【完結】お世話になりました

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33.ひと息

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「二人とも爆睡だナ……」

 身体を寄せ合って床で眠ってしまっている二人を覗き込みながら、ナーチは困惑と安堵を混ぜたような声で呟いた。
 シオンも同じように覗き込みながら、

「何にせよ、話が付いたのならよかった」

「こうなるって予測してたのナ?」

「いや、特には考えていなかったが…そもそも彼がそう早く目を覚ますとも思っていなかった。でなければ二人になんかしない、危ういからな」

「なんだよ! ノープランだったのナ!?」

「僕に人付き合いのアレコレを問うのか? やめてくれ、僕も苦手なんだ」

「大変だナ…ここ癖ありの人間しかいないナ……」

「まあ、リリも彼に何か思うところがあるのだとは見ていてわかったからな。心底嫌っているだけならば直ぐに追い返していたが、それで彼女の心の問題が解決するわけでもなし、蓋を開ければ執着しているのはお互い様のようだ。荒療治になってしまったかもしれないが、リリにとってもいい兆しになっただろう」

 彼女に触れないくらいの辺りで漂う執拗なほどの加護をぺっぺっと手で払ってからシオンはリリを抱き上げ、別室のベッドへと運んだ。
 魔力ある者にしか見えないものだが、リリの周りには付かず離れずアロイスの守護用の魔法が纏わりついている。
 それは息をするようにアロイスから放たれたもので、ほとんど無意識に近いようだった。
 彼が森に現れてすぐにそれを感知したシオンは行動と言葉がチグハグな男を疑問に思ったりした。

 しかしまぁ、アロイスの見えない思いの数々など当然見えないまま。
 彼の歪んだ性格が主立った理由だが、リリの筋金入りの自尊心の低さも相まって、長らく対話というものができていなかったのだろう。

 シオンはリリの寝顔を眺め、少し憑き物が取れたようだと思った。
 アロイスを持ち上げるのは一度目で懲り懲りなため、ブランケットを掛ける程度で留まる。

「君の苦労も報われるかな」

「だといいナ。ボクはボクで、アロイスにはまぁまぁ恩があるのナ。魔力提供もあるし、健やかでいてくれるほどボクも得できるナ」

「ただ友人が心配なだけだと言えばいい」

「友人の色恋沙汰ほどめんど臭い話もないナー!」

「それはそうだな」

 クスクスと笑われているとも梅雨知らず、アロイスもリリも、よほど気が抜けたのか長らくの間静かに寝入っていた。
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