魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました

ふうか

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婚約編

12 アルハイザー家の舞踏会③

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「アンネ様すみません、私...」

「いいのよ。ちょっとはすっきりしたみたいね。」

「ありがとうございます。」

「さあ、こっちにいらっしゃい。お化粧直さなくっちゃ!」

 アンネマリーは傍にいたメイドに化粧道具を持ってくるように指示すると、レティシアを合わせ鏡の前に座らせた。あっという間に涙で崩れた化粧を整えるとアクセサリーケースから一対のイアリングを手にとってレティシアの手に乗せる。

「レティシアちゃん、貴方にこれをあげるわ。」

「そんな、いただけません!」

「これちょっと可愛すぎて私じゃもう付けられないの。もったいないでしょ?アクセサリーだってずっと仕舞ったままじゃ可哀そうだと思わない?だから、レティシアちゃんがつけてあげて、ね?」

 そう言って返事も聞かずにイアリングをレティシアの耳につけてにっこりとほほ笑んだ。サファイアの小ぶりなイヤリングはレティシアの今日のドレスにピッタリで、ゆらゆらと揺れるたびにシャンデリアの光を反射して輝いた。サファイアは小さな薔薇の形にカットされ、その精密さから非常に高価なものであることがうかがえる。

「レティシアちゃん、青薔薇の花言葉を知っている?」

「花言葉ですか?すみません。」

「青薔薇の花言葉はね『奇跡』っていうの。それから『神の祝福』ていうのもあるわ。だから、これはレティシアちゃんに神の祝福かありますようにって私からのプレゼント。」

「ありがとう、ございます。すごく綺麗…」

 ほんのりと頬を染めて年相応の明るい笑顔を浮かべたレティシアにアンネマリーは満足げに頷いた。

「さあ、もうすぐパーティーが始まるわ。私は行けないけれど、どうぞ楽しんで。」

「はい!」

「イサイアス。いいこと、ちゃんとレティシアちゃんをエスコートするのよ。」

「もちろん。わかってますよ。さあ、シア、行こう。」

「ええ。アンネ様、本当にありがとうございました。」

「またいらっしゃいね。次はお義母様って呼んで欲しいわ。」

「えっと、」

「ふふふ、イサイアスさっさとしなさいな。」

「わかってます!」

 イサイアスは母親の直球な揶揄いに顔を赤くして彼女をにらむ。そんな息子の視線などどこ吹く風で朗らかに笑うアンネマリーはレティシアをもう一度優しく抱きしめた。

「いつでも頼っていらっしゃい。」




 アンネマリーに送り出された二人は中庭に面する回廊を歩いていた。窓の外にはちょうど盛りの薔薇が咲き誇っている。あけ放たれた窓から風にのって薔薇の香りが入ってきた。

「いい香りね。それにとっても立派な薔薇園だわ。」

「そうだろう。母上が薔薇が好きで家の薔薇園は特別力が入っているから。」

 イサイアスは回廊のドアを開けるとレティシアを薔薇園に連れ出した。レティシアが咲き乱れる薔薇に目を奪われているとイサイアスが一輪の白薔薇を持って現れた。

「レティシア、こっち向いて。」

 イサイアスが時折見せる真剣な表情にレティシアはドキッとしながらイサイアスと向き合うように立った。日が沈んだばかりで西の空はまだ少し明るく、頭上には一番星が輝き始めていた。会場から少し離れたここまでは会場の喧騒は届かず二人きりの静かな世界に優しい風が吹いていた。

 イサイアスは真剣な表情から一転、照れくさそうにふっと優しく微笑んで口を開いた。





「シア、俺の婚約者になってくれる?」









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