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好きな場所
図書室
俺はカウンター彼の元へ向かうと、俯いていて、机にまたポタポタと雫が数滴落ちた。
ポリポリと頬を掻いて、俺は彼に声をかける。
「……行っちゃったな」
彼は一度頷く。
「ありがとうございました」
「いやいや、びっくりして何回か声を出しちまって、ごめんな?」
「いいんですよ」
彼は涙を袖で拭き取り、俺の顔を見る。その目には涙とは違う光が宿っていた。
「あの、もう一つ頼みがありまして」
その表情には人間味があり、俺は腕を組んでその頼みを聞く。
「見届け人のはまた別にか? 何?」
「これからも、ここに通ってもいいですか?」彼ははにかむ「ここ、好きになりました」
俺はいきなりの申し出に、もちろん、と返事をする。
「ここは公共施設だし、許可なんていらないでしょ」
俺は彼の向かえの席、先程おじさんが座っていた席に座る。心なしか脂っぽく感じた。
「それに、俺の暇潰しになるしな!」
彼は、にっこり笑った。初めて彼の本当の笑顔を見た気がする。
「それは、これからも俺と絡んでくれるんですよね?」
「まぁ、ここまで仲良くなったし、これからも仲良くしていきたいしな!」
「あぁいう人が好きでも?」
あぁいう人、というのは、きっと小太りおじさんのこと指しているのだろう。
「あー、さすがに最初は驚いたけど、人の好きなものを否定はしないし、俺の知らないあの人の一面を見て好きになったんだろうし……」
必死に言葉を選びながら喋る俺に、彼は吹き出した。
「ありがとうございます、それならよかったです」
ストレートヘアの髪を指先でいじりながら、彼はボソッと呟く。
「本当に……好きになれそうです……」
「へ? 何か言った?」
あまりの小声で俺は聞き取れず、彼に聞き返したが、彼は笑顔のまま答える。
「いいえ? なーんにも!」
無邪気に、そう言った。
「えーっと、今更ですが、司書さんの名前は……」
俺は服についている名札を見せてやる。
「ホシだ」
「ホシさんですね、俺は……」
「ショウタだろ? 会話聞いてたら分かったよ」
ショウタは目を細めて優しく笑いかけてくれる。
色々な恋があるけれど、今回それが実らなかっただけ。
でも、今の彼の晴れ渡った表情は、梅雨明けした今日の青空のようだった。
図書室に、夏の強い日差しが差し込んでいた。
ポリポリと頬を掻いて、俺は彼に声をかける。
「……行っちゃったな」
彼は一度頷く。
「ありがとうございました」
「いやいや、びっくりして何回か声を出しちまって、ごめんな?」
「いいんですよ」
彼は涙を袖で拭き取り、俺の顔を見る。その目には涙とは違う光が宿っていた。
「あの、もう一つ頼みがありまして」
その表情には人間味があり、俺は腕を組んでその頼みを聞く。
「見届け人のはまた別にか? 何?」
「これからも、ここに通ってもいいですか?」彼ははにかむ「ここ、好きになりました」
俺はいきなりの申し出に、もちろん、と返事をする。
「ここは公共施設だし、許可なんていらないでしょ」
俺は彼の向かえの席、先程おじさんが座っていた席に座る。心なしか脂っぽく感じた。
「それに、俺の暇潰しになるしな!」
彼は、にっこり笑った。初めて彼の本当の笑顔を見た気がする。
「それは、これからも俺と絡んでくれるんですよね?」
「まぁ、ここまで仲良くなったし、これからも仲良くしていきたいしな!」
「あぁいう人が好きでも?」
あぁいう人、というのは、きっと小太りおじさんのこと指しているのだろう。
「あー、さすがに最初は驚いたけど、人の好きなものを否定はしないし、俺の知らないあの人の一面を見て好きになったんだろうし……」
必死に言葉を選びながら喋る俺に、彼は吹き出した。
「ありがとうございます、それならよかったです」
ストレートヘアの髪を指先でいじりながら、彼はボソッと呟く。
「本当に……好きになれそうです……」
「へ? 何か言った?」
あまりの小声で俺は聞き取れず、彼に聞き返したが、彼は笑顔のまま答える。
「いいえ? なーんにも!」
無邪気に、そう言った。
「えーっと、今更ですが、司書さんの名前は……」
俺は服についている名札を見せてやる。
「ホシだ」
「ホシさんですね、俺は……」
「ショウタだろ? 会話聞いてたら分かったよ」
ショウタは目を細めて優しく笑いかけてくれる。
色々な恋があるけれど、今回それが実らなかっただけ。
でも、今の彼の晴れ渡った表情は、梅雨明けした今日の青空のようだった。
図書室に、夏の強い日差しが差し込んでいた。
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