落ち葉色に染まって…→戻った色と変わった気持ち

mitokami

文字の大きさ
5 / 11
Contrary 混沌

005

しおりを挟む
 ゾンネとリンクは共にあると言う事できずなを強め、時間を掛けてつがいと成りました。そして、ささえ合い。助け合い。手に入れた相応そうおうな幸せを手にした時間をて、ゾンネの羽の色合いが戻り始めたころ、レヒトが王様に成った事を風のうわさで耳にしました。でも、それは、ゾンネとリンクが思い描き、信じていたモノとは大きく異なった事情をふくむ噂です。

だまって待っていれば転がり込んでくるモノを何故なぜ?レヒトは如何どうしてそんな事を?」とゾンネはおどろきました。
リンクは困惑こんわくし「は?後宮にハーレム?!複数の王妃に側室達だって?モーントをきさきに迎えれたら他は要らないって言ってたから、僕はモーントをあきらめてゆずったのに、レヒトは何をしてるんだ?」と口走ります。
ゾンネはリンクに複雑そうな視線を向け「…ははw必要が無かったのは、婚約者だった私の存在だったって落ちなのかもね…」と自嘲気味じちょうぎみに笑いました。

 その日、ゾンネとリンクは、それぞれの「何故?」「如何して?」といきどおりにさいなまれて、意を決します。
翌日には、移民の街で開いていた店を従業員にまかせ、たがいが残して来た者達の様子を見に…レヒトとモーントに会いに…、自分達が生まれた国の自分達が育った場所へと向かう事にしたのです……。

 その過程かていで、ゾンネとモーントが生まれ幼少期を過ごした場所を通り掛かりました。集落は何時いつの間にか強制的に排除はいじょされ、荒れ果てた荒野に成っていました。
リンクが城を出た後、前の王様がモーントのために、モーントの出自しゅつじを知る者や勝手にモーントの過去をかたる者達を身分問わずに処刑しょけいして回ったそうです。

 それらの情報を仕入れた宿屋に隣接りんせつした食堂にて、ゾンネとリンクは思い出話をしました。
「貴族出身の地主様にいたるまでも、かぁ~…私が婚約者だった時点で、御貴族様から[庶民出身しょみんしゅっしんくせに]って言われるのが通常運転で、せ物は勿論もちろん、所有物をよごされたりこわされたりって言う嫌がらせが普通にひどかったからなぁ~」
「高位貴族は自分ならゆるされるだろう…で、その他の馬鹿な娘達は自分の正義が世界の正義と思い込んで、言ったりやったり平気でするからね……」
「…今更だけど…、私が標的ひょうてきだった頃、モーントは世渡よわた上手じょうずで、何時いつも後から場を取りなす調整役ちょうせいやくこなしてたよね?」
なつかしい話をするね」
「私が出てった後、モーントが標的に成ったと思うんだけど…相手を上手にあしらえてた?」
「…多分、ゾンネが今、想像した通り…モーントは矢面やおもてに立つ事にれてなくて結構けっこう頻繁ひんぱんに、レヒトに泣き付いていたよ…レヒトはたよられたってよろこんでうれしそうにしてたけど…」
リンクは昔を思い出し、遠い目をします。ゾンネの方は、今まで失念していた婚約者を譲った事に寄る弊害へいがいに心を痛ませました。

「…事が発生したのがリンクが城を出た後って事は、レヒトも忙しくてフォローしきれなくなって、モーントも嫌がらせにえきれなくて、どんな結果を生むかを想定そうていする余裕よゆうも無く、後ろだてに成ってくれてた王様に泣き付いちゃったって事なのかもだよね…」
ゾンネの出した結論けつろんにリンクは「そうかもね」と返します。そして、「今更思い出したんだけど…、ぼくが昔、まなばさせられた王弟おうてい教育で習った教訓きょうくんの一つに、調整役を上手うまにない続けた軍師ぐんし参謀さんぼうは、大将たいしょうえるべからずってのがあるんだけど…」と語り始めました。

 ゾンネは話の展開てんかいについて行けず「へぇ~、そうなんだ」と、最初は軽く流す程度で返します。
リンクは神妙しんみょう面持おももちで「調整役でつちかった経験けいけんのデメリットは、上手に調整役を担ってきたって言うプライドと、自らを主体とした客観性きゃっかんせい欠如けつじょ。つまり、自分の方が調整を上手く出来るってプライドが邪魔じゃまして、自分に対する調整役を担ってくれる他者を受け入れる事が出来ず。培ってきた客観性も、身近な相手を客観的に見る能力と、みずからを客観的に見る能力は別物で使い物には成らず。思い込みで判断して、それが必ずと言って良い程、本当に必要な判断を遅らせてしまう結果を導き、後手に回ってしまう。そう言うモノ…らしいんだよね……」と言いました。
「……」
適当に相づちを打っていたゾンネは真顔になり、自分が想定そうていした範囲はんいを超え、モーントに起こったであろう事をようやさっして、自分に認識にんしきの甘さと、自分が城を出た後の為の準備不足で、モーントを苦しめてしまったと言う事を後悔し、顔色を悪くします。

 リンクはゾンネの様子に気付き、自分が余計な事を伝えたかと後悔する事に成りました。そのフォローのつもりで「…王命は絶対的強制力があるから、命令をかさに着て自己顕示欲じこけんじよくを満たしたい貴族が、コレをやらかしたんだと思う。だから、気にするなよ」と言います。

 切り替えの早いゾンネは「ねたんで噂の発信源をになってたヤツは自業自得じごうじとくだけど…、ほとどの庶民しょみんは、あこがれや羨望せんぼう眼差まなざしを向けてシンデレラストーリーを語ってただけだろうにね…」と言いながら窓の外に目をやり、リンクも溜息交じりに「みな諸共もろともまとめて処分されたんだろうね」と言って窓の外に目を向けました。

 ゾンネとリンクは精神的につかれ、新しく出来た集落の宿屋の窓から申し訳なさそうに、遠くにある荒野と成ってしまった場所をながめ、それぞれに溜息を吐き、引き続き情報収集をしながら王都へと向かう事にするのです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】ご期待に、お応えいたします

楽歩
恋愛
王太子妃教育を予定より早く修了した公爵令嬢フェリシアは、残りの学園生活を友人のオリヴィア、ライラと穏やかに過ごせると喜んでいた。ところが、その友人から思いもよらぬ噂を耳にする。 ーー私たちは、学院内で“悪役令嬢”と呼ばれているらしいーー ヒロインをいじめる高慢で意地悪な令嬢。オリヴィアは婚約者に近づく男爵令嬢を、ライラは突然侯爵家に迎えられた庶子の妹を、そしてフェリシアは平民出身の“精霊姫”をそれぞれ思い浮かべる。 小説の筋書きのような、婚約破棄や破滅の結末を思い浮かべながらも、三人は皮肉を交えて笑い合う。 そんな役どころに仕立て上げられていたなんて。しかも、当の“ヒロイン”たちはそれを承知のうえで、あくまで“純真”に振る舞っているというのだから、たちが悪い。 けれど、そう望むのなら――さあ、ご期待にお応えして、見事に演じきって見せますわ。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

処理中です...