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ドラゴニアへ
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ドラゴニアへの予定が早まった。明日からだ。あまりにも早すぎる。
アベーラさんが言うにはなにかの手違いで面倒が起こりそうだから。との事だ。まあ仕方ないけどさ。
昨日はずっと『時戻し』を行い復元をしていたので何もわからない。今回は丸一日ではなく16時間ほどで終わった。成長しているということなのだろうか。
絵の題名は『栄華』。
『解放』と同じ様にあの一文は絵の一部として組み込まれていた。
老人が刀を立たせながら柄頭という柄の先端の部分に頭を気だるそうに載せ玉座に座っている絵だ。
その眼光は絵だが赤く光輝き、剣呑な雰囲気が立ち込めている。
そして、その玉座の下の方にスルスルっと竜の尾のようなものがある。
光輝く眼。竜のような尾。
この老人は『竜人』なのだろう。
竜人とは『氾濫戦争』時代に老い、闘えぬと諦めていた老いた奴隷達の最後の反抗で生まれた種族だ。
『三方の長征』時に東方に行った500人の老人が龍神と取引をし、龍神を末裔まで信仰する代わりに竜の力を授けた。と言われている。
見た目的には人とは大差ないが、眼はトカゲのように虹彩が伸び、鋭くなる。
首から下にはびっしり鱗が生えているらしい。
巨大な尾も生えており体感のバランスも取れると聞いたことがある。
その数は少なく、全部で約2,000人もいないと言われている。
だがその一番の特徴は戦闘力であろう。龍の加護を受けた竜人はほかの種族をよりも遥かに身体能力が高い。
一人で戦術兵器となるほどの能力を有している。
翼がある竜人は縦横無尽に空から奇襲ができるし、尾がある竜人は3本目の脚で体幹を操り通常の生物では行えない体動も行える。
竜人は火炎袋という特殊な器官があるらしく火炎も吐ける。というとんでもない種族だ。
更に、別の種族と交配しても必ず竜人が生まれるというおまけ付きだ。
こんなに強いなら竜人が世界を取っていると思うのだが、そうではない。竜人族は龍神の信仰者であり、その強さは龍信仰の地『ドラゴニア』の防衛に注がれる。
『ドラゴニア』の外に出ることもなく300年という長い一生を終えるのだ。
なので『竜人』は歴史の表舞台に出てくるのはあまりない。この『栄華』に描かれている竜人を特定するのは容易いと思う。
俺が知っている竜人の英雄は『氾濫戦争』時に東方司令官として活躍した。赤竜『フォローザ』。
第二紀時の『チャブシの乱』鎮圧に出た『十字隊』の一人である輝く息の『ズイセツ』。
第四紀の『蛮国動乱』時に東の大陸から来襲してきた蛮人どもを1人で1,000人倒したといわれる。爆裂『サイカ』。の三人だけだ。
と、言うことは俺の中での推察ではこの絵に描かれているのは『フォローザ』と思う。
『フォローザ』は『氾濫戦争』時に東方司令官として活躍し『奴隷連邦軍団長』となる。
第二紀1年の『奴隷連邦崩壊』後は臣下たちに祭り上げられ東方にドラゴニアを首都とする『フォーリア王国』を建国。
同紀269年に『フォーリア王国』が全世界に『統一宣言』をし、第二の覇権国である『統一帝国』を建国するに至った。
フォローザは最初の竜人の一人であり、竜の血を色濃く残していたので寿命がほかの竜人よりも長く、600年ほど生き、初代統一帝国皇帝としてその生涯を終えた。
という感じだ。
絵画で描かれる『フォローザ』は老人ではなく初老を迎えたくらいのおじさん。という感じで描かれる。
老人の姿では初めてだ。
この絵はもしかして『統一帝国皇帝』になった晩年の『フォローザ』を描いたのかもしれない。
疲れはまだとれないがあと一日時間がある。なのでアリシアとまた観光に出かけた。理由はアルバスと同じで刺激を与えるためだ。
アベーラさんとベルハルザも誘ったのだが、あの二人は個人の用事で行かないらしい。
珍しくベルハルザは鎧を脱いでいた。恥ずかしそうだった。
ドラゴニアへの準備は終わっているのに・…謎だ。
まあ、いいか。
ヴェネクトは協商同盟創立時からいるメンバーの一人の『メディア』家が所有している都市だ。大小さまざまな島から構成されている都市で交通は基本小舟で行われる。
レンガ造りの家が多く『赤い都』とも評される美しい都市だ。
当主であるメディア家は芸術至上主義を宣言している家で様々な教会や宮殿に、世界各地の芸術品を飾り、無償で市民に鑑賞させている。勿論警備は凄く厳重で警備隊も王国、帝国直属の騎士たちが行っているという。
それもあってか様々な国籍、人種の人々が行きかっており、芸術的なヴェネクトには様々な芸術家がいる。
アリシアへのいい刺激となってくれるだろう。
ということで観光だ。
アルバスの建築を参考にしてできた『アル・メディア大聖堂群』、芸術家がいたるところで絵を描いている『アル・メディア広場』、ヴェネクトの街のど真ん中にある大運河『メディチ・ルーツ大運河』そして大陸一の大きさを誇る『メディア大灯台』。
観光地は一日で回ることはできなかったが主な所は回れたので良しとしよう。
正直入館料とかは払わなかったのだが、アリシアがメディア広場で好きな絵を片っ端から買ったので俺の財布は空だ。
みんなアマチュアだったのであまり高くなかったことは唯一の救いだ。
沢山絵画を買ってくれたおかげといい、過去のミノタウロスの絵ももらった。中々古い絵でアリシアはこれを一番気に入っていた。
なんか悲しい気分だ。
そのミノタウロスの絵画。題名は『雄大』
よく見るとこれにも文字が書いていた。これについてくれた芸術家の人に尋ねてみるとこの絵画の形式は『カルテリーノ』と言うらしく、第二紀から第三紀までに芸術家の間で流行った絵画技術らしい。
書いてある文言は『人造、不純。そうであるがそうではない。彼らは美しすぎた。』
と書いてある。人造というのはミノタウロス、ケンタウロス種族はアポーマーが奴隷と牛、馬を実験で交配させてできた産物だからかもしれない。
この作者は鳴かず飛ばずだったらしく有名ではないが技術的には素晴らしいものがあって一部には人気とのことだ。
そんなものをもらっていいのかとは思ったのだが、いいものは全部もらっとけという商人の心得があるのでありがたく受け取った。
と、いうことでドラゴニアへの旅路が始まる。絵画の模写は馬車内で行うらしい。
グラグラ揺れそうなものであるが大丈夫だろうか。
出発日当日。馬車内に様々物品が入っていくのをアベーラさんと見ていると女性から声をかけられた。
「今回ドラゴニアへの旅を護衛させていただきます。士爵アルトマンが娘。レーア・アルトマンと申します。若輩ではありますが今回の警護の代表を勤め上げてみせます。よろしくお願いいたします。」
凛々しく歩いてくる。
彼女は誰が見ても美人だ。背が高いが細い。通気性の良いラメラーアーマーを着ており、鍛えているのが分かる。
兜をしないのか髪は長くブラウンだ。
ヴェネクトでは王国・帝国の騎士を契約で借り、警備に当たらせている。金の力は凄いのだ。
前に、なぜ騎士が護衛などやるのかとアベーラさんに聞いてみたら、現場で商人とのコネ稼ぎと労働の経験。そして常識を知るという3つの思惑がとのこと。
以外にも、金だけじゃない理由があるということだ。
「はい。レーアさんですね。よろしくお願いします。」
挨拶も終え、3人でルートの確認も行い、馬車に乗り込む。
ヴェネクトからドラゴニアまでは平原と少しの丘陵しかなく交易しやすい土地だ。地図にものるほどの大きさの川はあるが大河という程ではない。
野生のモンスターも出てくることは少ないのでいつも道理で大丈夫でだろう。
俺らは乗り込んだのだが、レーアさんだけは乗り込まない。どうしたのかと聞くと「自分の目ですべての馬車を一度見ておきたいです。襲撃されたときにすぐに何を盗まれたか分かるようにですね。」
と、緑色のエメラルドグリーンというのだろうか、大きな美しい眼で、まっすぐに言われた。
凛々しい女性という印象と共に真面目な人ということも分かった。
そこまで考えてくれるなら見せない理由はない。アベーラさんに許可を取り、レーアさんに許可を出して、レーアさんは部下であろう人と一緒に馬車を確認していく。
「あー!」
レーアさんが叫んだ。そこの馬車はベルハルザとアリシアが乗っている馬車だが…。
「あなた!不審者の!」
見てみると馬車に剣を向けるレーアさんと外に出てくるベルハルザの姿が。
ふとアベーラさんを見てみると顔を手で覆い、「あの子だったのか~……。」と何か後悔している様子だ。
アリシアを見てみると目を輝かせながら『栄華』を模写しようとペンで何かを計っている。
いやどういう状況?
アベーラさんが言うにはなにかの手違いで面倒が起こりそうだから。との事だ。まあ仕方ないけどさ。
昨日はずっと『時戻し』を行い復元をしていたので何もわからない。今回は丸一日ではなく16時間ほどで終わった。成長しているということなのだろうか。
絵の題名は『栄華』。
『解放』と同じ様にあの一文は絵の一部として組み込まれていた。
老人が刀を立たせながら柄頭という柄の先端の部分に頭を気だるそうに載せ玉座に座っている絵だ。
その眼光は絵だが赤く光輝き、剣呑な雰囲気が立ち込めている。
そして、その玉座の下の方にスルスルっと竜の尾のようなものがある。
光輝く眼。竜のような尾。
この老人は『竜人』なのだろう。
竜人とは『氾濫戦争』時代に老い、闘えぬと諦めていた老いた奴隷達の最後の反抗で生まれた種族だ。
『三方の長征』時に東方に行った500人の老人が龍神と取引をし、龍神を末裔まで信仰する代わりに竜の力を授けた。と言われている。
見た目的には人とは大差ないが、眼はトカゲのように虹彩が伸び、鋭くなる。
首から下にはびっしり鱗が生えているらしい。
巨大な尾も生えており体感のバランスも取れると聞いたことがある。
その数は少なく、全部で約2,000人もいないと言われている。
だがその一番の特徴は戦闘力であろう。龍の加護を受けた竜人はほかの種族をよりも遥かに身体能力が高い。
一人で戦術兵器となるほどの能力を有している。
翼がある竜人は縦横無尽に空から奇襲ができるし、尾がある竜人は3本目の脚で体幹を操り通常の生物では行えない体動も行える。
竜人は火炎袋という特殊な器官があるらしく火炎も吐ける。というとんでもない種族だ。
更に、別の種族と交配しても必ず竜人が生まれるというおまけ付きだ。
こんなに強いなら竜人が世界を取っていると思うのだが、そうではない。竜人族は龍神の信仰者であり、その強さは龍信仰の地『ドラゴニア』の防衛に注がれる。
『ドラゴニア』の外に出ることもなく300年という長い一生を終えるのだ。
なので『竜人』は歴史の表舞台に出てくるのはあまりない。この『栄華』に描かれている竜人を特定するのは容易いと思う。
俺が知っている竜人の英雄は『氾濫戦争』時に東方司令官として活躍した。赤竜『フォローザ』。
第二紀時の『チャブシの乱』鎮圧に出た『十字隊』の一人である輝く息の『ズイセツ』。
第四紀の『蛮国動乱』時に東の大陸から来襲してきた蛮人どもを1人で1,000人倒したといわれる。爆裂『サイカ』。の三人だけだ。
と、言うことは俺の中での推察ではこの絵に描かれているのは『フォローザ』と思う。
『フォローザ』は『氾濫戦争』時に東方司令官として活躍し『奴隷連邦軍団長』となる。
第二紀1年の『奴隷連邦崩壊』後は臣下たちに祭り上げられ東方にドラゴニアを首都とする『フォーリア王国』を建国。
同紀269年に『フォーリア王国』が全世界に『統一宣言』をし、第二の覇権国である『統一帝国』を建国するに至った。
フォローザは最初の竜人の一人であり、竜の血を色濃く残していたので寿命がほかの竜人よりも長く、600年ほど生き、初代統一帝国皇帝としてその生涯を終えた。
という感じだ。
絵画で描かれる『フォローザ』は老人ではなく初老を迎えたくらいのおじさん。という感じで描かれる。
老人の姿では初めてだ。
この絵はもしかして『統一帝国皇帝』になった晩年の『フォローザ』を描いたのかもしれない。
疲れはまだとれないがあと一日時間がある。なのでアリシアとまた観光に出かけた。理由はアルバスと同じで刺激を与えるためだ。
アベーラさんとベルハルザも誘ったのだが、あの二人は個人の用事で行かないらしい。
珍しくベルハルザは鎧を脱いでいた。恥ずかしそうだった。
ドラゴニアへの準備は終わっているのに・…謎だ。
まあ、いいか。
ヴェネクトは協商同盟創立時からいるメンバーの一人の『メディア』家が所有している都市だ。大小さまざまな島から構成されている都市で交通は基本小舟で行われる。
レンガ造りの家が多く『赤い都』とも評される美しい都市だ。
当主であるメディア家は芸術至上主義を宣言している家で様々な教会や宮殿に、世界各地の芸術品を飾り、無償で市民に鑑賞させている。勿論警備は凄く厳重で警備隊も王国、帝国直属の騎士たちが行っているという。
それもあってか様々な国籍、人種の人々が行きかっており、芸術的なヴェネクトには様々な芸術家がいる。
アリシアへのいい刺激となってくれるだろう。
ということで観光だ。
アルバスの建築を参考にしてできた『アル・メディア大聖堂群』、芸術家がいたるところで絵を描いている『アル・メディア広場』、ヴェネクトの街のど真ん中にある大運河『メディチ・ルーツ大運河』そして大陸一の大きさを誇る『メディア大灯台』。
観光地は一日で回ることはできなかったが主な所は回れたので良しとしよう。
正直入館料とかは払わなかったのだが、アリシアがメディア広場で好きな絵を片っ端から買ったので俺の財布は空だ。
みんなアマチュアだったのであまり高くなかったことは唯一の救いだ。
沢山絵画を買ってくれたおかげといい、過去のミノタウロスの絵ももらった。中々古い絵でアリシアはこれを一番気に入っていた。
なんか悲しい気分だ。
そのミノタウロスの絵画。題名は『雄大』
よく見るとこれにも文字が書いていた。これについてくれた芸術家の人に尋ねてみるとこの絵画の形式は『カルテリーノ』と言うらしく、第二紀から第三紀までに芸術家の間で流行った絵画技術らしい。
書いてある文言は『人造、不純。そうであるがそうではない。彼らは美しすぎた。』
と書いてある。人造というのはミノタウロス、ケンタウロス種族はアポーマーが奴隷と牛、馬を実験で交配させてできた産物だからかもしれない。
この作者は鳴かず飛ばずだったらしく有名ではないが技術的には素晴らしいものがあって一部には人気とのことだ。
そんなものをもらっていいのかとは思ったのだが、いいものは全部もらっとけという商人の心得があるのでありがたく受け取った。
と、いうことでドラゴニアへの旅路が始まる。絵画の模写は馬車内で行うらしい。
グラグラ揺れそうなものであるが大丈夫だろうか。
出発日当日。馬車内に様々物品が入っていくのをアベーラさんと見ていると女性から声をかけられた。
「今回ドラゴニアへの旅を護衛させていただきます。士爵アルトマンが娘。レーア・アルトマンと申します。若輩ではありますが今回の警護の代表を勤め上げてみせます。よろしくお願いいたします。」
凛々しく歩いてくる。
彼女は誰が見ても美人だ。背が高いが細い。通気性の良いラメラーアーマーを着ており、鍛えているのが分かる。
兜をしないのか髪は長くブラウンだ。
ヴェネクトでは王国・帝国の騎士を契約で借り、警備に当たらせている。金の力は凄いのだ。
前に、なぜ騎士が護衛などやるのかとアベーラさんに聞いてみたら、現場で商人とのコネ稼ぎと労働の経験。そして常識を知るという3つの思惑がとのこと。
以外にも、金だけじゃない理由があるということだ。
「はい。レーアさんですね。よろしくお願いします。」
挨拶も終え、3人でルートの確認も行い、馬車に乗り込む。
ヴェネクトからドラゴニアまでは平原と少しの丘陵しかなく交易しやすい土地だ。地図にものるほどの大きさの川はあるが大河という程ではない。
野生のモンスターも出てくることは少ないのでいつも道理で大丈夫でだろう。
俺らは乗り込んだのだが、レーアさんだけは乗り込まない。どうしたのかと聞くと「自分の目ですべての馬車を一度見ておきたいです。襲撃されたときにすぐに何を盗まれたか分かるようにですね。」
と、緑色のエメラルドグリーンというのだろうか、大きな美しい眼で、まっすぐに言われた。
凛々しい女性という印象と共に真面目な人ということも分かった。
そこまで考えてくれるなら見せない理由はない。アベーラさんに許可を取り、レーアさんに許可を出して、レーアさんは部下であろう人と一緒に馬車を確認していく。
「あー!」
レーアさんが叫んだ。そこの馬車はベルハルザとアリシアが乗っている馬車だが…。
「あなた!不審者の!」
見てみると馬車に剣を向けるレーアさんと外に出てくるベルハルザの姿が。
ふとアベーラさんを見てみると顔を手で覆い、「あの子だったのか~……。」と何か後悔している様子だ。
アリシアを見てみると目を輝かせながら『栄華』を模写しようとペンで何かを計っている。
いやどういう状況?
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