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プロローグ : 全てが終わった白の部屋で
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「蒼空、お前は本当にこれでよかったのか?」
手入れをされたかのような美しい白い毛並み持つ柴犬が、蒼空に尋ねかけた。
「うん。後悔はないって言ったら嘘になるけど――でも、これでいいんだ」
蒼空は目の前の『13』と書かれた、今いる空間と同じ真っ白な扉を見つめる。自分がどれだけ願おうと、二度とこの扉を開けることはできない。
「せっかく俺がここまでお膳立てしてやったのによお……。まぁこんな結末も、お前らしいと言えばお前らしいか」
「太郎さんには申し訳ないことをしたと思ってるよ」
「全くだ。俺の厚意をここまで無下にしたのは、お前が初めてだぜ?」
太郎さんには、たくさんお世話になった。その上で、こんな結末になってしまって本当に申し訳なかった。
「最後にもう1つだけ頼みたいことがあるんだけどいいかな?」
「なんだ?」
「色羽が大人になるまでは、そばにいてやってくれないかな。あと、たまにみんなの様子も見てくれると嬉しい」
「あのなぁ。お前図々しいにも程があるだろ……」
太郎さんは呆れた顔で蒼空を見つめる。
「本来だったら、それはお前がやるべきことだろ? 」
「そうだね。……でも僕はもう、みんなの元にはいられない」
「だが、お前が選んだ道だろ?」
ごもっともだ。
蒼空は太郎さんの正論に対し、「そうだね」と苦笑しながら返す。
「はぁ……分かった。だが、オレの気が変わらないうちだけだぞ? あのガキが、つがいの一人や二人くらい作るまでは見守っといてやることにする」
太郎さんはため息をつき、頭を前足で頭を掻きながら仕方なさそうに呟いた。
「ありがとう、太郎さん」
「ほんとに感謝しろよお前?」
すると、エレベーターのピンポンという到着音が響いた。
「時間か……」
「うん……そろそろ現実に戻ろう」
ゆっくりとした足取りでエレベーターに向かう。太郎さんも、のそのそと蒼空の後ろを着いてくる。
格子状のドアがゆっくりと開く。エレベーター内には一階や二階などのボタンは無く、ただ上にいくボタンのみだった。
太郎さんはエレベーター内には入ってこず、扉の前で蒼空をじっと見つめていた。
「太郎さんは来ないの?」
「俺はここまでだ」
「そっか…………色羽やみんなをよろしくね」
「あぁ。――またな」
扉が閉まり、エレベーターは上昇を始める。格子状の扉の先から太郎さんがこちらを見ているが分かる。
太郎さんは名残惜しそうな顔で蒼空を見ていた。
「さようなら太郎さん」
蒼空は小さく消えるような声で呟いた。
手入れをされたかのような美しい白い毛並み持つ柴犬が、蒼空に尋ねかけた。
「うん。後悔はないって言ったら嘘になるけど――でも、これでいいんだ」
蒼空は目の前の『13』と書かれた、今いる空間と同じ真っ白な扉を見つめる。自分がどれだけ願おうと、二度とこの扉を開けることはできない。
「せっかく俺がここまでお膳立てしてやったのによお……。まぁこんな結末も、お前らしいと言えばお前らしいか」
「太郎さんには申し訳ないことをしたと思ってるよ」
「全くだ。俺の厚意をここまで無下にしたのは、お前が初めてだぜ?」
太郎さんには、たくさんお世話になった。その上で、こんな結末になってしまって本当に申し訳なかった。
「最後にもう1つだけ頼みたいことがあるんだけどいいかな?」
「なんだ?」
「色羽が大人になるまでは、そばにいてやってくれないかな。あと、たまにみんなの様子も見てくれると嬉しい」
「あのなぁ。お前図々しいにも程があるだろ……」
太郎さんは呆れた顔で蒼空を見つめる。
「本来だったら、それはお前がやるべきことだろ? 」
「そうだね。……でも僕はもう、みんなの元にはいられない」
「だが、お前が選んだ道だろ?」
ごもっともだ。
蒼空は太郎さんの正論に対し、「そうだね」と苦笑しながら返す。
「はぁ……分かった。だが、オレの気が変わらないうちだけだぞ? あのガキが、つがいの一人や二人くらい作るまでは見守っといてやることにする」
太郎さんはため息をつき、頭を前足で頭を掻きながら仕方なさそうに呟いた。
「ありがとう、太郎さん」
「ほんとに感謝しろよお前?」
すると、エレベーターのピンポンという到着音が響いた。
「時間か……」
「うん……そろそろ現実に戻ろう」
ゆっくりとした足取りでエレベーターに向かう。太郎さんも、のそのそと蒼空の後ろを着いてくる。
格子状のドアがゆっくりと開く。エレベーター内には一階や二階などのボタンは無く、ただ上にいくボタンのみだった。
太郎さんはエレベーター内には入ってこず、扉の前で蒼空をじっと見つめていた。
「太郎さんは来ないの?」
「俺はここまでだ」
「そっか…………色羽やみんなをよろしくね」
「あぁ。――またな」
扉が閉まり、エレベーターは上昇を始める。格子状の扉の先から太郎さんがこちらを見ているが分かる。
太郎さんは名残惜しそうな顔で蒼空を見ていた。
「さようなら太郎さん」
蒼空は小さく消えるような声で呟いた。
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