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リップサービス【近下視点】
思いがけない誕生日
しおりを挟む誕生日当日……
『近下ごめん!友達がサプライズで押しかけてきたから今日待ち合わせ時間遅らせて。あとでまた連絡する!』
近下の元に友人がサプライズでお祝いにきたらしい。
(そ、そんなぁ……)
高垣との時間が減ったことや計画してたお祝いプランが全部できないかもしれないことに悲しくなった。
けど次は「高垣も本当は俺とじゃなくて友達と過ごしたいかも、だっていつもそうだったし……」という不安が襲ってきた。
(今日は高垣の誕生日だから高垣が満たされる方を選んでほしい)
『せっかく友達来てくれたなら、そっちで楽しんで!俺はお祝いするのいつでもいいから。』
高垣にメッセージを送った。
「…………」
(高垣と誕生日過ごしたかったよぉぉぉぉ!!!!)
俺は自室のベッドでバタバタ暴れて、泣いて、二度寝した。
ブーッ……ブーッ……
スマホが鳴ってることに気づいた。
(え?!ヤバッ)
「もしもし……!!」
『近下、やっと出た……』
「え……」
『近下、今家にいる?』
電話の相手は高垣だった。
「い、いる!!」
『俺、今近下ん家の前にいる。』
「え?!」
窓から外を見ると高垣が手を振っていた。
(うそ……マジで?!?!)
高垣がいる……。
(お、俺を選んでくれたんだ……)
俺はプレゼントを掴んで部屋を飛び出した。
「高垣……!!」
「近下、ごめん!」
高垣が頭を下げた。
「誕生日の主役が気遣うなよ!」
そう言うと高垣が顔を上げてくれた。
「高垣……お誕生日おめでとう。」
「……ありがとう。」
高垣は俺が差し出したプレゼントを嬉しそうな顔で受け取ってくれた。
「わ!メイクラの攻略本じゃん!!」
「高垣この間『ほしい』って言ってたから。」
「うん……うん。」
高垣が不意に俺を抱きしめた。
「たかがき?!」
「ありがとう、近下。」
俺は石にみたいに固まって受け止めることしかできなかった。
「近下」
「……」
高垣が身体を離したと思ったら次は頬に触れてきた。
そして、いつもと違う表情をしてることに気づいた。
(え、な、なに……も……もしかして、)
高垣の顔が近づいてきた。
俺は思いっきり目を閉じて、それを待った。
(う、ついに、高垣とキスする……!!)
「……ッ!!」
(え、え?!キスするまでってこんな長いの?!心臓が持たない……!!)
「ごめん……」
「へ……?」
高垣の囁きに目を開けた。
高垣はさっきまでいた位置に戻っていた。
「近下、今日はごめんね。」
「あ…………うん……」
「また二人で出かけよ。」
「うん……」
高垣がいつもみたいに笑ってくれてるのに、俺の心はここに在らずだった。
(高垣、キスやめちゃった……)
(高垣、俺とキスしたくなかったんだ……)
笑顔の高垣を見送って部屋に戻った。
一人っきりになった瞬間ボロボロ涙が溢れた。
俺はその日の内に高垣にメッセージを送った。
『高垣、俺たち恋人やめよう。普通のクラスメイトに戻ろう。』
自分だけ恋愛してて優しい高垣が付き合ってくれてたんだ。
高垣に対してどんどん期待が大きくなっていた。
自分は高垣に理想を押し付けてたのかも。
さっきのメッセージ既読がついたのに返事が来ない。
俺は全然眠れなかった。
すると翌日、高垣から返信が届いた。
『近下がそうしたいならそうする。今までごめんね近下。』
「……」
(別れたくないって言ってくれないんだ……)
自分から別れを切り出したのに面倒くさいこと思った自分にさらに落ち込んだ。
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