好きな人がいまして

幸輝

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図書室

恋愛物

 少し低めの声の咳払いが目の前で聞こえた。
 あまりにパソコンに集中していたせいで気付かなかったが、目の前にはイケメンの彼が本を持って待機していた。
「すみません、これ、借りたいんですけど」
 彼は先程まで試し読みをしていたものをカウンターにコードを見せるためか、はたまた表紙を隠すためか、裏返しに二冊置く。
「あ、はいはい、これとこれね」
 本をスキャンすると、その本の情報が出る。本のタイトルもジャンルもわかるのだ。
 俺は思わず、ぼそっと口から溢れてしまった。
「これも、どっちも恋愛物だな……」
「何か言いましたか?」
 俺の小声にも、間髪いれずに反応する彼。
 俺の今までの行動に、彼は若干の苛立ちを感じているようだ。
 確かに立場を変えればそれもそうだろう。
 入室してからジーッと見られ続け、仕事もせずに監視をし、いざカウンターに立っても反応されず、挙げ句の果てに借りようとした本に呆れたような反応をされては、腹も立つだろう。
 俺は平謝りをして、こう続けた。
「ごめんごめん!……あー、君ってさ、もしかして、恋とかしてる?」
 彼は俺のいきなりの問いに、はぁ!?、と半ギレな様子の声をあげる。
「もしかして、今までパソコン見てたのって、人の借りた本とか見てたんですか!? 最低ですね!!」
 図星をつかれて俺は困った。
 しかし、彼の方もまた図星だったのだろう、声が上ずっていた。
「あ……すみません、もうしません。この二冊どうぞ」
「……ありがとうございます」
 俺は処理した本を裏返したまま彼に渡す。
 彼はムッとした表情のまま、カバンに本を入れた。
「もし片想い中とかなら、俺が色々と……」
「失礼しました」
 そのまま俺に聞く耳を持たずに彼は退室してしまった。
 しょうがないか、と、俺は頭をぽりぽりと掻いた。
 梅雨のじめじめとした時期、図書室の中も若干湿度が高い気がした。
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