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第十九話 神々の傲慢
しおりを挟む『どういうことだ!?』
「ですから、また皇太子を気絶させてしまったんですよ。アレスとオスカーにこっぴどく叱られてしまいました」
リートはふうと溜め息を吐いた。
リートはただ一日の出来事を報告しただけなのだが、水晶板の中のアモルテスは気色ばんで噛みついてきた。
『問題はそこじゃない!お前は何故、皇太子の耳に息を吹きかけたんだ!?』
「手を出せなかったからです」
リートはあっけらかんと答えた。
『誰がそんなはしたない真似をしろと言った!?』
「はしたないとはなんですか」
リートはむっとして言い返した。
「あられもない下着姿で窓から乱入してきたビアンナ様に大喜びで執務室から私を追い出したアモルテス様に言われたくないです!」
『いや、あれは、その……』
過去にあった出来事を指摘すると、アモルテスはごにょごにょとはっきりしない物言いになった。
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そんな感じの爛れたエピソードをわんさかお持ちのアモルテスに、婚約者の耳に息を吹きかけただけのリートを責める資格なんざないだろう。だいたい、軽くふーっと吹いただけだ。やらしいやり方はしていない。
『と、とにかく!皇太子に触るのは禁止だ!』
「はあ!?」
リートは盛大に眉をひそめた。
何を言ってるんだこの神は。自分の尻拭いのためにリートに皇太子の婚約者になれと命じたのが自分であることを忘れたのか。
「触らないでどうやって魂を入れ換えろっていうんですか!?」
『うるさいうるさいっ!とにかくこれ以上、皇太子に近寄るんじゃない!』
反論するリートに、アモルテスは一方的に言い放った。
『お前は天界のもの、私の部下だ!いいな!これは命令だ!』
アモルテスの冷たい瞳がリートを射抜いた。
『愛しているぞ。リート』
水晶板が暗くなった。
リートは愕然として立ち尽くした。いったい、アモルテスはリートがどうすれば満足だというのだ。リートは命令に従ってこの世界にやってきて、命令通りに皇太子の婚約者になって、命令を果たすために彼の心を開かせようとしているのに。
なのに、なぜあんな言い方をされなくてはならないのだ。
リートは唇を噛んで何も映っていない水晶板を睨みつけた。
***
愛人達に会いに行く気分にもなれなくて、アモルテスはイライラと酒を呷った。
「まったく、リートの奴……」
リートの口から報告を聞くとどうにも苛立って仕方がない。特に、ジェラルドの名前が出ると腹の底がカッと熱くなる。
「やっぱり、世界の一つぐらいさっさと壊してしまえばよかったな」
リートを派遣したのは、常に冷静で仕事熱心な彼女が四苦八苦する姿を見たいからだ。それだけだった。
「おおい、アモルテス。いるか?」
一人でがぱがぱ酒の器を傾けていると、ニヤニヤ笑いを浮かべたザルジュラックが訪ねてきた。
「どうしたどうした?お人形がいないからって荒れてんなぁ」
アモルテスはぎろりとザルジュラックを睨んだ。
「おおこわ。なんでもいいから、さっさとどうにかしてくれよ。俺らの賭けが他の連中にバレないうちにな」
「……わかっている」
アモルテスは苦虫を噛み潰した顔で、わずらわしそうに前髪を掻き上げた。
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