好きな人がいまして

幸輝

文字の大きさ
6 / 11
決意

予想外

「失礼しまーす! いやー、一般開放されてたとは知らなかったなぁ!」
「え!? お……っ!」
 メガネをかけた小太りの中年おじさんが勢いよく図書室に入ってきたのだ。
 髪はモジャモジャ、無精髭の黒淵メガネをかけている。
 イケメンの彼とは逆の人物の登場に、俺は思わず彼の言いつけを破って声を出してしまった。
「んー? 図書室の先生? どうしました?」
 おじさんは、大声を出した俺に問いかけてきた。歩いてきただけだろうに、息を切らしている。
「図書室ではお静かに……」
「あ、ごめんなさーい」おじさんは辺りを見回す「こっちに先生位の男の子来てませんかー?」
「そ、そちらの窓際の席にいる人かと……」
 驚きを未だに隠し切れていない俺は、小声で席を指差す。
 まじか、好きな人って男だったのか、と、その指先は動揺で震えていた。
 おじさんは彼を見つけたようで、ありがとうございます、とお礼を言った。
「おーい、ショウター」
 彼に向かって手を振りながらおじさんは歩みを進める。
 結果は分かってる、というのは、そういうことだったのか。
 年齢だけの問題じゃない、というのは、そういうことだったのか。
 俺は、ようやく全てを理解した。
 そして、彼の言っていた『告白するのに意味がある、お互いに』というのは、好きな人への告白と、俺に向かって、好きな人は男です、という告白の二重の意味があったのではないか、と、深読みする程に頭をフル回転させている俺。
 今の時代は男も女も関係なく恋をするが、俺は勝手に彼の好きな人を女性だと勘違いしていた。
 自分の周りでそういう人を見ていなかったから、俺は理解できていなかった。
 確かに答えは、ノーの確率が高いかもしれないが、あのおじさんが理解者で成功する、ということもある。
 俺は祈った。カウンター越しに祈った。
 おじさんは彼との合流を果たし、彼の前の席に「どっこいしょ」と、掛け声をかけて座るのであった。
 あまりにも不釣り合いな絵面である。
 どうして彼は、あんな中年デブおじさんを好きになったんだ?、と、他人の好きな人を見て、疑問しか俺にはなく、これから始まる告白シーンを見届けることに俺はした。
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

蝋燭

悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。 それは、祝福の鐘だ。 今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。 カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。 彼女は勇者の恋人だった。 あの日、勇者が記憶を失うまでは……

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。