムソー。
サーニャの後ろにはコータとルーストが控えている。対して、ファムソーの後ろにはネーロスタと男性エルフが控えていた。
「まず先月、人の国にて起こった問題について、です」
「その件はこちらも把握しておりませんでした。見た目、名前を受け調査した所、ハイエルフ族の者だと言うことが分かりました」
「ハイエルフ族、というのはエルフの祖先となったものだと聞き及んでいるのですが」
サーニャはファムソーに訊く。ファムソーは小さく頷き、口を開く。
「その通りです。過去の大戦のことについては言うまでもなく、ご存知だと思いますが、そこで活躍したのがハイエルフ族です」
「文献にはエルフとしか書かれていなかったので、それについては初めて知りました」
「知らなくても当然だと思いますよ。話を戻しますと、大戦中ハイエルフはかなりの力を保持しており魔族とも対等に戦えたほどらしいのです」
「そうらしいですね」
「ですので、他種と馴れ合うことを嫌っています」
「私たちとの会談ですら気に食わない、ということですか?」
サーニャが厳しい目を向けた。ファムソーは少し俯き加減で頷く。
「ですが、しっかりと話はつけております」
ファムソーは顔を上げてそう言った。瞬間、ネーロスタが少し動いた。2人の会話しか無い空間で、その音はやけに大きく皆の耳に入った。
視線が集まるネーロスタ。その顔は、申し訳ない、というもので溢れているわけではなかった。
何か言いたそうな、驚きを感じたような、そんな表情だった。
「別段、和平条約が結ばれているわけではない。だが、不法に入国し犯罪行為を犯した。これを見過ごすわけにはいかない」
サーニャは依然として厳しい目のまま、ファムソーを睨めつける。
「分かっております。それについては謝罪と補償金をお支払いさせていただくつもりです」
「補償金より、私たちとしてはエルフ種との和平条約の締結と貿易関係を結びたいと考えている」
「和平条約は分かります。ですが、貿易関係ですか?」
「えぇ。昨日、歓迎の儀式をして頂き、そこで出された料理や並べられていた特産品を拝見して思いました。私たち人の国では食べたことの無い物などの輸入をしたいのです」
「分かりました。それならば我々は人手を要求します」
「人手?」
ファムソーの言葉に、サーニャはこれまでで1番鋭い目を向けた。
「そう怖い目をしないでくださいよ」
「人手、というのは奴隷をくれ、と言っているようなものだが?」
「それは違います。我々は魔法に長けている分、それに頼った文化となっています。ですが、それだけは同じような方向でしか発展せず、限界が見えつつあります」
「では、文化発展のために人を貸してほしい、ということですか?」
「その通りです。ですので、しっかりとした体制を整えて迎え入れたいと考えております」
「分かりました。それではゴード王にそのように伝えます」
サーニャの言葉を聞いたファムソーは、椅子から立ち上がった。
よろしくお願いします、とでも言うのだろうか。だが、ファムソーが言葉を発するよりも前にコータは違和感を感じた。
しかし、それを言葉にする前に違う音が洩れた。
「うぅ」
苦悶に満ちた声音が、サーニャの目の前で零れた。一瞬で起こったそれに、サーニャは対応するどころか金縛りにあったかの如く動けなくなってしまった。
「サーニャ様!」
そんなサーニャのもとへ、コータは急いで駆け寄る。そして、彼女の背に手を回しその場で体をかがめさせる。
「こっちに来てください」
サーニャは四つん這いでルーストの元へと移動させる。その間も、サーニャの後ろで強い警戒を放つ。
「お願いします」
「分かりました」
ルーストにそう告げ、コータは仰向けに倒れたファムソーに駆け寄る。その心臓部には矢が刺さっている。
周囲に目を向けるが、誰かが居そうな気配は無い。
「お父さん!!」
「ネーロスタさん。落ち着いて」
倒れ、口端から血をこぼしているファムソーの横で。泣き崩れているネーロスタに、声をかける。だが、ネーロスタにその声は届いていない。
父親の心臓部に突き刺さった矢を虚ろに見て、涙を零して叫んでいる。
「ネーロスタさん!」
コータが呼びかける。しかし、やはり何も変化は起きない。困ったコータは、ネーロスタの肩に手をかけ後ろへと倒す。
そして、ファムソーに近寄る。
「何をする!」
背後で泣き叫ぶネーロスタに代わり、同席していた男性の護衛者がコータに、短剣を向けた。
「息の確認もしてないやつが偉そうにするな」
コータはその男性に強い視線をくれてから、ファムソーの口元に耳を近づけた。だが、そこから息の根は聞こえてこない。
「まずい」
手元には月の宝刀しかない。冒険者バッグは使わないと、判断して部屋に置いてきたままだった。
「ポーションですか?」
そんなコータに闇の歪んだ空間を作り出したルーストが訊いた。
「はい」
「これを」
コータがそう答えると、ルーストは空間魔法でポーションを取り出してコータに投げた。それを受け取ったコータは、コルクの蓋をあけてファムソーの口に流し込む。
――鑑定
コータは心の中で言う。すると、視界に文字が浮かび上がる。
【ファムソー Lv15 状態:死】
表示された文字は、これ以上どうすることも出来ない状態であることを示すものだった。
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