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二十三、
しおりを挟む「でも、あの……僕は体力もないし、体育も苦手だし」
どう考えても、自分がそんな大役を任されるような器とは思えなかった。
「おまけに、学校の勉強にも耐えられないぐらい、心も弱くて……」
ときわはうつむいてぶちぶちとぼやいた。
(なんでよりによって僕なんだろ。僕みたいななんの役にもたたない人間が……。どうせなら、兄さんみたいに強い人間を呼べばよかったのに)
「若子よ。ぬしがどんなに弱い人間だったとしても、わしらにはぬしに賭けるしかないのじゃ。それにの、ぬしがここにやってきたのも、なにかしら意味があってのことであろうよ」
意味。意味ってなんだろう。と、ときわは思った。
「これを持っていくがよい」
そう言って、長は一振りの刀をときわに手渡した。ときわは本物の刀なんて目にするのはもちろん初めてで、そのずしりとした感触におののいて、慌てて断った。
「い、いらないです。こんなの」
「持っていくがよい。この里から一歩でも外に出れば、奇態な連中がちょっかいをかけてくる。役にたつこともあろう」
ときわがなんとも言えずに途方に暮れてその白柄の刀をみつめていると、それまで一言もしゃべらなかった秘色が長に向かって尋ねた。
「長。それであたし達はまずどうすればいいんです? 」
ときわは驚いて秘色を見た。
「あたしは一緒に行くのよ」
秘色はいたずらっぽく笑った。「あたしはときわの巫女だもの」
長はふむ、と頷いて言った。
「ここから南に進んで、ぐえるげるの森へ行くことじゃな。その森にはぐえるげるという仙人が住んでおる。わしなどよりずっと長く生きていてなんでも知っておる。ぐえるげるに会って知恵を授けてもらえ。わしに語れるのはこれだけじゃ」
長はふーっと大きく息を吐いた。この状況にすっかり飲まれていたときわだったが、一つ長に聞いておかなければならないことがあったのを思い出した。
「あの、長。僕が、前にいた世界に戻るにはどうしたらいいんでしょう」
長はふむ、と小さくうなった。
「わしにはわからぬ。ぐえるげるなら、あるいは知っているかもしれぬが」
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