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馬車に乗り込み、ノア様がお父様と話したことを教えてくれた。
アルメリア国の王族の婚約については、そもそもお父様からの許可は必要ないらしく、当人同士の合意、国王陛下の合意があれば成立するらしい。ただし、爵位持ちであることが必須。
彼の考えとしてはアルメリア国の貴族の養子にしたいらしい。伯爵家とは確実に縁を切った状態にしたいので、除籍の証明書を書かせたのだという。
今の時点で既に籍は抜かれているが、妹の行動がよろしくない。なので、追加で今後一切わたしに関わるなという念書をお父様と妹に書かせたのだという。
これですっぱりフォンティーヌ伯爵家とは縁が切れるというわけだ。
その際、なぜか妹が擦り寄ってきたが興味がないので無視をしたのだという。妹の好みはイケメンらしい。
とりあえずわたしの生家でやることは終わったらしいので彼の屋敷へと戻る。今日は休めと言われ、ベッドに入った。
数日後、ノア様に連れられ王宮へ向かった。どうやらわたしを養子に迎えてくれる人との面会の日なのだそうだ。誰とは聞かされておらずドキドキしてしまう。
ある一室に通され、挨拶をすると聞き慣れた声が聞こえてきた。
「そんなかしこまらなくても大丈夫ですよ、セレーヌ様。楽にしてください」
顔を上げるとそこにはルカ様の姿があった。驚きに思わず目を見開いてしまう。
「言ってなかったか。ルカはオルベル侯爵家の次男だよ。君を養子に迎えてくれるのはオルベル家だ」
会いた口が塞がらない。その後ルカ様は説明してくれた。
オルベル家は侯爵家だそうだ。両親と後継の兄、ルカ様の四人家族で女の子はいないそうだ。皆喜んでいて暖かく迎えてくれた。
なぜルカ様が侍従のようなことをしているのか疑問に思ったけれど、年代が近いということで幼い頃から交流があってそのまま側近となったそう。
普段は補佐の仕事をしていて、屋敷では侍従として働いているそうだ。
「事情は聞いたわ。困ったことがあったらなんでも言ってちょうだい」
優しい雰囲気のお義母様で安心する。そこからはしばらく談笑していた。
その間、ノア様は書類を持って国王陛下に会いに行ったみたい。何から何まで頼りっぱなしで頭が上がらなくなってしまった。
「ひとまずは大丈夫だとは思うが、君の妹には注意した方がいい。あれは目的のためなら何も躊躇わないものの目だ」
わたしもそう思っていた。山の家にいることを突き止めたり、この屋敷だってそう。
まだ国王陛下にご子息がいないことも相俟って彼は未だ王位継承権を持っている。本来ならば王宮で生活するところを本人の希望でこの屋敷に住んでいるのだ。
そこのセキュリティーを突破して突き止めたのだから行動力が半端ない。というか妹の使っている人が優秀すぎる。
改めて気持ちを引き締めながら生活することになった。
今日はクレバーと一緒に庭でボールを投げて遊んだり、一緒に走ったりと運動していた。体型はちっとも変わっていないけど、体力はついたと思う。というより普通の貴族令嬢と比べたらありすぎるくらいだけど。
王弟殿下の婚約者ともなればお淑やかに社交に勤しむのだろうが、彼が自由にしていいと言ってくれるのでお言葉に甘えていた。
「またここにいたのか」
振り返ると彼がボールを持って立っている。そのボールを遠くに投げ、クレバーは取りに向かった。
「はい。体を動かすとスッキリするので。それより、わたしは王弟殿下の婚約者になったんですよね?社交とかしなくて大丈夫なんですか?」
そう、本当に必要な時しか王宮に出向くことはなく、お茶会も参加したことがない。それでいいのだろうかと思っていたところだった。
「いや、大丈夫だが、お茶会したいのか?」
したいというわけではない。した方がいいのならするけど、どうも貴族の社交というのは前世の知識ではきれいな言葉で嫌味を言い合ったりばちばちしたりというイメージしかなく面倒そうなのだ。
「いいえ。ただ気になったので……」
「……ちょうどいい、明日一緒に王宮へ行こうか」
何がちょうどいいのかわからないが、明日は王宮の日らしい。またあの重たいドレスを着ないといけないのかと思い少し肩を落としてしまった。
王宮の庭奥にあるガセボに案内され、向かうとプラチナブロンドの髪を靡かせたお人形のような女性が座っていた。一緒に着いてきてくれたノア様がわたしを紹介してくれる。
「あなたが噂のセリーヌ様ね、わたくしサラ・アルメリアと申します」
王妃殿下だと耳打ちされ慌ててお辞儀をする。
「あら、ここは私的なお茶会ですもの。そんなにかしこまらないで。わたくしのことはサラと呼んでくださいな」
とてもフレンドリーだ。やはりあの国王陛下にしてこの王妃ありである。柔らかな雰囲気の優しそうな人。
「そうそう、口調も普段どおりでいいのよ。わたくしの義妹になるんですもの」
その言葉にしばし固まっているうちに彼はお仕事で呼ばれて行ってしまった。
ここには給仕の使用人と遠巻きに騎士たちが立っているが、わたしは王妃様と二人きりにされてしまった。
「ねぇ、あなたはノアとどこで出会ったの?」
その質問にわたしは正直に今までの経緯を話した。王妃様は時折相槌を打ったり顔を顰めたりとさまざまな反応をしていた。
アルメリア国の王族の婚約については、そもそもお父様からの許可は必要ないらしく、当人同士の合意、国王陛下の合意があれば成立するらしい。ただし、爵位持ちであることが必須。
彼の考えとしてはアルメリア国の貴族の養子にしたいらしい。伯爵家とは確実に縁を切った状態にしたいので、除籍の証明書を書かせたのだという。
今の時点で既に籍は抜かれているが、妹の行動がよろしくない。なので、追加で今後一切わたしに関わるなという念書をお父様と妹に書かせたのだという。
これですっぱりフォンティーヌ伯爵家とは縁が切れるというわけだ。
その際、なぜか妹が擦り寄ってきたが興味がないので無視をしたのだという。妹の好みはイケメンらしい。
とりあえずわたしの生家でやることは終わったらしいので彼の屋敷へと戻る。今日は休めと言われ、ベッドに入った。
数日後、ノア様に連れられ王宮へ向かった。どうやらわたしを養子に迎えてくれる人との面会の日なのだそうだ。誰とは聞かされておらずドキドキしてしまう。
ある一室に通され、挨拶をすると聞き慣れた声が聞こえてきた。
「そんなかしこまらなくても大丈夫ですよ、セレーヌ様。楽にしてください」
顔を上げるとそこにはルカ様の姿があった。驚きに思わず目を見開いてしまう。
「言ってなかったか。ルカはオルベル侯爵家の次男だよ。君を養子に迎えてくれるのはオルベル家だ」
会いた口が塞がらない。その後ルカ様は説明してくれた。
オルベル家は侯爵家だそうだ。両親と後継の兄、ルカ様の四人家族で女の子はいないそうだ。皆喜んでいて暖かく迎えてくれた。
なぜルカ様が侍従のようなことをしているのか疑問に思ったけれど、年代が近いということで幼い頃から交流があってそのまま側近となったそう。
普段は補佐の仕事をしていて、屋敷では侍従として働いているそうだ。
「事情は聞いたわ。困ったことがあったらなんでも言ってちょうだい」
優しい雰囲気のお義母様で安心する。そこからはしばらく談笑していた。
その間、ノア様は書類を持って国王陛下に会いに行ったみたい。何から何まで頼りっぱなしで頭が上がらなくなってしまった。
「ひとまずは大丈夫だとは思うが、君の妹には注意した方がいい。あれは目的のためなら何も躊躇わないものの目だ」
わたしもそう思っていた。山の家にいることを突き止めたり、この屋敷だってそう。
まだ国王陛下にご子息がいないことも相俟って彼は未だ王位継承権を持っている。本来ならば王宮で生活するところを本人の希望でこの屋敷に住んでいるのだ。
そこのセキュリティーを突破して突き止めたのだから行動力が半端ない。というか妹の使っている人が優秀すぎる。
改めて気持ちを引き締めながら生活することになった。
今日はクレバーと一緒に庭でボールを投げて遊んだり、一緒に走ったりと運動していた。体型はちっとも変わっていないけど、体力はついたと思う。というより普通の貴族令嬢と比べたらありすぎるくらいだけど。
王弟殿下の婚約者ともなればお淑やかに社交に勤しむのだろうが、彼が自由にしていいと言ってくれるのでお言葉に甘えていた。
「またここにいたのか」
振り返ると彼がボールを持って立っている。そのボールを遠くに投げ、クレバーは取りに向かった。
「はい。体を動かすとスッキリするので。それより、わたしは王弟殿下の婚約者になったんですよね?社交とかしなくて大丈夫なんですか?」
そう、本当に必要な時しか王宮に出向くことはなく、お茶会も参加したことがない。それでいいのだろうかと思っていたところだった。
「いや、大丈夫だが、お茶会したいのか?」
したいというわけではない。した方がいいのならするけど、どうも貴族の社交というのは前世の知識ではきれいな言葉で嫌味を言い合ったりばちばちしたりというイメージしかなく面倒そうなのだ。
「いいえ。ただ気になったので……」
「……ちょうどいい、明日一緒に王宮へ行こうか」
何がちょうどいいのかわからないが、明日は王宮の日らしい。またあの重たいドレスを着ないといけないのかと思い少し肩を落としてしまった。
王宮の庭奥にあるガセボに案内され、向かうとプラチナブロンドの髪を靡かせたお人形のような女性が座っていた。一緒に着いてきてくれたノア様がわたしを紹介してくれる。
「あなたが噂のセリーヌ様ね、わたくしサラ・アルメリアと申します」
王妃殿下だと耳打ちされ慌ててお辞儀をする。
「あら、ここは私的なお茶会ですもの。そんなにかしこまらないで。わたくしのことはサラと呼んでくださいな」
とてもフレンドリーだ。やはりあの国王陛下にしてこの王妃ありである。柔らかな雰囲気の優しそうな人。
「そうそう、口調も普段どおりでいいのよ。わたくしの義妹になるんですもの」
その言葉にしばし固まっているうちに彼はお仕事で呼ばれて行ってしまった。
ここには給仕の使用人と遠巻きに騎士たちが立っているが、わたしは王妃様と二人きりにされてしまった。
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