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続•リップサービス【近下視点】
天然人たらし高垣
しおりを挟む「今日なんか元気ない?」
放課後、高垣と並んで歩いてると顔を覗きこんでそう聞かれた。
「!!別に……普通だよ。」
「ねぇ、何かあるなら話してよ。」
「……」
(高垣は束縛されるのもするのも嫌いって言ってたから、ヤキモチ妬いてるなんて言いづらい……)
「昨日、ゲームやってたせいで寝不足なんだよ。」
「……」
「なに?じっと見て……」
「近下ぁ……」
高垣が眉を下げて情けない声を出した。
「俺、鈍感だからちゃんと思ってること話してよ。また近下にフラれるとか嫌だからな!」
「フラないって!!」
「じゃあなんで俺に隠し事するの?」
(高垣が不安そうにしてる……嫌われたくない……どうしよう……)
高垣が不安になってるところに宇佐見くんっていう癒しの存在が現れて俺なんか用済みになるかもしれない……。
(ていうか、そもそも高垣って俺のどこが好きなの?!)
「高垣って俺のどこが好きなの……?」
「え、それ悩んでたの?」
「え……いや……まぁそんな感じ。」
「どこが好きって……んー……」
(めちゃくちゃ悩んでる……やっぱりないのかな……)
「可愛いところ。」
「は?」
「可愛いところが好き。」
「俺の話だよな??」
「そうだよ。近下可愛いじゃん。」
「可愛くないだろ?!」
「近下、俺のこと好きで顔真っ赤になったり、幸せそうにしたり、すげぇ可愛いじゃん!」
「うるさい……!!」
「ほら、赤くなってる!」
「うるさい!!」
高垣から不安そうな表情が消えて、ほっとした。
(ちゃんと俺のこと好きでいてくれてる……ネガティブになるのやめなきゃ。)
翌日、教室から体育する高垣の様子を見ていた。
また高垣が宇佐見くんと楽しそうに話す光景を目にした。
宇佐見くんは高垣と喋ってる時幸せそうな表情を浮かべていた。
高垣が笑うと恥ずかしそうな表情をしている。
(俺より断然可愛いじゃん……)
(いや、だって俺普通のモッサリした地味な男だし……高垣は何をどう見て俺を可愛いって言ってんだ?)
(宇佐見くんの方が「可愛い」って言葉に相応しいよ……)
「……」
(高垣が俺より宇佐見くんの方が可愛いって気づいたらどうしよう……宇佐見くんのこと好きになっちゃったら……嫌だな……)
俺は高垣に微妙な態度取り続けるより素直に話そうと思った。
だから、放課後二人で教室に残って勉強してる最中意を決して話題に出してみた。
「高垣、最近隣の席の子とすごく仲良くしてるんでしょ……?」
「うん、いい子で話しやすいよ。」
「……俺、ちょっと不安なんだけど。」
「何が?」
高垣は俺が何を考えてるか全くわからないみたいで、きょとんとした顔をした。
「俺、高垣が宇佐見くんのこと好きにならないか不安なんだけど……」
俺がそう伝えると、高垣が口に手をやってうつ向いた。
「高垣?」
「近下ヤキモチ妬いてくれてるの?」
顔を上げた高垣はちょっと赤くなっていて嬉しそうな表情を浮かべていた。
「え、いや別に、ヤキモチっていうか、ちょっと気になってるだけだから!!」
「ヤキモチじゃん!」
「違う……!」
「じゃあ俺のこと好きじゃないの?」
高垣がわざと悲しそうな顔してきた。
(こいつぅ……)
でも、高垣を不安にさせたくなくて本当の気持ち伝えようって思ったから、意地を張るのは違うって気づいて観念して素直に話すことにした。
「……ヤキモチ妬いてるよ。」
「ふふっ嬉しい。」
「喜ぶなよ……俺をこれ以上不安にさせるなよ。」
「俺が近下をふることなんか絶対ないよ。」
「わかんないだろ、そんなの……俺だって……高垣のことふるとか想像してなかったし……」
高垣が本当にシュンとした顔をした。
だからちょっとおろおろしてると不意に高垣に抱き締められた。
「俺、近下のことめちゃくちゃ好きだよ。別れるの嫌だ。」
「……」
「近下も言ってよ、好きって。」
「……わかるだろ。」
「わかってるけど、言ってほしい。」
「……高垣、好きだよ……。」
高垣に気持ちを伝えると、高垣の抱きしめる力が強まった。
(素直に話してよかった……)
自分の不安も解消できたし、高垣も不安そうな表情も消えていた。
その日は家に帰ってからも高垣の抱きしめてくれた感触や香りが記憶の中に残っていた。
思い出す度に一人でもだえた。
(俺たちめちゃくちゃ恋人っぽくなったなぁ……)
(ちょっと前まで高垣は俺のこと友達と思ってたし、俺の片想いって感じだったのにさ……)
(高垣もちゃんと俺を好きでいてくれてる)
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