転生したらバニーガールだけど?まあいいか

MMM

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「ここが噂の魔法都市……さすがににぎやかだなぁ」

道を抜けると、見渡す限り大きな建物が並び、街のあちこちから煌びやかな光が漏れ出ている。  
光の正体は、どうやら魔法灯らしい。昼間から魔法の明かりで飾られた塔や、宙に浮く看板が視界を彩る。

ユナは相変わらずのバニー姿で、都会の雑踏をきょろきょろ見回していた。  
通行人も多く、まるでお祭りのような活気がある。ローブ姿の魔法使いらしき人や、学者風の人間が行き交い、何やら書類や本を抱えて走り回っている。

「魔法研究の盛んな街って聞いてたけど……なんか楽しそう」

とはいえ、妹がここにいる手がかりは皆無。  
それでも、いろんな人の噂や情報が集まりやすそうな場所だから、ひとまず訪れた格好だ。

「まずはギルド……いや、魔法研究施設とかもあるかも」

そう思って大通りを進んでいると、ふいに聞き慣れない言語の呪文が耳に飛び込んできた。

「オル・クラーラ・バニール脱衣!!」

「……は?」

ユナがぎょっとして振り返ると、そこには痩せぎすの青年魔法使いが立っていた。  
濃い紫色のローブを羽織り、いかにも「天才」と自称しそうなキラキラした目をしている。彼は杖を片手に、ユナへ向かって呪文を唱えている最中らしい。

「そこのバニー娘! なぜそんなにきわどい姿をしているのだ。まさか外せないのか? ならばこの俺が脱がしてやろう!」

「あ……え、勝手にやめてよ」

「安心しろ。俺は天才だ。脱衣の魔法は何度も実験している。成功すればお主は晴れてその怪しげな衣装を脱げるようになるはずだ!」

青年は興奮気味に自慢するが、ユナはすでに「いやいや、そういうの困るんだけど……」と及び腰。  
とはいえ脱げないバニースーツが外れるなら少しはありがたい……かもしれないが、見知らぬ他人の魔法でいきなり裸にされるのは問題がある。

「ちょ、待って。わたし、その魔法に乗り気じゃない……」

「ふふん、問題ない! なにせ俺は天才だぞ! いくぞ、脱げろおおお!」

青年魔法使いが怒涛の勢いで杖を振りかざし、謎の呪文を連発する。  
周囲の通行人は「なんだなんだ?」と興味津々に足を止めたり、遠巻きに見物している。

「こ、こら! やめろってば!」

ユナが抗議するも、その瞬間に魔法陣のような光が一瞬ユナを包み込んだ。  
しかし、次の瞬間――その光はむしろ青年のほうへと逆流し、びりびりと不穏な音を立てる。

「えっ、な、なに……?」

青年は大慌てで杖を振り回すが、どんどん光が暴走していき、やがて彼のローブを覆うように広がった。

「ひゃああああっ!?」

ドサッという音とともに、青年の身にまとっていたローブが一瞬で消失。  
さらにズボンやシャツまでどこかへ行ってしまい、彼はほぼ肌をあらわにした状態で道端に倒れこむ。

「うわ……」

ギャラリーから一斉にどよめきの声が上がり、「ま、まさか自分の服を消したのか……?」と噂が飛び交う。  
青年魔法使いは顔を真っ赤にして地面を這い、「うぐ……なんでぇぇ……」と情けない声を上げている。

「ご、ごめんね。わたし、何もしてないんだけど」

ユナは申し訳なさそうに声をかけるが、青年はショックが大きいのかひたすら呆然。  
その姿を見て、通りがかった衛兵たちが「まったく、また魔法トラブルか」とため息をつきながら駆け寄ってきた。

「はあ……この街はこれだから……。お嬢さん、被害はないか?」

「はい、全然……」

「ならいい。そっちの魔法使いは懲りない連中の一人だ。毎回無許可で変な実験するんだよ」

衛兵は青年を捕まえると、適当な布で身体を覆って連行していく。青年は「ちがう、ちがうんだ」と泣きそうな声を出しながら連れて行かれる。  
ユナは「なんだか大変そう……」と他人事のようにつぶやくばかりだった。

---

そんな一幕があったあと、ユナはこの魔法都市を一通り見て回った。  
ギルドはもちろん、研究施設や魔導工房などを訪れ、ついでに妹の情報を探そうとしてみた。  
しかし誰一人、ナナという名の少女を知らないらしい。似た特徴の人物すらいない。

「まあ、ここにもいないかぁ。魔法使いが多いから、妹もここに来てるかと思ったんだけど」

ユナは肩をすくめる。どんなに栄えていても、妹が存在しなければ手がかりは得られない。  
食事や宿屋を堪能してから、翌朝になるとさっさと街を出る準備をした。

「魔法が使えたら便利なのかな……でも、世界を救うとか興味ないし、やっぱりどうでもいいか」

そう言いながら、街の門をくぐる。  
外に出ると、魔法都市の高い城壁が朝日に照らされて煌びやかに光っている。少し名残惜しさはあるが、ユナはのんびり歩を進めた。

「じゃ、次の街へ行こ。なんか別の場所で面白いことあるかもしれないし」

バニー耳がふわりと揺れ、足取りは軽やか。  
一方、街の中では「バニーガールに脱衣魔法を試そうとして自分だけ裸になった青年がいた」と大騒ぎになっているというが、ユナは既にそこにはいない。

こうして魔法研究の盛んな都市は、ユナにとってはやや刺激の強い通過点に過ぎなかった。妹は見つからないが、どこかでまた面白い出会いがあるかもしれない――いつもの気ままな旅は続いていくのだ。
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