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クエスト003:核熱刃
しおりを挟む人は生まれながらにして平等ではない。
俺はこの人生をそう思い続けている。
俺の名前は八田蒼也はったそうや。両親からの虐待、近所のガキからの執拗な暴力に対抗するかのようにスキルに目覚めた。
気づいた時には自分が気に食わない奴は全員惨殺。焼け野原となった一帯から俺を引き取る親族はいなかった。だからってわけじゃないがテロリストなら俺という存在を活かせると思っていた。
それすらも昨日奪われたわけだが。この世は理不尽だ、あいつらが直接仲間共殺したわけじゃあないが関係ねえ。
エンジンがかからなかった昨日とは違う。
どいつもこいつも皆殺しにしてやる。
☆ ☆ ☆
「やっぱり追ってきてますね」
「私達を殺す気満々ってわけね、対策はあるの?」
「任せてくださいよ、僕のスキルは朱里さん以上に工夫の使用がありますから」
細かい路地に入る二人。そして二人の走る速さを明らかに超える蒼也が全力で二人を追う。
(それでもさっきよりは遅い。やっぱり一度止まると・・・・遅くなるみたいだな)
「一回会話を入れたのは正解みたいねえ、車のMTみたいなものかしら」
二人とも考える事は同じのようだ。そして翡翠は後ろへ振り返る。
「そらそらそぉら!! 解除!!」
翡翠は手提げから雑誌を取り出し宙へ放り投げた。
その雑誌は家具カタログ。狭い通路を塞ぐかの用にタンスや椅子などがゾロゾロと飛び出した。
「なに翡翠君今の技。ものすごいじゃない!!」
「紙から元に戻す能力の応用ですよ。まあ突破されるでしょうけど」
翡翠の予想通り、もはや石川五ェ門の如く次々に物体に二人は恐怖を覚える。
しかし、一度広い路地へ出て、
「間に合ったわ!! そこが廃墟っていうか誰も使ってない倉庫よ!」
「立ち入り禁止だけど乗り込みますよ!」
二人は倉庫に逃げ込んだ。
「階段を上がりまっ!?」
階段へ駆け込もうとしたその瞬間、階段が真っ二つに斬られる。
「くっ、もう来たのか......!!」
「せいっ!! 『百花繚乱ザ・フォース!!』」
翡翠は再び雑誌を投げつけるが、能力を使う瞬間に雑誌が八つ裂きにされた。
(早すぎる!! まるで攻撃が効かない、隙がないにもほどがあるだろ!!)
蒼也を纏う熱気と共に、まるで狂犬の如く迫る刃に朱里は目をつぶった。
「さて、ここからがスキルの差の見せ所だね」
「!?」
その刃が翡翠達に届くことはなかった。
「貴様、何をした!!」
「いや、僕はなにもしていないよ。君が勝手に転んだだけさ」
蒼也はそう言われ足元を見た。
「これは......足場の表面が紙になっている!?」
「その通り、よっぽど上・が気になったんだねえ」
「ッ!!」
蒼也と朱里はハッとした。車を投げ飛ばしたのも意識を上へ向ける為、全て攻撃ですらなかったのだ。
「まだだッ!!」
「『筋力強化パワード』!!」
「ぐはあっ!!」
翡翠に飛び掛る蒼也に翡翠は拳を喰らわせた。
「遅いね、今の君のエンジンはあの彼のスキルを下回る」
「お前......どこでそのスキルを......」
「回収・・しただけさ。スキルの使い方を誤るような奴にスキルを持つ資格はない」
「貴様......」
翡翠は手を差し出した。
「......何の真似だ」
「まだ遅くはない、真のお前の目的である真の犯人を捕まえるんだ」
「ふざけるな!!」
「ふざけているのはどっちよ!!」
翡翠と蒼也の交渉に朱里が入る。
「ならどうして貴方は逃げ出したの!? 仲間が殺されているのを目の当たりにして......!!」
「勝てるわけがないだろう!! 『奴』は、俺が見切れないほど速く動いていた!! 俺が全力で逃げるしかなかった!!」
蒼也は再び刀を向けた。
「そうだ!! その『全力』を貴様らにぶち当てる!!」
先程までとは比べ物にならないほどの熱気が二人を襲う。
「熱っ、こいつ、いきなりエンジン全開に!?」
「朱里さん、後ろに下がっててください」
「『光陰如流水ザ・シックス』!! 望みどおり打ち倒してやろう、奴を!! しかしその前に貴様達を殺してからだ!!!!」
「なるほど、こいつぁやばそうだ」
決して熱気からくるものだけではない、冷や汗を翡翠は掻いた。
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