異世界冒険記 勇者になんてなりたくなかった

リョウ

文字の大きさ
76 / 78
第4章 エルフ領の改革

復活のコータと懐かしの顔

しおりを挟む

 包帯ぐるぐる状態のコータを見下ろすようにして立つのは、艶のある銀色の髪を腰のあたりまで伸ばした美女。
 白く胸元が大きく開けた服を着ている。その胸元から覗くのはたわわに育った胸。
 呼吸に合わせてその大きな胸が上下に揺れる。

「ホール宿舎の受付嬢、だよな?」
「えぇ。それで、私の名前は覚えていらっしゃいますか? 自己紹介はさせてもらいましたよ?」
「え、えっと……」

 自己紹介してもらった場面は覚えている。まだコータがこちらの世界に来てまもなくの頃だ。ソソケットの領主が亜人種の奴隷を連れているシーンを目撃し、攻撃を受けた後だ。
 ホール宿舎に運び込まれ、治療された時。その時に名前を聞いた覚えがあった。だが、コータは覚えてはいなかった。
 どうにか思い出そうとしている時、わざとらしく胸をたゆん、と揺らして口を開く。

「フェリネーヌ。フェリとお呼びくださいと言ったはずです」

 笑顔を崩すことなく、フェリはコータを見つめた。そして、そのままコータに歩み寄る。

「コータさんも悪い人ですよ。第2王女様とお知り合いなら、そう仰って下さればいいのに」

 軽く首を振りながら、短く息を吐くフェリ。

「言う必要とかないでしょ」
「知っていれば、もっとすごいサービスもさせて頂いたのに」

 言葉と同時に体をかがめて、その身に宿した大きな胸をアピールする。その状態のまま、フェリは谷間に手を入れて1本の小瓶を取り出す。

「金もない俺にサービスなんてしないだろ」
「そんなことないですよ。王女様と知り合い、それだけでサービスするに足りますよ」

 中指と小指の間に小瓶を持ったまま、スカートを捲り上げるフェリ。そうなれば、自然とスカートの中に隠された純白のパンツがコータの視界に収まってしまう。
 その格好のまま、動けないコータの股にまたがる。

「コータさんも気持ちよくなりたいでしょ?」

 フェリは目をトロンとさせ、口端からよだれをこぼし、淫乱そのものの様子でコータとの顔の距離を詰める。
 
「そ、そんなのいらねぇ」

 ――俺には心に決めた人がいるんだ。だから、幾らボディが魅力的とは言えど流れに流されるわけにはいかないんだ。

 そう思うコータを余所に、フェリは綺麗な細い指でコータのコータを撫でる。

「そうは言っても体は素直よ?」

 今にもこぼれ出しそうなフェリのたわわの実。それから薄い布越しに感じるフェリの生暖かい感覚。
 その体勢でコータのコータが反応しなければ、それはもう男では無いだろう。

「ちがっ!」
「違わないわよ」

 焦るコータに、悦ぶフェリ。互いの息遣いが分かるほどまでに距離が近づき、フェリの唇がコータの唇に触れそうになった。その時だ。

「何してるんですか!!」

 甲高い声が部屋に響いた。

「あらっ、ナナさん。いい所だったのに」
「いい所、とかじゃないですよ! 私たちはコータさんの怪我を治すためにこちらに来たんですから!」

 声を荒らげるのは紫紺の艶のある綺麗な髪を持つ女性。

「な、ナナさん.......?」

 名前とその髪色。コータは見覚えがあり、思わずその名前を呼ぶ。

「お久しぶりですね、コータさん。お元気でしたか?」
「体はこの状態だけど」
「あ、そうですね」

 苦笑を浮かべながら、俺の股に跨るフェリの首根っこを掴み、後方へと投げる。

「もぅ」
「もぅ、じゃないですよ」

 髪と同色の美しく妖艶な瞳で、床に転げたフェリを睨みつける。それに対しても反省の色を見せないフェリにため息をつく。

「お金が無いと仕事すらしないくせに」
「お金と特殊なコネ。これが私の好きなものよ」

 床から起き上がりながら、フェリはそう言いながらコータを見る。

「ほんと、現金な受付嬢だわ」


 筋の通った鼻に大量の空気を取り込み、口から吐き出すと、起き上がったばかりのフェリから小瓶を取り上げる。

「コータさん、魔族と戦ったと聞いたのですけど、本当ですか?」
「まぁ、戦いましたね」

 アバイゾとの激戦を思い返しながら、答えると目を見開きナナは驚きを表すにする。

「魔族と戦って生きてるなんて.......。凄すぎます」
「まぁ、ここで戦ったのは実際二回目ですし」
「二回目!?」

 先程よりも大きな声を上げるナナは驚きすぎから短く息を吐いた。

「ほんの数ヶ月前までギルドの新人で、薬草集めのクエストを受けようとしてた人だなんて。もう到底思えないわ」

 過去を懐かしむように、遠くを見ながら呟くナナ。
 餅のようなハリのある頬に、顔の凹凸もしっかりしており、いつ何処で見ても美人と言えるだろう。
 小瓶の栓をポンっと開け、コータへと差し出す。

「はい、高級ポーションよ。これで体を治して」

 ふくっらとした唇を動かし、凛とし声で紡ぐ。コータはそれを聞き届けてから、高級ポーションの入った小瓶を受け取り、一気に飲み干した。

 瞬間、体内から漲る何かが溢れ出すようなそんな感覚に陥る。同時に全身は仄かな光に包まれ、少しの浮遊感を覚えた。

「どう? コータ」

 ここまでの一連のやり取りを終始黙って見ていたピクシャがようやく口を開く。
 その声には心配や、不安といったものが色濃くにじんでいる。

「今までの痛みが嘘のようだ」
「ほんとに!?」
「あぁ。まじでポーションってすごいよ」

 空になった小瓶を見つめ、改めてその凄さを実感していると佇まいを正したフェリが声を発した。

「高級ポーションは安くても金額2枚はするもの」
「フェリさんはいつでも変わらないな」
「愛する物はいつでも同じですから」

 金とコネを愛するって、どんな環境で育ってきたんだよ。
 コータは胸中でそう吐きながら、体の包帯に巻きついた包帯を外していく。

「ナナさん」
「何ですか?」

 フェリとまともな話をすれば、疲れるようなそんな気がして。コータはナナに声をかける。

「アースレーンに来た人の中で、俺が知ってるのはフェリさんとナナさんくらいですか?」
「んー、そうだねー。確実に知ってるのは、冒険者のセチアさんにアーロさん、それからルアさんね。あとは鍛治職人や商人たちが来てるけど、知ってそうな人はいる?」
 
 ナナの口から飛び出した3人の冒険者の名前に、コータは思わず声を上げた。

「あの3人が来てるんですか!?」

 自分でも驚く程の大きな声に、ナナも少し気押された様子だ。

「えぇ。来てるわよ」
「そうですか。懐かしいな。あの3人がいなければ俺、冒険者ギルドに入ってすらなかったと思う」
「そうね。彼女たちのおかげで、私もコータさんと知り合えたわ」

 冒険者ギルドの登録した日を懐かしみ、ナナと話し込んでいるとフェリが大きな咳払いをする。

「冒険者の話もいいですけど、もっと感謝しないといけない人がいるんじゃないのかしら?」

 フェリのどこか冷たい言葉を浴びて、コータは思考を戻す。
 ナナの告げたアースレーンに来ている人。バッチリと名前が出たセチアとアーロとルアの印象が強く、その後に言われたことがすっかりと飛んでいる。

「3人の他にはどんな人がいるんでしたっけ?」

 眉間に皺を寄せ、ナナの台詞を思い返しながら再度ナナに質問する。ナナは嫌な顔1つせずに、小さく首を縦に振ってから口を開く。

「鍛治職人や商人たちですよ」
「商人……?」
「えぇ」

 商人、というワードが引っかかりオウム返しをするコータ。それに対し、ナナは不思議そうに小首を傾げて返事をする。

 ――商人……と言えば商会だよな。まさか!?

 ソソケットでの生活を思い返した瞬間、不意に脳裏を過ぎった1人の顔。
 黄土色のゆるふわウェーブのかかった髪に、それと同色の優しみのある眼。どのパーツを取っても整っており、コータを窮地から救ってくれたたった1人の彼。

「来てるのか? ライオット商会のライオさんが」

 コータがこちらの世界に来て犬死しなかったのも。セチアさんたちと知り合えたのも。ソソケット森林に行くことになったのも。鑑定スキルが身についたのも。サーニャと知り合うことになったのも。
 全部、全部、ライオのおかげなんだ。
 まともにお礼をすることもなく、コータはソソケットを離れていた。そんな彼とこんな所で再会出来ると思っておらず、期待を胸に寄せる。
 そんなコータに、フェリは静かに言った。

「来ているわよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...