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④元々この室田青という男は変わっていて
しおりを挟む「というわけで、ちょっとヤバいファンができたんだがどうしよう」
「……はあ?」
灰田湊は仕事帰りに高校時代の友人に呼び出されていた。どうしてだろうか、仕事で疲れすぎているのか相手の言葉がまったく理解できずにいた。
元々この室田青という男は変わっていて、湊と今もつるむ数少ない友人の一人であった。高校生にもなって「正義の味方になる」と真剣な目で宣言していたのでいっそ怖いくらいだった。卒業後に就職も進学もせずそのままニートになると言った時は周囲が必死に説得していた。
湊としては、面倒だったのと、結局は本人が決めることだからと特に反対も賛成もしなかった。それが嬉しかったと室田は言うのだが、本人のためを思うなら説得してやる方がずっと優しい。おかげで青はいまだに立派なニートであり、わずかな罪悪感からこうしてたまに話を聞いてやっているのだが……。
久しぶりに会った室田はいつの間にかヒーローになっていたらしい。
「ヒーローってどうやってなったんだよ」
「元々いたヒーローの追っかけをして……あれ、お前もヒーローになりたいの?」
「別に…………ああ、さっき言ってたサボり魔の先輩か」
「サボり魔ってわけじゃなくて! 俺が強くなるのを見守ってくれてるだけで! ……たぶん」
あまりにヒーローになる方法が見つからなすぎて変な思い込みをしているのか、それとも馬鹿……純粋すぎて騙されているのか。とにかく可哀想な男だと思う。
もしくはヒーローショーでもやっているのかもしれない。室田の言葉を適当に聞き流しながらそんなことを考える。
ヒーローショーをやっていると仮定した場合ヤバいファンというのは観客のことだろう。普通、子供 向けのヒーローショーを見ている時点で目立ちそうなものだ。ヒーローとしての姿に惹かれ 、更に出待ちして中身に接触し迫る。なかなか危険な男だ。
「……それで、俺はどうしたらいいと思う?」
「上に言って出禁にしてもらえば」
「上?」
「先輩じゃなくて、室田の雇い主がいるだろ? ストーカーにされたこと報告して出禁にしてもらったらいい」
「うーん……」
「事件が起きてからじゃ遅いし、男同士だからって油断出来ないだろ」
室田は警戒心が無さすぎる。昔からそうして男女問わず危険な人間を引き寄せていたところがある。
一応は自分の友人である存在が、事件に巻き込まれては目覚めが悪い。一度この男の職場を見に行って上司と話した方が……いや、それはやりすぎだ。自分は母親でもなんでもない。結局は室田自身に何とかさせるしかない。
今すぐ防犯ブザーでも買いに行かせるか。後はとりあえず知らない人について行かないように、何か貰っても食べないようによく言い聞かせておこう。
湊は室田のことを小学生と思い込んでいるふしがあった。
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