魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました

ふうか

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婚約編

29 隠し部屋への侵入

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 父の執務室で衝撃的な事実を知ってから数日。レティシアは連日頭を悩ませていた。知ってしまったからには放って置くわけにはいかない。しかし、誰に相談してよいのかもわからなかった。父のことだ。いろんなところに手を伸ばしているだろう。きっと役人たちも買収して事を隠すくらいはしているはずだ。この周辺の役所の統括は父なのだから。

 こんな時こそ祖父に相談できればいいのだが、最近特に調子を崩している祖父には会うこともかなわず相談できずにいた。


「お嬢様、イサイアス様からの手紙が来ましたよ。」

 そんなレティシアにイサイアスからの手紙が届いた。

「そうよ、イアスがいるじゃない!」

 イサイアスならばきっと何とかしてくれる。ダリアンもアンネマリーもきっと協力してくれるだろう。何より父でも彼らに逆らうこともできないし、なかったことにしてごまかすこともできやしない。

 イサイアスからの手紙には年始には領地に着くということが書かれていた。年始まであと5日ほどだ。領地には一週間ほど滞在するからぜひ訪ねておいでと書かれている。レティシアは返事に是非行きたいということ、それから相談したいことがあると書いてイサイアスからの手紙を持ってきた業者に手渡した。

 相談するとなると証拠が必要だ。もう一度父の執務室へ入ってあの文書を盗み出す必要がある。イサイアスに相談する際に彼に預けてしまった方がいいだろう。バレたと知られたときに父があの書類を破棄してしまえば証拠がなくなってしまうからだ。

 レティシアは執務室の隠し部屋からあの書類を持ち出すことを決めた。そのためには父がいないときに誰にも気づかれずに執務室へ忍び込む必要がある。実行するのはアルハイザー領へ向けて出発する前日、4日後だ。

 それから4日間、レティシアは従者やメイドたちに父の行動を尋ねて父が執務室から出る時間を調べ上げた。一番詳しく知っていたのはやはり父の助手をしている従者で、彼は父が執務室から出ている時間えお把握していた。私が父の行動を知ろうとしていることを不思議そうにしていたが、父へサプライズをしたいからなんて分かりやすい嘘でごまかした。屋敷の者も私が何か探ろうとしていることに気づいているようだったが、正直に忍び込みますなんて言えるわけもなく、黙っていて欲しいとお願いすることしかできなかったが快く了承してくれた。



 そして訪れた計画実行の日。父が執務室を去って完全に寝るのは日付をかわる頃。普段ならレティシアもとっくに就寝している時間だが、緊張からかレティシアはすっかり目が冴えている。使用人たちも皆離れへ帰ったのか屋敷は誰もいないかのように静まり返っていた。

 執務室へ行くにはいくつかの問題があった。一つは両親の寝室の前を通らなければいけないこと。もうひとつは執務室と寝室が近いために物音を立てずに作業を終えなければいけないことだ。万が一のために灯りもつけない方がいい。真っ暗な暗闇で静かにその書類を見つけ出さなければいけないのだ。

 マリーも下がって部屋に一人、ベッドから抜け出て脇に置いてある時計を見ると予定より少し早いぐらいの時間だった。マリーは今日の私の様子が少しおかしかったことに気づいていたようで少し心配そうだったが結局なにも言わなかった。

 部屋の扉を音を立てないように気を付けて開く。廊下はひんやりと冷えていて、レティシアは上着の前をしっかりと閉めた。

 二階にあるレティシアの寝室から三階にある執務室までは少し距離がある。レティシアは足音をころしてゆっくりと歩く。廊下は引かれた絨毯のおかげで足音を消してくれるが大理石の階段はそうはいかない。緊張しながらゆっくりゆっくり進み、無事に三階にたどり着いたときにはレティシアはほっと息を吐いた。

 真っ暗な廊下を歩く。ついに両親の寝室の前まで来た時、レティシアの心臓はバクバクと音をたてて暴れていた。幸い父も母もすでに寝ているようで、部屋の灯は落とされ静まり返っている。執務室まであと少しだ。

 息を忘れたように静かに父の寝室を通り過ぎ、執務室の前に到着する。ドアノブをゆっくりと回して開いた隙間から体を滑り込ませた。ドアを閉めほっと息を吐く。とりあえずは順調に進んでいる。

 真っ暗な執務室を記憶と手を頼りに鏡を探す。鏡の淵に手が触れて、レティシアは立ち止まった。壁と鏡の間に知っていないと見つからないような隙間があり、そこに手を入れて手前に引くと隠し扉がゆっくりと開いた。中は暗い執務室よりもさらに真っ暗でぽっかりと穴が開いているかのような漆黒で満ちていた。あまりの暗さにレティシアはしり込みするが、ここまで来たからには引き返すわけにはいかないとゆっくりと隠し部屋に足を踏み入れた。

 入って真っすぐ歩くと前回と同じ机に行き当たる。その机の上に目当ての書類はあった。場所を変えられていたらこの暗闇では見つけられなかっただろう。あっさりと見つかったことに安心して、レティシアはその書類を上着の内側に仕舞いこむともと来た道を引き返した。

 帰りも何事もなく、部屋に戻ることができ、部屋に入ったレティシアは安堵からベッドに倒れこんでそのまま眠ってしまった。
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