好きな人がいまして

幸輝

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決意

五分後

 俺が彼と喋った日から、大体二週間程経ったある日のことであった。今日も彼がやってきた。
 いつもなら、本を返して新しい本を借りるために、室内をうろうろするのが彼のルーティーン。
 しかし、今日は違った。借りた本を返して、まっすぐ本の整理をしている所に来たのだ。
「あ、いたいた」
「お? どうした?」
「俺、告白しようと思ってるんです、今日」
 いきなりの発言に、整理していた本を落としそうになり「今日!?」と変な大声を出した。
「えぇ、今から」
「ようやく自信がついたのか!?」
「まぁ、ちょっとだけ……」彼は背を向けて言う「とりあえず、あなたのアドバイスもあながちハズレでもなかったし。早くしないと相手もどこかに行ってしまう気がして」
 一拍おいて、もう一度こちらに向き直って頭を下げる彼。
「本意ではないけど、お礼を言います、ありがとうございました」
 俺は面食らった。すぐに言葉が出てこなかったが、その態度に、いやいやいや、と否定した。
「それは告白に成功した人が言うやつでしょ、まだ早いって」
 彼はお辞儀から体を直し、次は彼が、いや、と否定するのであった。
「答えは分かってるんです……で、ここまで話しにのってもらったあなたに、できれば俺が告白するその場面の見届け人になってもらいたくて」
 自分から首を突っ込んでしまった出前、俺にはないようなものである。
 俺は生唾をのみ込み、一つ頷いた。
「後五分後くらいに、その好きな人が来ます」
「五分後!?」
 いきなりすぎて、俺は驚きを隠せなかった。気持ち的には、突然娘の彼氏に会ってくれと言われる父親のそれだ。
「あなたは普通に図書室の先生として、パソコンいじったり本の整理とかしてて下さい」
「わ、わかった。頑張れよ!」
 何故か俺の方が心臓ばくばくである。
 彼は穏やかな表情で俺を見て口を開く。
「告白するのに意味があると思って。お互いに。こっそり耳を傾けてて下さい。でも、驚いても、声をあげないで下さいよ?」
「分かってるって……」
 その彼の表情が、あまりにも儚げで、俺は見ていられなくなり、カウンターに戻った。
 その直後であった。
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