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番外編
sideアーティ5
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sideアーティ5
とある日、いつものようにアリアの休憩に合わせて王宮を歩いていると少し困った様子のアリアを見かけた。声をかけるとどうやらまたアリアは何かをしようとしているらしい。そのためにオリーブを王宮に呼びたいのだとか。けれどその手段がなく困っているらしかった。
すぐに伝令を呼び、オリーブがこちらにくるように手配する。ついでにアリアを軽く口説いてみると顔を真っ赤にして固まってしまっていた。
あまりこう言うことに慣れていないことが嬉しくてついつい声もかけずにじっと見つめてしまっていた。周りは何事かとチラチラ様子を見ていたが、彼女の表情を見て何かを察したように去っていった。少しやりすぎたかな。まだ彼女はイアンの婚約者だと言うのに。
それにしても脈がありそうな反応に胸が高鳴った。嫌われている様子は全くなさそうだし。それに信用されている気もする。
その事実が嬉しくて、そのひは仕事が捗っていった。
いつものように図書室でアリアを待っていたけど一向にこなかった。おかしいと思い、探しにいくと空き教室から人の声が聞こえる。しかもこの声の主は、イアンだ。
嫌な予感がして教室に入ると今にも殴られそうになっているアリアと腕を振り上げているイアン。慌てて止めに入った。
どんな理由があろうと紳士が女性に手を挙げるなど許されることではない。ましてやアリアになど、絶対に許されない。それにアリアもなんだか殴られることを受け入れているような気がしてそれに対してもついきつく言ってしまった。彼女には傷一つおって欲しくない。
イアンだけでなくアリアにも言い聞かせ、アリアを抱き寄せて頭を撫でる。やっぱりいい匂いで腕にすっぽり収まる感じすら愛おしい。自分のそばにいてほしい。
そんな気持ちがますます募っていった。それに以前から彼女は何か企んでいる。これを機に彼女の考えを聞いておくのもいい。そんな気持ちで尋ねた。
「あの、実は……イアン殿下との婚約破棄を望んでおりまして。おそらく一年の終わりのパーティでイアン殿下は婚約破棄を申し出ると思うのです。そもそも王子が単独で婚約破棄を言いつけるなど、言語道断。それに陛下や王妃様もどうやら了承はしていない。その時点で廃嫡は確実となるでしょう。王家のお金を勝手に使い込んでおいて処罰されないならそのくらいのことをなさらないと破棄はされないでしょう? それに卒業パーティではたくさんの貴族のご令嬢、ご子息がいらっしゃるので、王家としてももみ消されないでしょうね」
「なるほどな。破棄をされた後はどうするつもりだ?」
「まずはお父様に除籍していただき、表面上は修道院へ送ってもらいます」
「へぇ。それは面白そうだけど、伯爵家と縁を切る意味は?」
「もうね、家族だと思われるのも嫌なのよね。お父様とも話をするつもり」
「そうなんだ。行き先は決めているの?」
そう尋ねた僕にアリアは悩んでいると告げた。これは、チャンスじゃないか? 僕の国には彼女と仲のいい従兄妹がいるし、家のことは心配ないだろう。こちらに連れてきてしまえば、時間をかけてでも口説ける。
それにネルトの協力も得られるだろう。
彼女は首を傾げていたけど、授業が終わると王宮へ行き、方々へと手紙を書き始めた。まずは父上へ、例の女の子を自国へ連れ帰ることができるかもしれないと言うこと、もしそうなったら色々お願いしたいこと。さらにこの国での仕事の内容。
こちらについてはだいぶ整備できてきて、レオン自身も他のことに手をつける余裕まで出てきている。それから王族にも休日というものが与えられた。緊急のものだけを受付し、何もなければお休みになると言うシステム。これは王妃が考案されたらしく、アリアに相談して実行したらしい。
どうやらあの王妃、実は結構仕事ができるらしい。初めからやっていればと思うけど、彼女の境遇を思うと抑圧されてしまっていてなかなか自分の力を発揮することができなかったのだろう。本人は意図してやっていたわけではなかったようだが結果としていい方向へ向かっている。
レオンもそのおかげで助けられているようで今ではレオンと王妃で陛下に意見しにいくことも増えたのだとか。レオンの意見だけなら通らなかったことも王妃と一緒ならばかなり通るらしい。本当にアリアはすごいよ。
もう一通の手紙の宛先はネイトだ。アリアを連れ帰る用意をしていること、その後は王宮へと連れて行こうと思っているからサポートしてほしいと。従兄妹ということもあって何かあれば意見しやすいだろうと。
ネルトからの返事はすぐに届いた。内容を見て少し不服だったが、今までで彼の言うことが外れたことはない。仕方なく従うことにした、
なんの話かというと、こっちへきてすぐに王宮へ連れていくのは彼女にとってあまり良くないのではないか、それと向こうと縁を切るなら、こちらで養子にする用意があること。養子に関しては家族全員の意見が一致しているから問題ないことが書かれていた。
養子に関してはあまり考えていなかったな。そういえば縁を切ると言っていたから、そうなると彼女は平民になる。そうなると少し面倒になるからな。
こうして粛々と根回しを進めていった。
とある日、いつものようにアリアの休憩に合わせて王宮を歩いていると少し困った様子のアリアを見かけた。声をかけるとどうやらまたアリアは何かをしようとしているらしい。そのためにオリーブを王宮に呼びたいのだとか。けれどその手段がなく困っているらしかった。
すぐに伝令を呼び、オリーブがこちらにくるように手配する。ついでにアリアを軽く口説いてみると顔を真っ赤にして固まってしまっていた。
あまりこう言うことに慣れていないことが嬉しくてついつい声もかけずにじっと見つめてしまっていた。周りは何事かとチラチラ様子を見ていたが、彼女の表情を見て何かを察したように去っていった。少しやりすぎたかな。まだ彼女はイアンの婚約者だと言うのに。
それにしても脈がありそうな反応に胸が高鳴った。嫌われている様子は全くなさそうだし。それに信用されている気もする。
その事実が嬉しくて、そのひは仕事が捗っていった。
いつものように図書室でアリアを待っていたけど一向にこなかった。おかしいと思い、探しにいくと空き教室から人の声が聞こえる。しかもこの声の主は、イアンだ。
嫌な予感がして教室に入ると今にも殴られそうになっているアリアと腕を振り上げているイアン。慌てて止めに入った。
どんな理由があろうと紳士が女性に手を挙げるなど許されることではない。ましてやアリアになど、絶対に許されない。それにアリアもなんだか殴られることを受け入れているような気がしてそれに対してもついきつく言ってしまった。彼女には傷一つおって欲しくない。
イアンだけでなくアリアにも言い聞かせ、アリアを抱き寄せて頭を撫でる。やっぱりいい匂いで腕にすっぽり収まる感じすら愛おしい。自分のそばにいてほしい。
そんな気持ちがますます募っていった。それに以前から彼女は何か企んでいる。これを機に彼女の考えを聞いておくのもいい。そんな気持ちで尋ねた。
「あの、実は……イアン殿下との婚約破棄を望んでおりまして。おそらく一年の終わりのパーティでイアン殿下は婚約破棄を申し出ると思うのです。そもそも王子が単独で婚約破棄を言いつけるなど、言語道断。それに陛下や王妃様もどうやら了承はしていない。その時点で廃嫡は確実となるでしょう。王家のお金を勝手に使い込んでおいて処罰されないならそのくらいのことをなさらないと破棄はされないでしょう? それに卒業パーティではたくさんの貴族のご令嬢、ご子息がいらっしゃるので、王家としてももみ消されないでしょうね」
「なるほどな。破棄をされた後はどうするつもりだ?」
「まずはお父様に除籍していただき、表面上は修道院へ送ってもらいます」
「へぇ。それは面白そうだけど、伯爵家と縁を切る意味は?」
「もうね、家族だと思われるのも嫌なのよね。お父様とも話をするつもり」
「そうなんだ。行き先は決めているの?」
そう尋ねた僕にアリアは悩んでいると告げた。これは、チャンスじゃないか? 僕の国には彼女と仲のいい従兄妹がいるし、家のことは心配ないだろう。こちらに連れてきてしまえば、時間をかけてでも口説ける。
それにネルトの協力も得られるだろう。
彼女は首を傾げていたけど、授業が終わると王宮へ行き、方々へと手紙を書き始めた。まずは父上へ、例の女の子を自国へ連れ帰ることができるかもしれないと言うこと、もしそうなったら色々お願いしたいこと。さらにこの国での仕事の内容。
こちらについてはだいぶ整備できてきて、レオン自身も他のことに手をつける余裕まで出てきている。それから王族にも休日というものが与えられた。緊急のものだけを受付し、何もなければお休みになると言うシステム。これは王妃が考案されたらしく、アリアに相談して実行したらしい。
どうやらあの王妃、実は結構仕事ができるらしい。初めからやっていればと思うけど、彼女の境遇を思うと抑圧されてしまっていてなかなか自分の力を発揮することができなかったのだろう。本人は意図してやっていたわけではなかったようだが結果としていい方向へ向かっている。
レオンもそのおかげで助けられているようで今ではレオンと王妃で陛下に意見しにいくことも増えたのだとか。レオンの意見だけなら通らなかったことも王妃と一緒ならばかなり通るらしい。本当にアリアはすごいよ。
もう一通の手紙の宛先はネイトだ。アリアを連れ帰る用意をしていること、その後は王宮へと連れて行こうと思っているからサポートしてほしいと。従兄妹ということもあって何かあれば意見しやすいだろうと。
ネルトからの返事はすぐに届いた。内容を見て少し不服だったが、今までで彼の言うことが外れたことはない。仕方なく従うことにした、
なんの話かというと、こっちへきてすぐに王宮へ連れていくのは彼女にとってあまり良くないのではないか、それと向こうと縁を切るなら、こちらで養子にする用意があること。養子に関しては家族全員の意見が一致しているから問題ないことが書かれていた。
養子に関してはあまり考えていなかったな。そういえば縁を切ると言っていたから、そうなると彼女は平民になる。そうなると少し面倒になるからな。
こうして粛々と根回しを進めていった。
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