王子と姫の恋愛攻防

香月しを

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姫・七



 水音がする。

 何か、熱くて重いものが身体に覆いかぶさっている。

 下半身が重い。胸の辺りが、何やらぬるぬると……

「あッ? やッ、ああッ、あはあああッ!」

 口から、掠れた叫び声が出た。いつから声を出していたのだろう。喉がカラカラだ。ぷちゅぷちゅと音をたてながら、乳首が執拗に舐め吸われ、節くれ立った指で弄ばれている。尻には、何かが埋め込まれているようだ。熱くて、硬い、何か。まさか、まさか。

「しずかタン! 起きた? おっきした?」
「んあああッ! は、あ、くぅ……うッ、あッ、やッ!」

 王子が顔をあげた。その拍子に、下半身に衝撃がくる。ズクリと何かが体の奥を突き上げた。熱くて硬いソレは、最奥に届いたまま、大きな動きをしていないくせに矢鱈と快楽を送り込んでくる。

「はッ……締ま……ッ……う……」
「あッ、あッ、んんッ、んんんーーーーーーッ!!」
 両手で口を塞ぎながら、ぴゅるぴゅると最奥で迸る熱い液体を受け入れた瞬間、自分もまた、射精感を得た。だが、何も出ていない。これがドライでイクという事だろうか。いや、そんな事よりも。

「ごめんねしずかタン、中出ししちゃった……。しずかタンの喘ぎ声聞いてその顔見たら、我慢できなくて……」

「え、ちょ、はあッ、あッ、あッ、待て、動くな! つうか抜け! 抜い……ああんッ! なんで大きく……あ、ああ、あああ、やあ!」

 精を解き放ったばかりな筈の王子のちんこは、さっきよりも嵩を増し、ぐんと熱量を上げた。奥深くを捏ねるように蠢いただけだったソレは、ぎりぎりまで奥から遠ざかったと思うと、勢いをつけて、再び奥を穿った。どれだけ解されていたのか、既に痛みは無い。ただ、苦しい。快感が強すぎて、未知の感覚が怖くて、どうしようもない。

「はあ……好き、可愛い、愛らしい……」

 奥を捏ねながら、王子は俺の足首を掴んだ。体がどうなっているのか自分でもわからない。二つに折りたたまれるようにして、尻を天井に向けて仰向けになっている、のか。
「……んッ」
 土踏まずを、チロチロと舐められている。ピクピクと足が反応してしまう。くすぐったいだけの行為が、今は全て快楽に変わっていく。
「可愛い」
 強い力で掴まれていて逃げられない。執拗な舌は、そのまま踵を這いずり回り、足の甲を通って、ぱくりと半分ほどの指を食まれた。締め付けが強くなったと王子が唸る。わざとそうしているわけではない。お前のせいだと言いたいが、口を開くと甘ったるい嬌声しか出てこない。
 指の股を、柔らかな舌が蹂躙していく。ちゅうちゅうと吸われ、そんなところ汚いと息も絶え絶えに伝えると、王子は笑った。
「やめ……ホントに、もう、汚ぇから……」
「しずかタンは本当に可愛いね。足の指どころじゃなく、俺はもう、尻の穴の中まで舐めまわしてるよ?」
「…………は!?」
「意識のない時だから、憶えてないのも仕方ない。まあ、今から、もっともっとペロペロしてあげるから!」
「やああああああ!! 変態いいいい!!」
 王子の腰の動きが速くなった。これでもかと追加されるローションのせいで、水音が激しい。最奥に迸りを感じると、それでもまだ王子は出て行かず、俺の顔を見てニっと笑うとすぐさま硬さと大きさを取り戻した。宣言通り、くるくるとひっくり返されてはねろねろと肌を舐められ吸われ、やっと抜いてくれたと思ったらそのままシャワー室に連れ込まれて精液を掻き出され、そのまま身体中をいやらしく洗われて、壁に手をついて足を開いたその真ん中に顔を突っ込まれて尻に舌を挿入られて、これでもかと舐めまくられ、完全に身体に力が入らなくなったら、今度はゆっくりと挿入されて、スローモーションのようなピストン運動で焦らしに焦らされて、イカせてくれと懇願してやっと奥の奥にズドンと突き入れられた瞬間には、俺は意識を手放していた。



「睡眠姦って、知ってるか? 知ってるよな」

 喉が痛い。ガラガラ声は、自分のものではないみたいだ。俺は今、ベッドの上で、ふるふる震えながら横向きに寝ている。横向きになるのにも、やっとなのだ。
「はい……知ってます。男性向けでも女性向けでも、よく見ます」
 ベッドの下では、王子が正座をしていた。いやらしい事なんて考えたこともありません、みたいな爽やかな顔をしているが、勃起したチンコが、腹にピッタリとくっ付いてしまっている。完勃ちだ。
「レイプだから! 寝ている間に、初めてを奪われてるって、あり得ないから! 両想いなのに!」
「いや、しずかタンを怯えさせたくなくて……」
「しずか!」
「……しずかを……怯えさせたくなかったんだ」
「怯えるって、何にだよ」
「だって、これ……」
 王子が、自分のイチモツを指差した。びんびんだ。ガッチガチ。凶悪なソレに、ゴクリと喉が鳴る。今はあの快楽を知ってしまったし、痛みも思ったほどではなかったのを知っているが、挿入する前なら、どうだっただろう。この俺でも、怖気づいて泣いたりしたんじゃないだろうか。
「そりゃ……なんか、怖いって思ったかもしんねぇけど……でも……」
「怖がったとしても、俺は、しずかを逃がしてあげられないから。だから、寝ている内に、と思った」
「…………いや、なんかカッコいい事言ってるけどさ、本音は?」
「…………ベッドに全裸で転がしておいて尻とか眺めているうちに、ハァハァしてきて……我慢できませんでした」
「おおおおおおおい!! お姫様の騎士とかなんとか言ってた奴は、お前じゃなかったのかあああ!? いたたたッ!」
 全力でツッコミを入れたら、筋肉が悲鳴をあげた。慌てたように立ち上がった王子が、枕元に駆け寄ってくる。立ち上がった王子の勃ち上がったナニがちょうど目の前にきて、セクハラを受けているとしか思えない。何か先走りが出ているけど。俺の枕にくっつきそうなんだけど。
「しずか…………」
 王子は、心配そうな顔をして俺の顔を覗き込んで来る。ハァハァしている。何やら興奮している。なんなら、近付いてきた拍子に、チンコが俺の口元にくっついて、そのまま唇を意図的に割ってこようとしているのが明らかだ。
「ぷわああ! どさくさに紛れて、フェラさせようとしてくんのやめろ!」
「あ、ごめん」
 爽やか。爽やかな笑顔。変態のくせに、顔がいいのって得だ。ふわっと許してやりそうになる。すっかり変態王子に絆されてしまった俺だ。
「…………記念だから、初めては、ちゃんと意識がある時にして欲しかった」
「…………」
「王子と……た、貴志と、初めて繋がるって記念だから……ちゃんと憶えておきたかったんだよ! 悪かったな! 乙女思考で!」
 痛みを堪えながら、体の向きを変えた。王子に背を向け、赤くなった顔を隠す。すると、髪を優しくかきまわされた。
「しずか。ごめん。許してくれるか……?」
「…………」
「お前と両想いになれて、調子にのった。お前なら許してくれると思った、俺の甘えだな」
「…………」
「しずか、こっち向いて?」
 涙目を晒すのは恥ずかしかったが、結局俺は、王子には弱い。くるりと向きを変えて、こちらを覗き込んで来る王子と目を合わせた。優しい、慈しむような顔で、微笑んでいた。
「……俺のこと、本当に、好きか?」
「好きだよ。キスしてもいい?」
「…………ん」
 穏やかに問われ、目を閉じて唇を少し尖らせる。甘い雰囲気。これぞ、『初めて』の後の恋人同士だろう。チュっと音をたてて、軽く合わされた唇が離れていった。嬉しい気持ちで目を開けると、一旦離れた王子の顔が、再び近付いてくる。
「し・ず・か・タァァァアアアン!! んちゅッ、んちゅッ、可愛い! 可愛いよおお! もっともっとペロペロしてあげるからね!」
 ガバリと抱きつかれてしまい、抵抗できずに激しい口付けを浴びる。何時の間にかベッドの中に滑り込んできた王子のチンコが、太股に擦り付けられていた。あいている手で俺の体を弄り始め、口付けは益々激しくなり…………

「もおおおおお! どんだけビジュアルを裏切るんだよ! 詐欺師いいいぃぃいい!!」

 結局、昼過ぎまで、変態チックに体を貪られた俺だった。



(つづく)
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