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二十五、
しおりを挟むしばらく休んだ後、二人は再び歩き出した。杉林を抜けるとずっと下り坂が続いていて、坂を下りきると今度はただっ広い草原に出た。少し向こうに小川が流れていて、秘色はたたたっとそちらに駆け寄った。
「わあ、ここ、きれいねえ」
秘色が辺りを見回して言った。
ときわも水辺にかがみ込んだ。両手を水にひたしてみると、ひんやりと冷たくて、手のひらにぶつかる流れがなんとも心地いい。
「そうかな。ただの草原じゃないか。長の館の花畑のほうが色とりどりできれいだったよ」
ときわは何気なくそう言ったのだが、秘色は激しくかぶりを振って反論した。
「あんな花畑より、ここのほうがきれいよ。一面緑一色で」
そんなもんかな。と、ときわは思ったが、どちらが好きかは人それぞれだろうと思い直し、黙っておくことにした。
ひゅうと風が吹いて、草原がさららっとさざ波のように揺れた。
「あれ、あそこに子供がいる」
秘色がそう言って向こうの土手を指差した。ときわが目を向けると、なるほど、土手のてっぺんに赤いちゃんちゃんこを着た子供がちょこんと座ってこちらを見ている。おかっぱ頭のかわいい子だけれど、男なのか女なのかいまいちはっきりわからない、不思議な印象の子供だった。
「ねえ。そんなところで何してるの」
秘色が尋ねると、子供はすっと右手を上げ、まっすぐときわを指差した。
「その男子。異界の者であろう」
変に低い、けれども妙に澄んだ、子供らしからぬ声と口調でその子は言った。
「この度のときわとかきわは根が同じじゃな」
「君、かきわにあったの? 」
ときわが大声で尋ねると、子供はこっくりと頷いた。
「近いうちに出会うであろう。同じ道を歩めるかはわからぬが」
それだけ言うと、子供の姿はすうっと消えてしまった。
(同じ道を歩めるかはわからない? )
同じ道とはどんな道なのだろう。考えてみたがわからなかった。
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