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第6話:勇者様とすれ違ってみたけれど
「ん……あれ、あの人たち、なんか雰囲気が違うかも」
ユナはバニー姿のまま、街道をのんびり歩いていた。次の街を目指している途中、前方から妙にキラキラとしたオーラを放つ集団が近づいてくるのを見つけたのだ。
男2人、女2人のパーティーらしく、みんな武具や装備がきらびやか。剣や杖、弓など、いかにも「正統派ファンタジーの勇者パーティーです」という感じ。
「おお、あちらに人がいるぞ」
彼らの先頭に立っている青年が、ユナの姿を見つけて声をかけてきた。金髪で、手には片手剣。あまりにも絵に描いたような“勇者”ルックスだ。
「こんにちは。旅の人ですか?」
「はい、まあそんな感じですけど」
ユナがあっさり答えると、金髪の青年――どうやら彼が勇者らしい――はうなずいて微笑む。
「実は俺たち、魔王の動向を探っている最中でね。各地で魔物が活性化してるって噂もあるし、よければ協力してもらえないだろうか?」
「魔王……」
ユナは少し首を傾げる。いかにも世界を救うストーリーの要となる存在だけど、今のところ自分には関係なさそうだ。
「うーん……そういうの、あまり興味がないんですよね」
「あ、そ、そうなのか……」
想定外の返答に、青年だけでなく後ろの仲間たちも面食らった表情を浮かべる。
女魔法使いらしき人物や弓手の女性も、「勇者様をスルー!?」という驚きの眼差しをユナに向けている。
「魔王が復活すれば、この世界は危機に陥る。それこそ大勢の人が不幸に……」
「そうなんですか。大変そうですね」
「いや、あの……大変だからこそ、力を貸してほしいんだけど……」
勇者は懸命に説得しようとしてくるが、ユナは“世界の危機”に対してイマイチやる気を見せない。
理由は単純で、妹を探すのが最優先……というよりも、そもそも世界平和なんて面倒なことに関わりたいとも思わないらしい。
「ごめんね。別に悪い人じゃないんだろうけど、わたしそういう戦いとか興味ないし」
「そ、そう……」
勇者パーティーは困惑したまま立ちつくしてしまう。彼らの常識では“世界を救う”という言葉を出せば、大半の人間は少なからず興味を示す。ましてユナのように一見強そうな(?)冒険者なら、仲間に入ってくれる可能性は高いと踏んでいたのかもしれない。
「ま、もし魔王軍に遭遇したら、何か手伝うかも……そのときの気分しだいですけど」
ユナがそう付け足すと、勇者は複雑そうな顔で頷いた。
「わかった。じゃあ、無理強いはやめておこう。でも、何か力を貸してくれる気になったら、ぜひ声をかけてくれ。俺はリヒトっていうんだ」
「うん、ありがとう。わたしはユナ。とりあえず、旅してます」
互いに簡単に自己紹介を交わす。勇者リヒトは名残惜しそうだが、無理やり誘って嫌われても仕方ないと悟ったのか、あっさり退いてくれた。
ところが、そこで後ろにいた僧侶風の青年が「あ、リヒト様!」と焦ったように声を上げた。
「さっき追い払ったはずの魔物が、また襲ってきています……!」
背後の道端の茂みから、大小いくつもの怪物の姿が見える。狼のような形だが異様に大きな牙を持ち、明らかに普通の動物とは違う。
再びこちらへと向かって走り出すそのモンスター群を見て、勇者パーティーは臨戦態勢に入った。
「くっ、やはりしつこいな……! みんな、行くぞ!」
メンバー全員が武器を構える。魔法使いは詠唱を始め、弓手は素早く矢をつがえる。
一方のユナはどうしようか少し迷い、まあ手伝ってあげてもいいか――と軽く前に出た。
「邪魔だったらごめんね」
そう言いながらバニー姿でひょこっとモンスターの前に立つ。すると、案の定、狼型モンスターたちは一瞬たじろいだように足を止めてしまう。
地味にユナのバニースーツの色気が効いているのか、あるいは彼女に備わった幸運オーラか。とにかく敵が一瞬ひるんでいる隙に、ユナは間合いを詰める。
「えいっ」
何の変哲もないキックやパンチを軽く繰り出すだけなのに、モンスターたちはまるで大技を食らったかのように吹き飛び、そのまま動かなくなる。
勇者パーティーはその光景に目を疑うばかりだ。
「な、なにが起きてる……!? こっちが攻撃する前にやられてる!」
「あのバニーの子、そんなに強かったの……?」
あっという間にモンスター群は撃破。まさしく数分もかからずに終わり、ふうっと息をつくユナとは対照的に、勇者たちは唖然と立ち尽くしている。
「やっぱり強いじゃないか……どうして、俺たちの誘いを断るんだ……?」
「うーん、どうしてって言われても……さっきも言ったけど興味ないんだよね」
ユナはあまり自覚のないまま、モンスター退治を手伝ってしまったが、それ自体も「ちょうど通りすがったから」程度のノリでしかない。
世界の危機や魔王討伐といった大それた使命を背負うつもりなど、今のところ毛頭ないのだ。
「これからどうするんだ? またすぐ出発するのか?」
勇者リヒトが、名残惜しそうに問いかける。仲間たちも「一緒に来てくれれば心強いのに」というオーラを隠せないままユナを見つめている。
「うん、わたしは次の街へ向かうよ。妹探しの旅してるから」
「妹……? そうだったのか。なら仕方ないが、またどこかで会えたら、ぜひ俺たちのパーティーに加わってくれ。頼む!」
「まあ、気分が変わったらね」
無愛想にならない程度にそう言って、ユナはひらりと手を振った。
勇者パーティーはあれよあれよという間に通り過ぎていくユナの後ろ姿を見送り、しばし沈黙する。
「すごい逸材に出会った気はするんだけど……ねえ、リヒト様」
「ああ、わかってる。でも……人にはそれぞれの旅があるからな。焦って追いかけて嫌われたくもない」
勇者リヒトは複雑な表情をしながら剣を腰に納める。モンスターが一掃されたのはいいが、自分たちの出番はほとんどなかった。
こうして、わずかな交錯で終わってしまった不思議な出会い。
バニーガールがすべてを片付けて去っていった事実だけが、勇者パーティーの心に大きなインパクトを残した。
---
一方そのころ。
ユナは街道沿いの道標を見て、次の街の方向を確認していた。
「もう少し歩いたら着くかな」
道端で彼女に助けられた人々が“あのバニーは何者だ”と騒いでいる気配もあるが、ユナは気にも留めない。
世界の平和に興味はないけれど、なぜか行く先々で戦いに巻き込まれる運命らしい。それでも、本人はいたってマイペースだ。
「魔王……ねぇ。ま、関係ないならそのままでいいや」
妹ナナを探す方がよっぽど優先度が高い。そう思いながら、ユナはどこまでも気楽に歩き続ける。勇者パーティーとの遭遇はたった今終わったばかりだが、彼女の旅にとってはほんの通過点でしかなかった。
果たして彼らと再会することはあるのか――それはまた別のお話。
今はただ、バニーガールの後ろ姿がのどかな街道を進んでいくのだった。
ユナはバニー姿のまま、街道をのんびり歩いていた。次の街を目指している途中、前方から妙にキラキラとしたオーラを放つ集団が近づいてくるのを見つけたのだ。
男2人、女2人のパーティーらしく、みんな武具や装備がきらびやか。剣や杖、弓など、いかにも「正統派ファンタジーの勇者パーティーです」という感じ。
「おお、あちらに人がいるぞ」
彼らの先頭に立っている青年が、ユナの姿を見つけて声をかけてきた。金髪で、手には片手剣。あまりにも絵に描いたような“勇者”ルックスだ。
「こんにちは。旅の人ですか?」
「はい、まあそんな感じですけど」
ユナがあっさり答えると、金髪の青年――どうやら彼が勇者らしい――はうなずいて微笑む。
「実は俺たち、魔王の動向を探っている最中でね。各地で魔物が活性化してるって噂もあるし、よければ協力してもらえないだろうか?」
「魔王……」
ユナは少し首を傾げる。いかにも世界を救うストーリーの要となる存在だけど、今のところ自分には関係なさそうだ。
「うーん……そういうの、あまり興味がないんですよね」
「あ、そ、そうなのか……」
想定外の返答に、青年だけでなく後ろの仲間たちも面食らった表情を浮かべる。
女魔法使いらしき人物や弓手の女性も、「勇者様をスルー!?」という驚きの眼差しをユナに向けている。
「魔王が復活すれば、この世界は危機に陥る。それこそ大勢の人が不幸に……」
「そうなんですか。大変そうですね」
「いや、あの……大変だからこそ、力を貸してほしいんだけど……」
勇者は懸命に説得しようとしてくるが、ユナは“世界の危機”に対してイマイチやる気を見せない。
理由は単純で、妹を探すのが最優先……というよりも、そもそも世界平和なんて面倒なことに関わりたいとも思わないらしい。
「ごめんね。別に悪い人じゃないんだろうけど、わたしそういう戦いとか興味ないし」
「そ、そう……」
勇者パーティーは困惑したまま立ちつくしてしまう。彼らの常識では“世界を救う”という言葉を出せば、大半の人間は少なからず興味を示す。ましてユナのように一見強そうな(?)冒険者なら、仲間に入ってくれる可能性は高いと踏んでいたのかもしれない。
「ま、もし魔王軍に遭遇したら、何か手伝うかも……そのときの気分しだいですけど」
ユナがそう付け足すと、勇者は複雑そうな顔で頷いた。
「わかった。じゃあ、無理強いはやめておこう。でも、何か力を貸してくれる気になったら、ぜひ声をかけてくれ。俺はリヒトっていうんだ」
「うん、ありがとう。わたしはユナ。とりあえず、旅してます」
互いに簡単に自己紹介を交わす。勇者リヒトは名残惜しそうだが、無理やり誘って嫌われても仕方ないと悟ったのか、あっさり退いてくれた。
ところが、そこで後ろにいた僧侶風の青年が「あ、リヒト様!」と焦ったように声を上げた。
「さっき追い払ったはずの魔物が、また襲ってきています……!」
背後の道端の茂みから、大小いくつもの怪物の姿が見える。狼のような形だが異様に大きな牙を持ち、明らかに普通の動物とは違う。
再びこちらへと向かって走り出すそのモンスター群を見て、勇者パーティーは臨戦態勢に入った。
「くっ、やはりしつこいな……! みんな、行くぞ!」
メンバー全員が武器を構える。魔法使いは詠唱を始め、弓手は素早く矢をつがえる。
一方のユナはどうしようか少し迷い、まあ手伝ってあげてもいいか――と軽く前に出た。
「邪魔だったらごめんね」
そう言いながらバニー姿でひょこっとモンスターの前に立つ。すると、案の定、狼型モンスターたちは一瞬たじろいだように足を止めてしまう。
地味にユナのバニースーツの色気が効いているのか、あるいは彼女に備わった幸運オーラか。とにかく敵が一瞬ひるんでいる隙に、ユナは間合いを詰める。
「えいっ」
何の変哲もないキックやパンチを軽く繰り出すだけなのに、モンスターたちはまるで大技を食らったかのように吹き飛び、そのまま動かなくなる。
勇者パーティーはその光景に目を疑うばかりだ。
「な、なにが起きてる……!? こっちが攻撃する前にやられてる!」
「あのバニーの子、そんなに強かったの……?」
あっという間にモンスター群は撃破。まさしく数分もかからずに終わり、ふうっと息をつくユナとは対照的に、勇者たちは唖然と立ち尽くしている。
「やっぱり強いじゃないか……どうして、俺たちの誘いを断るんだ……?」
「うーん、どうしてって言われても……さっきも言ったけど興味ないんだよね」
ユナはあまり自覚のないまま、モンスター退治を手伝ってしまったが、それ自体も「ちょうど通りすがったから」程度のノリでしかない。
世界の危機や魔王討伐といった大それた使命を背負うつもりなど、今のところ毛頭ないのだ。
「これからどうするんだ? またすぐ出発するのか?」
勇者リヒトが、名残惜しそうに問いかける。仲間たちも「一緒に来てくれれば心強いのに」というオーラを隠せないままユナを見つめている。
「うん、わたしは次の街へ向かうよ。妹探しの旅してるから」
「妹……? そうだったのか。なら仕方ないが、またどこかで会えたら、ぜひ俺たちのパーティーに加わってくれ。頼む!」
「まあ、気分が変わったらね」
無愛想にならない程度にそう言って、ユナはひらりと手を振った。
勇者パーティーはあれよあれよという間に通り過ぎていくユナの後ろ姿を見送り、しばし沈黙する。
「すごい逸材に出会った気はするんだけど……ねえ、リヒト様」
「ああ、わかってる。でも……人にはそれぞれの旅があるからな。焦って追いかけて嫌われたくもない」
勇者リヒトは複雑な表情をしながら剣を腰に納める。モンスターが一掃されたのはいいが、自分たちの出番はほとんどなかった。
こうして、わずかな交錯で終わってしまった不思議な出会い。
バニーガールがすべてを片付けて去っていった事実だけが、勇者パーティーの心に大きなインパクトを残した。
---
一方そのころ。
ユナは街道沿いの道標を見て、次の街の方向を確認していた。
「もう少し歩いたら着くかな」
道端で彼女に助けられた人々が“あのバニーは何者だ”と騒いでいる気配もあるが、ユナは気にも留めない。
世界の平和に興味はないけれど、なぜか行く先々で戦いに巻き込まれる運命らしい。それでも、本人はいたってマイペースだ。
「魔王……ねぇ。ま、関係ないならそのままでいいや」
妹ナナを探す方がよっぽど優先度が高い。そう思いながら、ユナはどこまでも気楽に歩き続ける。勇者パーティーとの遭遇はたった今終わったばかりだが、彼女の旅にとってはほんの通過点でしかなかった。
果たして彼らと再会することはあるのか――それはまた別のお話。
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