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ある夜、あるバーで、未来から来た男
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ある雨の夜、深夜の静かなバーに、その男は現れた。
雨に濡れた長髪。やつれた頬は煤汚れている。眼は血走り、呼吸は荒い。見たこともないロングコートを身に纏ったその男は、カウンターでグラスを磨いている俺に近づき、話し出した。
「マスター、時間がない。俺は未来から来た」
掠れた声に客たちは笑い声をあげたが、俺は直感した。本気だ、と。
男は震える手で胸元から銃を取り出し、その銃口を順に客たちに向けた。
「今日この時間、このバーにいる誰かが、人類を破滅させる。私は止めねばならない」
その瞬間、その場の空気が張り詰めた。誰もが固まる中、俺はふと気づいた。
その男の奇妙なコート。その裾にこびりついているのは泥じゃない。灰だ。焼けた街の灰。
「待てよ」俺は声を上げた。
「じゃあ、あんたはどうなんだ?未来から来たあんた自身は」
男は答えない。
その瞳の奥で、影のようなものがうごめいた。
そして、その影が瞳を覆い、黒い光を放った。
次の瞬間、その男は銃口を自らの口に押し込み、引き金を引いた。
くぐもった轟音が響き、男は崩れ落ちた。
床に倒れたその男の表情は、かすかに笑っていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
夜が明け、警察が帰ったあと、俺はカウンターの下に奇妙な物体を見つけた。
それは、小さなサイコロ型で、虹色の光を淡く放っていた。
俺はそれをポケットにしまい、口笛を吹きながら、店の片付けを始めた。
【了】
雨に濡れた長髪。やつれた頬は煤汚れている。眼は血走り、呼吸は荒い。見たこともないロングコートを身に纏ったその男は、カウンターでグラスを磨いている俺に近づき、話し出した。
「マスター、時間がない。俺は未来から来た」
掠れた声に客たちは笑い声をあげたが、俺は直感した。本気だ、と。
男は震える手で胸元から銃を取り出し、その銃口を順に客たちに向けた。
「今日この時間、このバーにいる誰かが、人類を破滅させる。私は止めねばならない」
その瞬間、その場の空気が張り詰めた。誰もが固まる中、俺はふと気づいた。
その男の奇妙なコート。その裾にこびりついているのは泥じゃない。灰だ。焼けた街の灰。
「待てよ」俺は声を上げた。
「じゃあ、あんたはどうなんだ?未来から来たあんた自身は」
男は答えない。
その瞳の奥で、影のようなものがうごめいた。
そして、その影が瞳を覆い、黒い光を放った。
次の瞬間、その男は銃口を自らの口に押し込み、引き金を引いた。
くぐもった轟音が響き、男は崩れ落ちた。
床に倒れたその男の表情は、かすかに笑っていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
夜が明け、警察が帰ったあと、俺はカウンターの下に奇妙な物体を見つけた。
それは、小さなサイコロ型で、虹色の光を淡く放っていた。
俺はそれをポケットにしまい、口笛を吹きながら、店の片付けを始めた。
【了】
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