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最終話
「日誌って、どうなってるのかしら?」
理事長室に呼び出された二人は、不満そうに部屋の主を見下ろした。自分達は立たされているというのに、正面の女性は、ゆったりとした椅子にふんぞり返っている。
「セックスをした日は書かなくてもよいという話でしたので」
「二人がセックス早退をした日から、既に一週間が経っているけど?」
「毎日セックス三昧なので」
「は!?」
王子貴志は、極めてクールに言い放つ。『推し』以外には愛想は必要ないと思っているので、そばに愛しい相手がいるためか、いつもよりも無愛想だ。理事長が素っ頓狂な声をあげると、姫野しずかの方が乱暴に机に両手をつき、険しい顔で声を荒げた。
「だからあ! 十代の性欲なめんなつうの! こんな、呼び出しされる時間だってもったいないっつうの。俺らは、暇さえあれば、ちゅっちゅちゅっちゅして、抱き合っていたいんだから、なあ、貴志!」
グルンと顔だけを後ろに向けたしずかの腰を、ニコニコしながら貴志が抱きしめる。自分の方に引き寄せて、首筋をペロリと舐めると、華奢な身体がピクンと跳ねた。
「しずかは、何を言っても可愛らしいね」
「可愛いんじゃなくて綺麗なんだって言ってんだろクソボケ!」
「ああ、ああああ、ふあああああ、うちのしずちゃんが、王子様と、セッ、セ、セック……ふぁああ!」
「何言ってんの、王子君は、王子様というよりも、クールな騎士でしょ! 誰に対しても無愛想なクール騎士が、ガラの悪い超美形な恋人にだけは激甘なシチュ! ごちそうさまッス!」
理事長の隣には、しずかに似た美人が静かに立っていたのだが、二人のイチャイチャにあてられて、これ以上ないくらい真っ赤になった顔から鼻血を噴いていた。少しは免疫のあった筈の理事長も、鼻血を垂らしつつ、しずかの母を介抱している。
「誰?」
「俺のかぁちゃん」
「え、母親? マズいんじゃないのか?」
「大丈夫大丈夫、あの顔見てみろよ。喜んでっから」
しずかの母親は、息子が恋をしているという報告を受けて、真実を確認しにきたのだ。子供の頃のトラウマで、同性など信用していない筈だ。荒れていた中学時代も、何度も襲われかけていた。姉を信用していないわけではないが、もしや相手の男に脅されているのでは。自分の目で確かめずには、いられなかった。
待機していた理事長室に現れたのは、だいぶ艶のでた超絶美形の自慢の息子と、甘いマスクの、爽やかなイケメンだった。貴志の、自分達へ向ける視線と、息子に向ける視線が全然違う。激甘。二人は、常にどこかを触れ合わせていて、好きあっているのが、すぐに理解できた。百点満点にお似合いの二人だ。しずかの母は、感動のあまり、全身に鳥肌をたてていた。
「二人とも!!」
二人の前に、跪く。姉である理事長は、妹が何を言うのか予測できて、慌ててそれを止めようとした。が、間に合わなかった。
「お願いします! 二人で結婚してください!!」
「は?」
「え?」
「ああ~」
まさかのプロポーズだった。第三者側からの。しずかの母は、全力でお願いする。二人にその場で土下座をした。理事長は頭を抱え、貴志としずかは、目を丸くして視線を合わせた。しばらくすると、二人で噴き出す。
「ふッ。しずかタンより先に言わなければと思っていたのに、まさか、おかあさんに先を越されるとは」
「ふはッ、俺も、貴志より先にプロポーズしようと思ってた」
貴志の大きな手の平が、しずかの両頬を包んだ。二人は幸せそうに見詰め合い、目を閉じて笑う。そんな二人を、理事長としずかの母は黙って見守っていた。
「勿論、お受けしますよ。姫様。誓いのキスをしても良いですか?」
「俺も喜んで。王子様……いや、騎士様、か? ディープなのは、部屋に戻ってからだな。ここは、軽いキスで」
二人の唇が、そっと触れ合う。何度か啄むようにキスを繰り返したが、やはり我慢できなくなったのか、それは段々と深いものになっていた。
「ん……ッ、しずか……甘い……」
「ふ……んふッ、は……気持ちいい……早く部屋、戻ろうぜ……」
プシュと音がして、赤い霧が出る。パタパタと人が倒れる音。部屋の隅にいた秘書の女性も、何時の間にか鼻血を出して倒れていた。
「…………ああ、この学園の関係者って、血の気が多いんだな」
「うん……まあ、そう、かな?」
「誰か呼ぶか?」
「いや、部屋の外に花野が待機してるから、あいつに処理させよう」
「こき使ってるなぁ。妬ける」
「馬鹿じゃねぇの?」
二人でベタベタしながら扉をあけると、しずかの言葉通り、外で花野が待機していた。生徒会のしごきで、だいぶ使えるようになった。
「うわ。理事長室でまでイチャイチャしちゃったんですか」
「イチャイチャする為に呼ばれたんだよ。文句言うな。その三人、片付けとけよ。あと、俺達、親公認で結婚するから」
「は?」
「親から、結婚してくれって頼まれちゃってさぁ。おい、ライスシャワーできねぇか? 米持ってたら撒いて祝福しろ」
「…………おにぎりなら持ってますけど。ぶつけてさしあげましょうか?」
「ぶつけたら百倍の痛さで報復するからな」
「鬼か!」
ふと横を見ると、貴志が拗ねたような顔をしている。妬いてくれるのが嬉しくて、しずかは、そっとその手を取った。驚いたように自分の顔を見詰めてくる貴志に、ニヤリと笑ってやる。
「部屋に帰りながら、何度も立ち止まってキスしまくったら、お前が俺のものだって他の生徒に認識されるかな?」
「それはいいな。俺も、しずかが俺のものだって主張できる」
手始めに、軽いキス。遠巻きに、理事長室の様子を探りに来ていた生徒達から、小さな悲鳴があがった。悪戯が成功したような顔をして、二人は歩き出す。
翌日の学園イントラには、二人の新婚生活の小説が、数えきれないほど更新されていた。
(おわり)
最後までお読みくださって、ありがとうございました~
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