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Contrary 混沌
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ゾンネとリンクは共にあると言う事で絆を強め、時間を掛けて番と成りました。そして、支え合い。助け合い。手に入れた相応な幸せを手にした時間を経て、ゾンネの羽の色合いが戻り始めた頃、レヒトが王様に成った事を風の噂で耳にしました。でも、それは、ゾンネとリンクが思い描き、信じていたモノとは大きく異なった事情を含む噂です。
「黙って待っていれば転がり込んでくるモノを何故?レヒトは如何してそんな事を?」とゾンネは驚きました。
リンクは困惑し「は?後宮にハーレム?!複数の王妃に側室達だって?モーントを妃に迎えれたら他は要らないって言ってたから、僕はモーントを諦めて譲ったのに、レヒトは何をしてるんだ?」と口走ります。
ゾンネはリンクに複雑そうな視線を向け「…ははw必要が無かったのは、婚約者だった私の存在だったって落ちなのかもね…」と自嘲気味に笑いました。
その日、ゾンネとリンクは、それぞれの「何故?」「如何して?」と憤りに呵まれて、意を決します。
翌日には、移民の街で開いていた店を従業員に任せ、互いが残して来た者達の様子を見に…レヒトとモーントに会いに…、自分達が生まれた国の自分達が育った場所へと向かう事にしたのです……。
その過程で、ゾンネとモーントが生まれ幼少期を過ごした場所を通り掛かりました。集落は何時の間にか強制的に排除され、荒れ果てた荒野に成っていました。
リンクが城を出た後、前の王様がモーントの為に、モーントの出自を知る者や勝手にモーントの過去を語る者達を身分問わずに処刑して回ったそうです。
それらの情報を仕入れた宿屋に隣接した食堂にて、ゾンネとリンクは思い出話をしました。
「貴族出身の地主様に至るまでも、かぁ~…私が婚約者だった時点で、御貴族様から[庶民出身の癖に]って言われるのが通常運転で、失せ物は勿論、所有物を汚されたり壊されたりって言う嫌がらせが普通に酷かったからなぁ~」
「高位貴族は自分なら許されるだろう…で、その他の馬鹿な娘達は自分の正義が世界の正義と思い込んで、言ったりやったり平気でするからね……」
「…今更だけど…、私が標的だった頃、モーントは世渡り上手で、何時も後から場を取りなす調整役を熟してたよね?」
「懐かしい話をするね」
「私が出てった後、モーントが標的に成ったと思うんだけど…相手を上手にあしらえてた?」
「…多分、ゾンネが今、想像した通り…モーントは矢面に立つ事に慣れてなくて結構頻繁に、レヒトに泣き付いていたよ…レヒトは頼られたって喜んで嬉しそうにしてたけど…」
リンクは昔を思い出し、遠い目をします。ゾンネの方は、今まで失念していた婚約者を譲った事に寄る弊害に心を痛ませました。
「…事が発生したのがリンクが城を出た後って事は、レヒトも忙しくてフォローしきれなくなって、モーントも嫌がらせに耐えきれなくて、どんな結果を生むかを想定する余裕も無く、後ろ盾に成ってくれてた王様に泣き付いちゃったって事なのかもだよね…」
ゾンネの出した結論にリンクは「そうかもね」と返します。そして、「今更思い出したんだけど…、僕が昔、学ばさせられた王弟教育で習った教訓の一つに、調整役を上手く担い続けた軍師や参謀は、大将に据えるべからずってのがあるんだけど…」と語り始めました。
ゾンネは話の展開について行けず「へぇ~、そうなんだ」と、最初は軽く流す程度で返します。
リンクは神妙な面持ちで「調整役で培った経験のデメリットは、上手に調整役を担ってきたって言うプライドと、自らを主体とした客観性の欠如。つまり、自分の方が調整を上手く出来るってプライドが邪魔して、自分に対する調整役を担ってくれる他者を受け入れる事が出来ず。培ってきた客観性も、身近な相手を客観的に見る能力と、自らを客観的に見る能力は別物で使い物には成らず。思い込みで判断して、それが必ずと言って良い程、本当に必要な判断を遅らせてしまう結果を導き、後手に回ってしまう。そう言うモノ…らしいんだよね……」と言いました。
「……」
適当に相づちを打っていたゾンネは真顔になり、自分が想定した範囲を超え、モーントに起こったであろう事を漸く察して、自分に認識の甘さと、自分が城を出た後の為の準備不足で、モーントを苦しめてしまったと言う事を後悔し、顔色を悪くします。
リンクはゾンネの様子に気付き、自分が余計な事を伝えたかと後悔する事に成りました。そのフォローのつもりで「…王命は絶対的強制力があるから、命令を笠に着て自己顕示欲を満たしたい貴族が、コレをやらかしたんだと思う。だから、気にするなよ」と言います。
切り替えの早いゾンネは「妬んで噂の発信源を担ってたヤツは自業自得だけど…、殆どの庶民は、憧れや羨望の眼差しを向けてシンデレラストーリーを語ってただけだろうにね…」と言いながら窓の外に目をやり、リンクも溜息交じりに「皆諸共、纏めて処分されたんだろうね」と言って窓の外に目を向けました。
ゾンネとリンクは精神的に疲れ、新しく出来た集落の宿屋の窓から申し訳なさそうに、遠くにある荒野と成ってしまった場所を眺め、それぞれに溜息を吐き、引き続き情報収集をしながら王都へと向かう事にするのです。
「黙って待っていれば転がり込んでくるモノを何故?レヒトは如何してそんな事を?」とゾンネは驚きました。
リンクは困惑し「は?後宮にハーレム?!複数の王妃に側室達だって?モーントを妃に迎えれたら他は要らないって言ってたから、僕はモーントを諦めて譲ったのに、レヒトは何をしてるんだ?」と口走ります。
ゾンネはリンクに複雑そうな視線を向け「…ははw必要が無かったのは、婚約者だった私の存在だったって落ちなのかもね…」と自嘲気味に笑いました。
その日、ゾンネとリンクは、それぞれの「何故?」「如何して?」と憤りに呵まれて、意を決します。
翌日には、移民の街で開いていた店を従業員に任せ、互いが残して来た者達の様子を見に…レヒトとモーントに会いに…、自分達が生まれた国の自分達が育った場所へと向かう事にしたのです……。
その過程で、ゾンネとモーントが生まれ幼少期を過ごした場所を通り掛かりました。集落は何時の間にか強制的に排除され、荒れ果てた荒野に成っていました。
リンクが城を出た後、前の王様がモーントの為に、モーントの出自を知る者や勝手にモーントの過去を語る者達を身分問わずに処刑して回ったそうです。
それらの情報を仕入れた宿屋に隣接した食堂にて、ゾンネとリンクは思い出話をしました。
「貴族出身の地主様に至るまでも、かぁ~…私が婚約者だった時点で、御貴族様から[庶民出身の癖に]って言われるのが通常運転で、失せ物は勿論、所有物を汚されたり壊されたりって言う嫌がらせが普通に酷かったからなぁ~」
「高位貴族は自分なら許されるだろう…で、その他の馬鹿な娘達は自分の正義が世界の正義と思い込んで、言ったりやったり平気でするからね……」
「…今更だけど…、私が標的だった頃、モーントは世渡り上手で、何時も後から場を取りなす調整役を熟してたよね?」
「懐かしい話をするね」
「私が出てった後、モーントが標的に成ったと思うんだけど…相手を上手にあしらえてた?」
「…多分、ゾンネが今、想像した通り…モーントは矢面に立つ事に慣れてなくて結構頻繁に、レヒトに泣き付いていたよ…レヒトは頼られたって喜んで嬉しそうにしてたけど…」
リンクは昔を思い出し、遠い目をします。ゾンネの方は、今まで失念していた婚約者を譲った事に寄る弊害に心を痛ませました。
「…事が発生したのがリンクが城を出た後って事は、レヒトも忙しくてフォローしきれなくなって、モーントも嫌がらせに耐えきれなくて、どんな結果を生むかを想定する余裕も無く、後ろ盾に成ってくれてた王様に泣き付いちゃったって事なのかもだよね…」
ゾンネの出した結論にリンクは「そうかもね」と返します。そして、「今更思い出したんだけど…、僕が昔、学ばさせられた王弟教育で習った教訓の一つに、調整役を上手く担い続けた軍師や参謀は、大将に据えるべからずってのがあるんだけど…」と語り始めました。
ゾンネは話の展開について行けず「へぇ~、そうなんだ」と、最初は軽く流す程度で返します。
リンクは神妙な面持ちで「調整役で培った経験のデメリットは、上手に調整役を担ってきたって言うプライドと、自らを主体とした客観性の欠如。つまり、自分の方が調整を上手く出来るってプライドが邪魔して、自分に対する調整役を担ってくれる他者を受け入れる事が出来ず。培ってきた客観性も、身近な相手を客観的に見る能力と、自らを客観的に見る能力は別物で使い物には成らず。思い込みで判断して、それが必ずと言って良い程、本当に必要な判断を遅らせてしまう結果を導き、後手に回ってしまう。そう言うモノ…らしいんだよね……」と言いました。
「……」
適当に相づちを打っていたゾンネは真顔になり、自分が想定した範囲を超え、モーントに起こったであろう事を漸く察して、自分に認識の甘さと、自分が城を出た後の為の準備不足で、モーントを苦しめてしまったと言う事を後悔し、顔色を悪くします。
リンクはゾンネの様子に気付き、自分が余計な事を伝えたかと後悔する事に成りました。そのフォローのつもりで「…王命は絶対的強制力があるから、命令を笠に着て自己顕示欲を満たしたい貴族が、コレをやらかしたんだと思う。だから、気にするなよ」と言います。
切り替えの早いゾンネは「妬んで噂の発信源を担ってたヤツは自業自得だけど…、殆どの庶民は、憧れや羨望の眼差しを向けてシンデレラストーリーを語ってただけだろうにね…」と言いながら窓の外に目をやり、リンクも溜息交じりに「皆諸共、纏めて処分されたんだろうね」と言って窓の外に目を向けました。
ゾンネとリンクは精神的に疲れ、新しく出来た集落の宿屋の窓から申し訳なさそうに、遠くにある荒野と成ってしまった場所を眺め、それぞれに溜息を吐き、引き続き情報収集をしながら王都へと向かう事にするのです。
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