婚約破棄、喜んでお受けします。わたくしは隣国で幸せになりますので

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「だいぶ疲れているね。大丈夫？」
「ええ……流石に二日分の仕事を片付けるのは骨が折れたわ」
　今日はアーティと二人で観劇を見に行く約束をしているのだ。本来ならばあまりよろしくはないけれど、もう王宮内の現状もわかっているし、今更でしょう。
　別に護衛の方もいるしね。問題ないでしょう。
　それに言いたいことがたくさんあるのよね。まあ細かくはいえないけれど、誰かさんのせいで仕事が増えたくらい言っても許されるわよね。
「そう。どうにかしてあげようか？」
「大丈夫よ。後少ししたら解放されると思うの」
　本当に優しいわね。というかなぜ七三なのかしら……
「ねぇ、なんで髪を分けているの？」
「え？　アリアを驚かせようと思っただけ」
　そう、それだけなのね。特に深い意味はなかったということかしら？　そんなことのために変装していたの？
「それより、行こう」
　彼が用意してくれた馬車で王都へ向かう。
　今日の演目は恋愛ものみたい。女性が多い気がするわ。それに恋人同士も。たくさんの人が楽しみにしているのね。楽しまなくちゃ。
　どうやらとてもいい席を用意してくれたみたい。というか王族が使用するような豪奢な席。こんなところを用意できるなんて、アーティって一体何者なのかしら……
　二人並んで観劇を楽しむ。王道の恋愛もので、一人の女性を取り合う感じのもの。こういう王道ストーリー大好きなのよね。
　思わずじっと見入ってしまって心が震えたわ。さすが王都一の劇団ね。すっと世界に入り込んでしまって、まるで自分が体験しているみたいて楽しめるわ。
　今度から観劇も休みの日に行こうかしら。

「とってもよかったわ。また来たいくらい」
「楽しんでもらえてよかったよ」
　二人笑い合って歩いていると目の前には彼らの姿があった。思わず盛大なため息をつく。
　よくよくみてみるとまた新しいドレスを身に纏っているわ。それにあのネックレスもね。王子の婚約者の予算は既に空、王子に割り当てられた予算ももう空だということはわかっている。
　それに観劇をみるにも今日の演目は人気の劇団だし結構値が張ると思うのよね。一体どこからお金を出しているのかしら……
　もしかして別の財源から引っ張っている？
　そうだとしたらきっと王妃様では話にならないわね。王太子殿下あたりに協力を仰がないとダメかしら……
　いずれにしても面倒なことになったわね。どうやってコネクトをとろうかしら。あまり接点もないのよね。

「イアン様ぁ、とっても楽しかったですわぁ。またきたいですぅ」
「楽しんでもらえてよかったよ。やっとそとで遊べるようになったからね。まあ、欲しいものがあったらいつでも言ってくれ」

　またなんかやっているわ。もう他人のふりをしたいわね……
　何が楽しいのかしら。ライラはただただいろいろ貢いでくれる人が好きなのよね。どうみてもイアン殿下を通り越して後ろのお金に目が眩んでいるのが一目瞭然だわ。

「さあ、行きましょうか」
「……大変だな君も」
「わかっていただける方がいるだけでありがたいですわ……」
　こうしてわたくしたちはおバカ二人に見つからないよう、劇場を後にするのであった。たくさんの噂話を耳にしてしまって疲れてしまったわ……



　ふらふらと街を歩いていると偶然オリーブとブライアンに会ってしまった。しまったというのはちょっと語弊があるわね。二人は最近幸せオーラ全開なのであまり邪魔したくなかったのよね。
「あ、アリアだー！　あれ、隣の人は……まさかアーティ？」
「本当だ。アーティか！　久しぶり」
　二人はどうやらアーティのことを覚えていたみたい。アーティも二人と再会できてうれしそう。
「どうせなら一緒にご飯食べる？」
「さんせーい」
　こうしてわたくしたちはお店に入り食事がてらお話しすることになった。
　とても話は盛り上がっていて、みんな笑顔。久しぶりにわいわい楽しく過ごすことができたわ。アーティは誰とでも上手にお話しできるのもあって、違和感なくわたくしたちと溶け込んでいたのだけれど、ずっとブライアンを見ているのよね。
　見られているブライアンも変な顔をしていたわ。一体どうしたのかしら……
　帰り際、先に行くように言われたわたくしとオリーブは首を傾げながらも店を出た通りでお話ししながら待っている。その間、アーティとブライアンは二人で立ち話していたみたい。
　あ、そういえばブライアンに聞きたいことがあったのだけれど……
　後でいいかしらね。何やら込み入った話をしていたみたいで、話終わって戻って着た頃にはブライアンはぐったりしていたのよね。
　ちょっとかわいそうだから明日にでもお願いしようかしらね。
　こうして色々ありながらも楽しい休日を過ごすことができたわ。