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執務室へ向かうと、そこらじゅうの騎士の方からお礼を言われる。あれ、どうかしたのかしら? そう思いながら執務室に入ると、そこにはザルドさんがいた。
「先日は、ありがとうございましたっ! さっそく服に縫い付けてからは快適でありますっ」
ああ、さっきの騎士たちもこれのお礼だったのかしら。わたくしはただ解決策を提示してオリーブと繋いだだけなのだけれど……
でも、喜んでもらえてよかったわ。お金はかかったでしょうけど、予算もまだあるって言っていたものね。お役に立てて何よりよ。
「いえ、わたくしはできることをしただけですので。また何か困ったことがあればおっしゃって? それとできればもう少し詳しく書いていただけるとすぐに通りやすくなると思うわ」
「はっ。ありがとうございます! では失礼します!」
なんだかとても元気になったわね。元々結構元気な方だとは思っていたけれど。
「さて、今日もよろしくお願いします」
秘書官二人が微笑んでくれる。最近ではお菓子の差し入れが多くて、みんなで食べながらノンビリと仕事をしているの。たまにいろいろな方が遊びにきてくれて一緒にお話しするのよね。そこにはなぜか他国からの貴賓までくることがあってたまに困惑するのだけれど……
王妃様も気を遣ってかたくさん差し入れをしてくれて、ソファやローテーブルを持ち込んでくださっているの。なんだかわたくしの仕事外のことが多いのだけれど、どうしてかしらね?
それから……
「アーティ、また来たの?」
最初のうちは驚いていた秘書官たちももう慣れたみたいで気にせず仕事をしている。わたくしも静かにお仕事したいのに……
「来ちゃいけない?」
「いえ、別にいいのだけれど……」
「でしょう? それより、アリア。もしどこか遠くへ行くとしたら、どこ行きたい?」
「いきなりね。そうね夜景が綺麗なところかしら? 海もいいわねぇ」
「なるほど」
「あとは屋台とかお祭りとか? あまり行ったことないのよね。この国あまりお祭りもないみたいだし」
そうなのよね。わたくし地味に行ったことがないのよねぇ。前世では屋台の焼きそばとかポテトとか好きだったなぁ。なんだか美味しそうに感じるのよねあれって。雰囲気とかかしら。
海なんて音を聞いているだけで癒されるもの。ザザーって音、なんでか癒されるのよね。
そんな会話をしているわたくしたちを生暖かい目で見ている秘書官たちの視線が気になるけれど……何かしらね。
最近、アーティといる時間が増えている気がするわ。しかも王宮中でそれが許容されているなんてね。王妃様ですら何も言わないんだもの。いいのかしら……?
「わかった。ところでアリア、何考えてるの?」
「……ああいえ、特に」
「そう?」
にこにことご機嫌な彼をみているとどうでも良くなっちゃうわね。癒しだわ……
「今日この後遊ぶんだよね? また後でね」
ヒラヒラと手を振って去っていく彼を見送りながら椅子に座り書類を捌き始める。流石に今日は約束があるから少し残ってしまうけれどいいかしら……
また明日頑張らなくちゃ。
屋敷へ一旦帰り、外出の準備をするために部屋へ向かおうとしたところで、妹のライラに捕まってしまう。ギラギラとしたドレスに装飾品を纏った彼女は勝ち誇った表情でわたくしを見下す。わたくしの方が背が低いから必然的にそうなってしまうのだけれど。
はあぁぁ。話を聞かないと話してもらえない感じね。
「どうしたの?」
「ふふっ。これ、イアン殿下から買っていただいたの。いいでしょう?」
「はあ。それで?」
さっさと終わらせたいわたくしはとりあえず返事をする。しかし彼女は気に食わないみたいで一気に怒り出してしまった。
「何よその態度。殿下に買ってもらえないからて僻んでんじゃないわよっ」
あら、逆効果だったかしら……じゃあ褒めまくってみる?
「ああ、素敵なドレスと装飾品ですね。よくお似合いで」
棒読みになってしまったけれどこれがわたくしの精一杯だわ。これ以上は無理ね。わたくし案外正直な性格なのかしら。
あらいけない。余計に顔の皺が増えてしまっているわ。本当面倒ね。
「なんなのよ!」
こっちのセリフなんですけれども……わたくしの貴重な時間をあなたなんかに使いたくないわ……
「本当憎たらしいわねっ」
腕を振り上げてるわ。ちょうど使用人たちも心配して集まってくれているみたいだし、ちょうどいいわね。
『自分のことを大切にして』
誰かの言葉が頭をよぎったけれど、誰もとめられる位置にもいないしもうすでに頬にくっつきそう。
パチンっ
「いった」
打たれた方の頬をさする。なんだか鋭い痛みが走ったような……
「アリア様っ、血がっ。すぐに手当ていたします。申し訳ありませんっ」
涙目のカリンに連れられ自室に戻る。ああ、やってしまった。彼女指輪でもしてたのかしらね。
鏡で確認すると頬に一筋の傷ができてしまっていて。みんな駆け寄ってくれて大袈裟にガーゼを張られてしまう。
これ、絶対怒られるやつじゃないかしら……
廊下で怒鳴り散らしていたライラにお迎えが来たようで声が遠ざかっていく。お花畑王子が来てしまったのかしら。
使用人たちにはとめられてしまったけれど、約束していたもの。待たせるわけにはいかないわね。
わたくしは着替えて玄関まで向かった。
執務室へ向かうと、そこらじゅうの騎士の方からお礼を言われる。あれ、どうかしたのかしら? そう思いながら執務室に入ると、そこにはザルドさんがいた。
「先日は、ありがとうございましたっ! さっそく服に縫い付けてからは快適でありますっ」
ああ、さっきの騎士たちもこれのお礼だったのかしら。わたくしはただ解決策を提示してオリーブと繋いだだけなのだけれど……
でも、喜んでもらえてよかったわ。お金はかかったでしょうけど、予算もまだあるって言っていたものね。お役に立てて何よりよ。
「いえ、わたくしはできることをしただけですので。また何か困ったことがあればおっしゃって? それとできればもう少し詳しく書いていただけるとすぐに通りやすくなると思うわ」
「はっ。ありがとうございます! では失礼します!」
なんだかとても元気になったわね。元々結構元気な方だとは思っていたけれど。
「さて、今日もよろしくお願いします」
秘書官二人が微笑んでくれる。最近ではお菓子の差し入れが多くて、みんなで食べながらノンビリと仕事をしているの。たまにいろいろな方が遊びにきてくれて一緒にお話しするのよね。そこにはなぜか他国からの貴賓までくることがあってたまに困惑するのだけれど……
王妃様も気を遣ってかたくさん差し入れをしてくれて、ソファやローテーブルを持ち込んでくださっているの。なんだかわたくしの仕事外のことが多いのだけれど、どうしてかしらね?
それから……
「アーティ、また来たの?」
最初のうちは驚いていた秘書官たちももう慣れたみたいで気にせず仕事をしている。わたくしも静かにお仕事したいのに……
「来ちゃいけない?」
「いえ、別にいいのだけれど……」
「でしょう? それより、アリア。もしどこか遠くへ行くとしたら、どこ行きたい?」
「いきなりね。そうね夜景が綺麗なところかしら? 海もいいわねぇ」
「なるほど」
「あとは屋台とかお祭りとか? あまり行ったことないのよね。この国あまりお祭りもないみたいだし」
そうなのよね。わたくし地味に行ったことがないのよねぇ。前世では屋台の焼きそばとかポテトとか好きだったなぁ。なんだか美味しそうに感じるのよねあれって。雰囲気とかかしら。
海なんて音を聞いているだけで癒されるもの。ザザーって音、なんでか癒されるのよね。
そんな会話をしているわたくしたちを生暖かい目で見ている秘書官たちの視線が気になるけれど……何かしらね。
最近、アーティといる時間が増えている気がするわ。しかも王宮中でそれが許容されているなんてね。王妃様ですら何も言わないんだもの。いいのかしら……?
「わかった。ところでアリア、何考えてるの?」
「……ああいえ、特に」
「そう?」
にこにことご機嫌な彼をみているとどうでも良くなっちゃうわね。癒しだわ……
「今日この後遊ぶんだよね? また後でね」
ヒラヒラと手を振って去っていく彼を見送りながら椅子に座り書類を捌き始める。流石に今日は約束があるから少し残ってしまうけれどいいかしら……
また明日頑張らなくちゃ。
屋敷へ一旦帰り、外出の準備をするために部屋へ向かおうとしたところで、妹のライラに捕まってしまう。ギラギラとしたドレスに装飾品を纏った彼女は勝ち誇った表情でわたくしを見下す。わたくしの方が背が低いから必然的にそうなってしまうのだけれど。
はあぁぁ。話を聞かないと話してもらえない感じね。
「どうしたの?」
「ふふっ。これ、イアン殿下から買っていただいたの。いいでしょう?」
「はあ。それで?」
さっさと終わらせたいわたくしはとりあえず返事をする。しかし彼女は気に食わないみたいで一気に怒り出してしまった。
「何よその態度。殿下に買ってもらえないからて僻んでんじゃないわよっ」
あら、逆効果だったかしら……じゃあ褒めまくってみる?
「ああ、素敵なドレスと装飾品ですね。よくお似合いで」
棒読みになってしまったけれどこれがわたくしの精一杯だわ。これ以上は無理ね。わたくし案外正直な性格なのかしら。
あらいけない。余計に顔の皺が増えてしまっているわ。本当面倒ね。
「なんなのよ!」
こっちのセリフなんですけれども……わたくしの貴重な時間をあなたなんかに使いたくないわ……
「本当憎たらしいわねっ」
腕を振り上げてるわ。ちょうど使用人たちも心配して集まってくれているみたいだし、ちょうどいいわね。
『自分のことを大切にして』
誰かの言葉が頭をよぎったけれど、誰もとめられる位置にもいないしもうすでに頬にくっつきそう。
パチンっ
「いった」
打たれた方の頬をさする。なんだか鋭い痛みが走ったような……
「アリア様っ、血がっ。すぐに手当ていたします。申し訳ありませんっ」
涙目のカリンに連れられ自室に戻る。ああ、やってしまった。彼女指輪でもしてたのかしらね。
鏡で確認すると頬に一筋の傷ができてしまっていて。みんな駆け寄ってくれて大袈裟にガーゼを張られてしまう。
これ、絶対怒られるやつじゃないかしら……
廊下で怒鳴り散らしていたライラにお迎えが来たようで声が遠ざかっていく。お花畑王子が来てしまったのかしら。
使用人たちにはとめられてしまったけれど、約束していたもの。待たせるわけにはいかないわね。
わたくしは着替えて玄関まで向かった。
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